26 癪に障る相方 sideヘルゲ
「…くっくっく…うん、なるほど。うん、うん…シブい…くっくっく…」
アロイスが腹を抱えて笑っている。
原因は、ニコルから聞いた「シブい男」評価を俺が女子に受けている件だ。
なんなんだ、そのシブいってのは。何が評価基準なんだ。
無口ならなんでもいいのか、女子ってのは。
まったくわからん…それで、そのシブいと思っている相手に渡すものが山ほどの菓子だというのだから、ますます不可解だ。
俺はもう砂糖を見ても吐き気がするほど喰ったんだぞ…!
いや、もうそれはどうでもいい。
問題は、目の前で笑い転げている、こ の 男 だ 。
そうか、そんなに楽しいか、アロイス。
今日なんだな、今日こそ秘匿レベル8を喰らいたいんだな…!
ぎりぎり、と奥歯を噛みしめていると、ニコルがつらそうに話し出した。
「私が毎日お兄ちゃんたち独り占めしてるから、ズルいんだよね?そしたら、毎日じゃなくしたほうが、いいのかなぁって…」
「何を言ってるのかなぁ~、ニコルは。嫉妬する、なんてアッチの都合だよ?なんで僕らが気を遣わないといけないのさ?」
「う…でも、他の人が不愉快に思ってるなら、改善したほうが、いいんじゃないかな、と…」
…な…何を言ってるんだ、ニコル!?
他人が不愉快に思うから、だと?
誰なんだその「他人」ってのは。炙り出して…いやいっそのこと火炙りにして…
はっいかん…俺は学習したはずじゃないか。
アロイスにも散々言われただろう、ニコルに関することですぐカッとなるな、と。
だが…笑い転げてたアロイスを思い出すと、素直にやつの言うことを聞くのも癪に障るんだがっ
俺はどうすれば!!
…ああ、いつも通りアロイスが抑えにかかったか…
しかし、ニコルは俺たちといると、あのクジラ女みたいなやつに絡まれる可能性があるんだよな?そういうことだよな?
あれは、面倒くさい。
いや、俺は面倒くさいで済むが、ニコルはきっと傷ついてしまう。
そんなことは、許容できない。かわいそうすぎる…
なら…周りから見えなければ、会いに来てくれるのだろうか。
そんなことをしても、俺たちが「森に行っていない」ことが証明されなければ同じことだろうか。
俺はとりあえず、遮光だけで済ませられないものかと、ニコルに提案してみた。
すると、ニコルはハッとした顔になり、すごく申し訳なさそうな顔に変わり…
「ううん!私お兄ちゃんたちと一緒にいたい!それに、見られたってかまわないよ、自慢のお兄ちゃんたちだもん!」
自慢のお兄ちゃん
自慢のお兄ちゃん
自慢のお兄ちゃん
自慢のお兄ちゃん
(以下無限リピート)
か…
顔が緩む…っ
わかった、ニコル。お前が、自分の危険を顧みずに俺たちのことを真剣に思いやってくれたのはよくわかった。
俺は犯人を炙ったりしないし、砂糖味の菓子も食うし、アロイスの言うことも、非常に癪に障るが、なるべく聞く!!
俺は、お前の本当の「自慢の兄」になってみせるぞ。