表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Three Gem - 結晶の景色 -  作者: 赤月はる
小さな結晶たち
268/443

267 ピンクの象さん sideコンラート

  





トリプルブッキングしていたというミッションの手伝いをするため、カミルを追って「消えて」からゴーヴァルダナ国へゲートを開いた。カミルも消えているから、お互いの位置確認が面倒だな…



カミル『んあ?コンラート来たんか?』


コン『おー、いまクリシュナ・バザール本店の看板の真下にいるぜ』


カミル『なんだ、すぐヨコにいるんじゃねえかよ!めんどくせえな、仲間同士位置がわかるようにしとけよ』


コン『元から複数人が使えることなんて想定してねえってんだよアホカミル!そんなに視たかったらヘルゲに接続して高出力の索敵すりゃあ視れるよ!』


カミル『ここで姿を現すワケねえだろ…コンラート、お前も意外とバカだな』


コン『うっせえ!ンなこた分かって言ってんだよクソバカ兄貴!さっさと行くぞ!』



ふんが…っ

カミルは口が減らねぇな…っ


店の中をウロつきまわるが、やっぱしこの店をツブすとなると…まあ商品をぶっ壊すっつー経済的制裁になっちまうか?ここの商品は大店なだけあって多岐に渡っている。生活用品から食料、もちろん香辛料や衣料品…一店舗だけで白縹の村の商店並みだな。コレ…商品どうにかしちまったら、罪もない民草が迷惑被るっつーパターンかァ?



コン『おいカミル…こりゃ経済的な制裁じゃちっと流儀からハズれんじゃね?』


カミル『確かにな。従業員はまっとうなヤツが多いな。あの商会のトップが腐ってるだけか…店を直接攻撃じゃ、ただのイヤがらせ以下だな』


コン『だなー、まっとうな従業員に無辜の民か…アカンなこりゃ。アロイスに相談すっか?』


カミル『いや、商会のトップの自宅を見よう。そいつが脅されて仕方なくアヘンを持ち込んだとかいうワケじゃねえなら、そいつに痛手が来ればいいんだからな』



カミルは俺に地図データを送ってきた。…中央じゃあるまいし、なんで他国の地図データ持ってんだよコイツ…軍事情報に抵触すんじゃねえのか…



カミル『…地図は俺じゃねえぞ、ヨアキムとヘルゲだ』


コン『ぶ…あいつら、マザーをただの資料室としか思ってねえんじゃねえの?』


カミル『しょーがねえよ、製作した奴と改変した奴だもんな。俺は驚くのに疲れたからもう考えねえよ…』



まあ、それは正しい反応だわな。

地図の場所に着くと…悪趣味なタマネギを頭に乗っけた塔が5つもある御殿だった。なんなんだよアレ、カラフルなタマネギなのか造形に失敗したソフトクリームなのかハッキリしろよ。塔もすげえ色合いのくねったストライプで、飴細工みたいに見える…



カミル『あの建物見ただけで殺意が湧くとか、俺って人として間違ってるか?』


コン『んあー…せめて半殺しくらいにすりゃ、ギリギリ人間で済むんじゃね?』


カミル『お前後でぶっ飛ばす』



あのタマネギに殺意を刺激されたカミルはイラつきが頂点のようだ。意外と冷静なカミルをここまでにするたぁ、あの商会侮れねえ。



コン『うおーい、アロイスいま話せるかァ?』


アロ『はいはーい、大丈夫だよ』


コン『あのよ、商会の従業員はマトモなのが多い。トップの自宅を狙うつもりなんだけどよ。商品に手を出さないとすれば、お前ならどう制裁するよ?』


アロ『ん~、そっか。イカれてるのはトップだけ、ね…わかった、ちょっと何かないか探してみる。一応その自宅の構造とか把握しといてくれる?』


コン『あいよ。カミルも聞こえてたよな?それでいいか?』


カミル『…わかった…今から俺、あんな建物に入るのか。美意識が許さねえ…』



あ、イラついてたのはそういうコトかよ。俺は潜入くらい気にならねえけどな?ここに住めって言われたらひとまずタマネギ全部爆破してやるけどよ。






*****





結論から言うと、あの建物の住人はクリシュナ・バザールのトップだのブレーンだのの家族が全員住んでいて、今回アルカンシエルに荷物を運んでいる商隊の代表は№2のようだ。きちんとタマネギ御殿にトップはご在宅で、気だるげにクッションに身を任せて何人もの妻を侍らせながら部下の報告を聞いたり書類を眺めたりしていた。…え、コレまじでこいつの仕事風景なのか?



カミル『なあ、やっぱ殺してもいいよなあ?こいつの存在自体が俺には理解不能だ』


コン『カミル、落ち着けって…とりあえず証拠っぽいモンあっかな…手土産にできそうなのを探そうぜ』


カミル『おう…』



不機嫌そうなカミルの返事をスルーして、俺はトップが見ている書類を覗いたり№3以下のやつが何をやっているのかを見てみた。しかし残念!この大陸ではアルカンシエルの言語が公用語になってるから、中央にいる分にはいいけどよ…ゴーヴァルダナの言語は聞き取れても読めねえ!数字くらいだなー…


ウロウロしてると、俺とカミルへ会議通信が入った。



アロ『二人とも話して大丈夫~?』


コン・カミル『おー』


アロ『ヨアキムが面白いモノみつけてくれました~。ゴーヴァルダナの神話とか宗教絡みのデータでーす』


カミル『また宗教かよ…なんだコレ?』


アロ『その国って身分制度が絶対的なんだってさ。身分が上の偉い人は下層の者や旅人に施しをするのが当然だし、敬われて当然。だけど、悪いことすると…来世で最底辺の身分に落とされるんだって』


コン『ふん…それで?』


アロ『そこで神様と天罰の出番だね~。この神様たちの像や絵画って、そこらへんでよく見かけなかった?』


カミル『おう、あったな…建物だけじゃなくて神様もカラフルかよって思ったぜ』


アロ『そそ。んで天罰で有名なのは~、そのピンクの象さん!』


コン『…アロイス、てめえ…読めてきたぜ…』


アロ『コンラート頭いいね!手が3組ある、着飾ったショッキングピンクの象さんになるのがお一人様~。んで象さんお得意の天罰って”ヴァルダナの雷”って呼ばれてるらしいんだよね。ヘルゲの雷霆ライテイの出番じゃないかな~?』


カミル『ちょっと待て…てこたァ、ヘルゲの殲滅魔法を制御すんのがうまいのはコンラートだろ?まさか俺がこの…』


アロ『イエス!ピンクの象さん!この神様はねえ、悪い行いをした人に雷を落として、”お前の来世は最下層の身分だ!”って伝えにくるんだってさ~』


コン『…なるほど。こいつ自身の信用をオトせば、まっとうな従業員は離れるし民も品物を買い控えるか…マトモなやつは別のバザールを使うよな』


アロ『そういうこと!二人ともがんばってね!』



アロイスは後で俺らの報告用映像記憶を見て爆笑する気満々なんだな。カミルがいるであろう方向から、ものっすげえ殺気が流れてきてんぞオイ…



コン『カミル、殺気ダダ漏れだぞ。いくらなんでも気付かれる』


カミル『…おう、わかった…あまりのショックでよ…なあ、精霊版の雷霆を俺がやるから…』


コン『グラオのボスから変装指令だぜ。グッドラック、兄貴』


カミル『ドちくしょぉぉぉ!』





*****




その日、ゴーヴァルダナ国に神が降臨した。


その神は商業の神と崇められているにもかかわらず、その国の一番大きなバザールの主の元へ現れ、その御殿の屋根に降りたってとんでもない怒りの波動をぶち撒けた。慌てた主や住人は全員が建物から飛び出して、「荒ぶる神よ、お鎮まりください!」と平身低頭した。しかし神の怒りは収まらず、その六本の腕を激しく振り、太鼓腹を揺らして激しい怒りの舞踊を披露した。そしてバザールの主を指さすと、彼の頭上に大量のアヘンの袋を落としたのだ。


アヘンを見た主はハッとして、それ以上何も言わず項垂れた。そして神はもう一度怒りの舞踊を披露して…御殿にヴァルダナの雷をバリバリと落としたのだった。それはそれは恐ろしい雷で、主も御殿の住人も髪の毛が一本残らず逆立つほどだった。神は乳白色の守りを纏い、恐ろしい雷の檻を怒りのままに放出し、その怒りを思い知れとばかりに太鼓腹を揺らして踊るのをやめなかったという。



*****





アロ「ふ…ぶふ…お疲れ様、カミル、コンラート…」


カミル「…」


コン「お前、見物に来てたんだろ?そうだろ?」


アロ「いやあ…だって一番イイ位置で映像記憶を残さなきゃっていう使命感で…ぶふーッ!」


カミル「おい、商隊はもう西方国境に着いたのかよ?」


アロ「うん、シュヴァルツが瑠璃の上層部も確保したよ。クリシュナ・バザールの荷物は馬糞だらけだったけど、ちゃんと留置してあるってさ」


カミル「その№2は荒ぶる神を見てねえだろ?ボス自ら制裁しに行ってこいよ…」


アロ「いや、僕にはあんな踊りのセンスは…ぶっふぅ!!」


カミル「ヨアキムのデータにあの象の踊りが入ってたんだ!お前もやれよこの腹黒魔王!」


アロ「無理…ほんとムリ…勘弁してカミル、僕のなけなしの腹筋が…」


コン「カミル、許してやれよ。いまヘルゲから通信が入ったぜ、最後の王太子暗殺集団がまた出たんだってよ。20人くらいの規模らしいから、早く行かないと食いっぱぐれるぜ?」


カミル「うおおお、行ってくらぁぁぁ!」



カミルは貴重な怒りのはけ口を求めてゲートから乱闘騒ぎの中へ突入していった。入れ替わりにその現場から帰ってきたフィーネは「本物の殺気には敵わないね…実験はもうやめるよ…」と何故か意気消沈していた。






  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ