表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Three Gem - 結晶の景色 -  作者: 赤月はる
宝石の旅路
323/443

322 紫紺対策 sideアロイス

  






珍しく日中にヘルゲへ通信してきたアルノルトは、中枢の若い紫紺と会える機会があるんだけど、危険だと予想されるので困っていると相談してきたらしい。ガードから紫紺のカリスマが魔法関連ではまったくと言っていいほど防げないと言われたようで、相当不安がっているみたいだ。



アロ「…なるほどね…強力な紫紺のカリスマ持ちか…」


ヘルゲ「なあ、あの緑青の第三にパラサイトとパラジェネシスを作らせていた紫紺だが。あれもけっこう強力なカリスマ持ちだったんだろう?コンラートとカミルが確保したんだったな?」


コン「わかってて本人と話をするような方法を取りゃしねえよ。俺は消えて哨戒しつつ、ゴーサインを出しただけ。俺に接続して消えたカミルが首筋に指輪(暗器)を押し付けて睡眠薬で昏倒させた。一言も話しちゃいねえ」


カミル「だな。シュヴァルツで何回も紫紺には接触しているが、紫紺の偉いさんてのはざっくり総括すると『憎めないやつ』が多い。つい気を許しちまいそうにはなるが、俺らも仕事で気を張ってるんだから犯罪者相手にそうそうオチやしねーよ。だが尋問を担当する蘇芳は紫紺の尋問には複数人を用意するぞ。相手を憎めなくなって同情が湧く頃には交替させる。もちろん心理魔法も併用するが、それでも複数必要なんだ」


アロ「…ん~…魔法で防御ができない、か…憎めない人物…心を許す…その人物がカナリアの最長老に何が起きたのか…新長は何を考えてアルノルトとダンさんを集会に呼んだのか知りたいと思って来るわけだから…周囲が都合のいいように勝手に動いてしまうカリスマ性…」



僕は考える。人の心理について、僕は今まで学んできた。でもそこから導かれる答えに、内心その若い紫紺への同情が浮かんできてしまう。


ニコルの「愛し子という特徴」との共通性。


…バカか、僕は。会ってもいないのに僕が籠絡されそうだ。今はアルノルトを…金糸雀を守る方策を。それに下手したらグラオの内情を一番知られてはいけないポジションの人物に知られてしまう可能性が高い。


だけど、アルノルト自身も紫紺に会ってみたい気持ちはある、と言っている。紫紺への興味が本人に湧き上がっている状態で、心を完全に閉ざすことなど…分割されていた頃のヘルゲでもできるかどうかという荒業だ。



アロ「…ヘルゲ、検証してほしい。ダンさんへは高レベルの『記憶施錠』をアルノルトが掛ける。それとアルノルトを呼び戻して、ベルカントで臨時にバイパスを繋げる。そしてグラオに関すること、軍の秘匿に関すること、そして最長老、新長、ダンさん、カナリアの集会…これらのことに秘匿レベルの設定をする。公開キーは僕とヘルゲで厳重管理。秘匿する情報はアルノルトにも話を聞きながら、慎重に設定しないとまずい。不自然さが出ないように…緻密に設定しないと。それをやった上で、ニコルに接続させて守護で守る…それしか僕には方策が思いつかない」


ヘルゲ「…ちょっと待ってろ。ミッタークとナハトにも検証させる」



ヘルゲはそう言うと、開発部屋へ行った。



フィ「…会わさない、という選択になるかと思っていたがね、アロイス」


カイ「俺も会わさないのがベストだと思うがなー…俺と違ってアルのやつ、頭はいいがよ。だが純粋すぎてあっちゅー間にその紫紺のことを好きになっちまいそうだぜ?」


マリー「それは言えてるわね…アルは基本的に会う人みんなを好きでいたいと思ってるし、そこがいいところでもある。でも今回はかなり危険なんじゃないかしらぁ…」


アロ「うん、皆の意見もわかる。でも、これは僕の直感…って言っちゃうと説得力ないのは分かってるんだけどさ。いま金糸雀の里で一番注目されているのは新長とダンさんとアルノルトだ。紫紺が広報部の視察に来るのは、もちろん歌劇団の記事の反響もあるだろうけど。中枢が何を考えてるかなんて明らかだろ?『なぜ金糸雀支部がいきなり右肩上がりで調子を上げ、素晴らしい情報を得られるようになったのか』だよ。そこで新長の所信表明で発表された内容が理由として挙げられるのは必然。そして紫紺は広報部のダンさんへ接触、当然アルノルトにも会おうとする。ここで面会を拒否したら、後ろ暗いところがありますと言っているようなものだ…」


ヘルゲ「…すると当然、白縹が緑青の養子になって金糸雀へ滞在しているのは中枢も知っているんだから『家畜が中枢(飼い主)に会いたくないと言っている』という図式が出来上がるな。結果、ヴァイスはいらぬ警戒と内偵をされることになるだろうというのが、ナハトの見解だ。前半部分はアロイスとぴったり合致していたぞ。それと…ミッタークもナハトもアロイスの言っている方策がベストで、さらに常時ニコルと接続要とのことだ」



…やっぱり、そうなるか…



マリー「…ほんと、やっかいね。精神防壁を厚くしてもチャームではないから無効、シャドウを出そうかと思ったけど、結局影自身が籠絡されそうだわ…」


コン「…だがよ、アルが紫紺に興味を持ってるのは仕方ねえとして、最長老やグラオ内部のことを『絶対バラしたくない』と思ってるのは間違いねえだろ。俺はアロイスの方法で防御しとけば秘匿についてはなんとかなるんじゃねえかと思うがな」


アロ「…うん、僕もそう思う。現状でこれしか対応策は思いつかないけど、アルノルトとも密に連絡をとっていこう。透明化してアルノルトの補助をするとかは最終手段だね。補助人員が籠絡されたら目も当てられないからさ。ま、これだけやればなんとかなるね、ありがとう皆。じゃあ解散」



なるべく明るい口調と顔で解散した。ここでアルノルトへの心配と同じくらい若い紫紺に同情しているなんて知らせることもないし、何かあったらその時だ。それをなんとかしちゃうのが僕らでしょ!





*****




アル「お願いしまっす!」


アロ「そんな決死の顔しなくたって大丈夫だってば~」


アル「だってミロスラーヴァさんのこともグラオの皆のことも、しゃべっちゃったら俺は自分が許せないよー!」


ヘルゲ「…お前がしゃべるわけはないと思うがな、アル」


アル「え…でもさあ…強力だって…」


ヘルゲ「カリスマ性で籠絡されるというのは、その人物を好きになってしまうってことなんだろう?…ところでアル、お前はダン・山吹が嫌いなのか?」


アル「うぇ!?俺、ダンさんのこと大好きだよ!?」


ヘルゲ「その人物にグラオのことを話していないじゃないか」


アル「あ…そっか…」


ヘルゲ「そういうことだ、アル。必要以上に不安がらなくてもいい。その人物をお前が好きだと思ったら好きでいいんだ。でも好きな人物に秘密を持ってはいけない決まりなどないぞ」


アル「…うん。ありがとヘルゲさん!」


アロ「はは、そういうことだねアルノルト。でも金糸雀へ行ってからの重要な記憶を秘匿情報にしちゃうから…僕とヘルゲが公開キーを送らないと『忘れている』状態になると思う。ダンさんと長様には伝えてあるね?」


アル「うん、それは大丈夫。インナさんは何度も紫紺のカリスマ持ちに会ったことがあるから慣れてるって言ってたし…慣れるもんなんだね、俺にはよくわかんないけど。ダンさんとも相談して、記憶施錠かけてきたよ」


アロ「ん、じゃあ大丈夫だね。がっつり観察してきちゃえ」


アル「あは、わかった~!」



ヘルゲがアルノルトの重要な記憶に秘匿を設定すると、「…あー、確かに重要なことなのになんだったっけって思うね」と不思議そうになっている。ヘルゲは簡易型リンケージグローブをニコルに固定してアルノルトへ渡し、グローブの同時行使ができるようにしてあげていた。


アルノルトは、長様やカナリアたちと仲良くなったことも覚えているし大丈夫そうだね!と笑って金糸雀の里へ戻って行った。





ふっとヘルゲを見ると…なんか様子がおかしいな?と思った。アルノルトと相談しながら秘匿にする記憶を選別してたけど、何かあったのかな?



アロ「どうしたヘルゲ?…何かあった?」


ヘルゲ「…アルのせいじゃない。わかっているが…何で俺は禁書の呪縛から逃れられないんだ…?」


アロ「…ヘルゲ?」


ヘルゲ「…!! な、なんでもない。気にするな」



禁書といえば「こうぎょくのだいぼうけん」ですね…そっか、アルノルトの記憶にまたあの絵本絡みで何かがあるのを見つけちゃったのかな?


あはは~、後で図書館を見てみよーっと!







  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ