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Three Gem - 結晶の景色 -  作者: 赤月はる
虹の輪舞曲
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387 珍獣の帰還 sideアルノルト

  





おもちゃ製作フィーバーも落ち着き、既存商品の生産ラインがすっかり整ったので露草の玩具組合がほとんどおもちゃの製作・流通を担ってくれることになった。だからフィーネはすっかり手持無沙汰だ。新しいおもちゃの方陣をじっくり考える時間はできたけど、マナ・グラスの製作があっても余裕があったくらいだからね。


俺はとうとう留学期間を終えて、四月の末に緑青の街を出た。六月になればまたトビアスたちとは魔法部で会えるし、以前みたいにパウラが泣いちゃうこともなくて良かったよ。それで、ほんっと久々に白縹の村へ戻ってきました!


あー、落ち着く!


厳密に言えば二週間に一回は猫の庭へ戻ってたんだから、村の中にはいたけどさ。学舎には行けないもんな~、お前留学はどうした!って言われちゃうし。連絡はしてあるけど、なんとなくドキドキしながらカールとトーマスのいる、俺の部屋(…の、ハズ!うう…)をノックする。


…あれ、返事がないよ?


えー、この時間なら部屋にいるはずなのに。まあいっか、鍵もちゃんともらってるし…入るよ~?



カチャ。


パパパァァァン!!



アル「うひゃ…っ うわうわ、なんだこのリボン…ぷは…」


カール「おっかえりアル!」


トーマス「おかえりぃ~!」


アル「あれっ二人ともいたの!?あー、これマナ・クラッカーだ!」



リボンだらけでミイラみたいになった俺を見て、二人はゲラゲラ笑う。マナを解除してくれたのでリボンはすぅっと消えて、俺は改めて何も以前と変わらない宿舎の部屋を見た。



アル「あは、ただいま!あ~、帰ってきたァ~!」



俺のベッドにはメガヘルが大股開きでどっかりリラックスしていて、「メガヘルもただいま!」というと鷹揚に手を挙げて挨拶を返してくれた。


カールは軍部配置予定者だからすごく体がガッチリしていて、以前見た時よりさらに筋肉がついたように見える。トーマスは維持セクトで商品流通関係に従事するらしくて、その勉強に明け暮れてたらしい。


久しぶりだから話すことがたくさんありすぎて、三人でずーっとおしゃべりしちゃったよ。やっぱ小さい頃からずっと一緒のやつらって、会わない期間が長くてもあっという間に距離が縮まる。


久しぶりの「普通の白縹」は、懐かしくて優しくて。あまりにも濃い留学期間だったから、余計にそう感じるんだろうな…



カール「やっぱお前、留学してからすっげえ感じが変わったな。行ってよかったじゃん」


アル「うん、ほんとにそう思うよ。いろんな人に会ったしさ、いろんなこと見てきた。相変わらずマナの波を見ると泣くけど」


トーマス「なんだよ、そこは健在か~!まあ仕方ないか、あんな綺麗なもの見てたら感動もするよなー」


アル「へ?トーマスも見えるの?」


トーマス「ぶは、違うよー!ホラこれ、マナ・グラス。村でもすごい人気でさあ、白縹が眼鏡してんの、多くなってきたよ」


アル「うっそ!白縹なら見えるんじゃないの、そんくらい…」


カール「ばーか、お前の基準がおかしいんだよ。軍部予定者ならともかく、維持セクト関係はここまで見えないやつも多いさ。だから、以前のお前みたいにポヤーッと何もないとこ見てる眼鏡したやつらがそこらじゅうにいる」



ほええ…こんなとこまでおもちゃフィーバーは届いてましたか…あ、フィーネが作ったのに村へ供給しないわけはないか。てことは…



アル「もしかしてTri-D airy regionも村にある?」


トーマス「もちろん!あれすごいよなー…超キレイだったよ」


カール「月白のことがニュースになっただろ?あの時に軍部のバルタザール大佐から完全版も一緒に村へ無償配布されてさ。大人気だよ、応用修練場で初等から高等までアレ見て、滝を下るとこでワーキャー言ってな」


アル「へええ!…あれ?完全版てさあ…フォグ・ディスプレイで見たの?」


トーマス「 ? そうに決まってるよー。他に何で見るんだあ?」


アル「えっと…ほら、Tri-D airy regionは立体映像じゃん。だから完全版も立体で見たのかなって」



カールとトーマスは顔を見合わせて、不思議そうに俺を見た。で、二人揃って「そう作られたおもちゃじゃないんだから、当然なんじゃないのか?」って言った。


もったいなあああい!!


うあー、うあー、これハンナ先生に言って立体映像が見られるオペレーションシステムを入れていいか聞いちゃおうかなあ。墳墓でやったみたいに大画面にして立体化させて…絶対もったいないよ!明日聞いてみよう!あ、あとダンさんがくれた金糸雀幼稚舎のお遊戯の映像も幼稚舎の先生に渡していいかアロイス先生に聞いてみようっと。





*****





翌日、俺は帰還の挨拶に教導室へ足を運んだ。週末に帰ってきたんで、授業は明日からなんだよね。誰かいるかなーっと…



アル「失礼しまーす!」


ハンナ「…アルノルトじゃないの!そっか昨日帰ってきたのよね、おかえりなさい!」



ハンナ先生と初等の先生が当番で居たみたいで、すっごい笑顔で迎えてくれた。成績ががっつり上がったこととか褒められて、ちょっとくすぐったいけど。



アル「あのさハンナ先生。Tri-D airy regionの完全版あるじゃん?あれをさあ、立体で見られるようなもの、応用修練場に作っちゃだめかなあ?」


ハンナ「…は?だってあれはフィーネが作ったおもちゃにしか立体化できるシステムは入ってないじゃないの。ショートバージョンが見られただけでもすごい反響だったわよ」


アル「あ、えっとねえ…あのおもちゃ、製作に俺も少し関ってるんだ。だから俺も作れるよ?」


ハンナ「なんですってぇ?あんなの中身見たってチンプンカンプンで…あああ、そうよね、あなたはあのメンツにかかわって数年勉強したんですもんね…」



ハンナ先生は「生徒が珍獣の仲間になってしまったわ」と言いながら応用修練場へ付き合ってくれた。先生、ナチュラルにひどいな…珍獣て。


魔石を持って来て、普段先生たちが使う端末がたくさんあるコンソールの端っこを使わせてもらうことになった。まあまあデカい応用修練場を横切るように大型ディスプレイを設定する。空気中に漂うマナを利用して映像を立体化させるプログラムを入れてっと。



アル「先生ぇ~、できたよ!試写してみていい?」


ハンナ「…ねえ…何で数分であの複雑怪奇なシステムを入れられたの?もう魔石に入って…なかったわよね、カラ魔石を持ってきたわよね?」


アル「…あはは…えっと、試写しますよ!体が傾いて危ないから、ちゃんと座って見てくださいね!」


ハンナ「わかったわよぉ…んもー、ハイデマリーに聞き出さなきゃ…!」



なんだか「珍獣育成しやがって」とか聞こえるぅ…スルーだ、スルー!試写してさっさとOK貰って、次はアロイス先生にも許可もらったから金糸雀幼稚舎の映像の話もしなきゃ!







数分後、ハンナ先生の「きぃやあああああぁぁぁぁ!」という叫び声が応用修練場に響き渡った。俺は先生に「落ち…落ち…落ちるなら言っとけ!」とポカポカ殴られ、叱られた。だって滝を落ちていくのは見たから知ってるんでしょ~!?


何事かと見に来た初等の先生にハンナ先生は羽交い絞めにされ、俺は事情聴取です。


…やりすぎですか、これ?


でもその初等の先生はもう一回試写すると「うおおお!」とは言ったけど「アルノルト!最高だ、面白い!」と褒めてくれた。


後日、この落下感を味わった初等の生徒数人はチビっちゃったらしい…ごめん、黒歴史製造機を作って…


でも中等学舎以上の生徒は絶賛してくれたので良かった。


人によって反応が全然違うので、どう受け止めていいかわかんないな。まあ概ねいい反応だったから良しとしよう!なんて思ってた。


でもしばらくすると、俺は学舎で「変態魔法使い」と呼ばれるようになってしまいました…


俺はヘルゲさんほど変態じゃないよぉぉぉ!!






  

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