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Three Gem - 結晶の景色 -  作者: 赤月はる
未来へ続く虹
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341 赤い光点 sideアルノルト

  






サプライズパーティー当日。ロッホスはエクスにいるから気楽かも知れないけど、俺とパウラは散々フォルカーに「お前ら隠し事出来なさすぎ!そのウッキウキな顔と雰囲気を何とかしろ…!」と叱られていた。


講義が終わって、パウラは「じゃあねー!」とロッホスと合流するべくエクスへ駆けていく。トビアスは「パウラ、何か用事でもあんのか?」と言いながらもまたフィーの接続方陣を見て眉間に皺を寄せていた。


フォルカーも「俺とアル、じーさんに呼ばれてっからさ」と俺の結婚に関してイグナーツさんと話がありますみたいなコトにしてトビアスと別れた。トビアスは「おう、また明日な」と言って、何も気にせず研究熱病者みたいに考え事をしながらフラフラと自宅へ向けて歩き出した。



フォル「…トビアス、あの接続方陣に夢中だから気付かれてなさそうだな。くそー、俺もあいつらくっつけてスッキリしたら、集中して解明に取り掛かってやる!」


アル「フォルカーも面白い優先順位の付け方だよね。ぷぷ…トビアスとパウラが幸せになるといいなって思ってるくせに、つっけんどんなフリしちゃってさ~」


フォル「…トビアスがお前の頭を叩きたくなる理由が少しわかるぞ、俺」


アル「えー、やめて!フォルカー意外と力あんじゃん!ほんとに俺の頭がデコボコになるからやめて!」



そんなことを話しつつ、俺たちはフォルカーの家へ到着。

…なぜかたくさんの料理の前で、本当にイグナーツさんがニコニコしてますけど…?



イグ「おう、アルノルト!トビアスの誕生日だって?ワシも祝うぞ!」


フォル「じーさん、やめて…今日はちょっと繊細な処理案件もあるんで、それが済んだら呼ぶから…」


イグ「ぬ…そうか。なら仕方ない。アルノルト、何かあったら呼べよ。フォルカーはまだヒヨっ子だからな、ワシがおらんと裏工作もまともにできん」


アル「ぶは!大丈夫ですよイグナーツさん。ちゃんと後で呼びますから、一緒にお祝いしてあげてくださーい」



イグナーツさんはぶっとい声でガハガハ笑いながら部屋へ戻っていった。

うは、フォルカーがすっげえ顔してるし!



フォル「くっそー…6月になったら速攻でじーさんの椅子を俺が奪ってやるぜ…!」


アル「いいねー、その意気だよフォルカー!」



俺はケラケラ笑いながらマナ・クラッカーを一本フォルカーに渡し、そろそろ拉致ってくるかな?と思ってそっと自動マッピングを展開した。


…お、いたいた。ゆーっくりフラフラ歩いてんのがトビアスだな。パウラとロッホスは人気のない路地で待ち構えていて、左右からトビアスを押さえる気みたいだ。目隠しして、ロッホスが抱え…パウラが荷物運びの方陣で浮かせて運ぶんだって。


…そこまでしなくてもトビアスをフォルカーの家へ来るように仕向ければいいのにって言ったら、フォルカーはトビアスに「拉致型サプライズ」やられてめっちゃコワい思いをさせられた経験があるらしい。緑青自治の裏トップの孫だから、真面目に営利目的の誘拐かと思ったんだってさ。



お、パウラとロッホスが動いた!なんかウキウキするな~。

がんばれ二人と…も…!?





トビアスの後ろにいきなり真っ赤な光点が出現し、ロッホスも、パウラも、トビアスも…三人を示していた緑の光点は、その赤に飲みこまれるように…赤い光点ごと、消えた。




…ウソ、だろ?


…なんだ、これ。


…赤い光点は…敵。


…悪意を持った、敵。


…昨日トビアスは何て言ってたっけ?


…「尾行されてる気がする」「気持ち悪い雰囲気」




くっそ、俺の、大バカ野郎ッ!!



トビアスは、本当に誰かにつけ狙われてたんだ!目的はわかんないけど、赤かった!トビアスをどうにかしようとしている悪意のカタマリ。なんで昨日、パウラたちだって決め付けて真面目に聞かなかったんだ!



「フォルカー!!イグナーツさん!!」


「うお、なんだよアル?」


「イグナーツさんを呼んで!緊急事態だ、トビアスたちが攫われた!」


「…は?ロッホスとパウラが攫いに行ったんだろ?」


「違う!悪意を持ってトビアスを狙ってる他のやつがいたんだ、たぶんロッホスとパウラも巻き込まれて一緒に攫われてる!呆けてる場合じゃない、イグナーツさんを呼んでこいフォルカー!!」



怒鳴ると、俺の様子が尋常じゃないと思ったフォルカーはイグナーツさんを呼びに行った。俺はそのまま、なりふり構わずフィーネへ通信を入れた。



『おや、アル。今日は随分早い時間に…どうした?…落ち着くんだアル』


「フィーネ!緊急事態!トビアスとパウラとロッホスが攫われた!たまたま自動マッピングで三人を見ていたんだ。そしたら急に赤い光点が出現して、三人の光点を飲みこんだみたいに消えた!どうすれば…いい?」


『アロイスに知らせたらぼくがすぐそちらへ行く。第一かい?』


「違う!第二のフォルカーの家!イグナーツさんもいるから知らせる。…俺、現場に行ってくる…!」


『待つんだ、アル!焦ってはいかんよ』


「だって…!フィーネへ接続して現場に行けば、今なら詳しいことが読めるかもしれない!俺、行くから!」


『…グローブとヘッドセットを奪われるな、移動魔法を使ってもいいから慎重に。イグナーツさんに協力要請するのはぼくがやろう』



俺はポカンと見ているフォルカーとイグナーツさんに、「フィーネが来るから事情を聞いてください!」と言ってから第二を飛び出した。


人気のないところでゲートを開き、トビアスたちが消えた路地に行く。

そこでフィーネへ接続…したら。



蟲。


蛇。


蜘蛛。


百足。



俺が気持ち悪いと思う、ありとあらゆるモノの折り重なった、ひどい匂いのマナが俺の全身を包む。


思わずヒザを地面に付き、嘔吐えずく。


何もいないのに、服の中にそいつらが入り込んだような感覚がして、必死に手で払いのけた。


くそ…何か手がかり!トビアスたちのマナの波が来る方向!掴め、早く!


ふっと、その蟲たちが来る方角が視えた。この路地はエプタのある緑青南部地区から、トビアスの家の方向、東部地区へ続く道。ここから…西北西へ約5㎞!見つけた、みんな…!



「フィーネ、今から座標を送る!この地点から西北西へ約5㎞でトビアスたちのマナの波を見つけた…!うぇ、げふ…」


『アル!…ひどいマナを感じているじゃないか。慣れていない者にはキツい、接続を切るんだ』


「これ…このマナ、感情はあんまり感じられないけど…気持ち悪い生き物ばっかりの気配がする…いま接続を切ったら、トビアスたちのマナを見失っちゃう。大丈夫だから」


『いまフォルカーのお宅へぼくだけ先行で到着して説明しているところだ。いったん戻れ、アル』


「 … い や だ … ! 」


『馬鹿者、素人が手に負える相手ではないよアル!この気配、十中八九タンランの呪術師だ。今までぼくが見たようなハンジンのなんちゃって呪術師ではない、本物なんだ!一瞬で三人を拉致して遁甲で連れ去った手腕、複数いるはずだ。戻れ!言うことを聞けないなら君の意識を刈り取ってでも連れ戻す!』


「…わかった…」


『すまないアル、怒鳴ったりして。トビアスたちが攫われて焦る気持ちもよくわかる。でも…悪食をしてまで敵の遁甲の方向と距離を割り出してくれたんだ、よくやったよ君は。さ、戻っておいで』


「うん…わかっ…!?ぐふ!」


『…アル?アル!!』



ほんの一瞬。


フィーネの所へ戻ろうとそっちに意識を向けた次の瞬間、後頭部に何か衝撃を受けて、俺の意識は飛んだ。





  


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