表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Three Gem - 結晶の景色 -  作者: 赤月はる
三つの結晶
21/443

21 顔面凶器で僕がしぬ sideアロイス





「ねぇ、ヘルゲお兄ちゃんって寡黙でシブいって思われてるんだよね?」


「まあ、まったくと言っていいほどしゃべらないからねぇ~」


「…学舎で話すことなど、ない」


「でもさ、それでキャーキャー言われるんだったら、少しイメージ変えてみるって、どうかなぁ?」



かわいいかわいいニコルは、急にこんな提案をした。


いや…そりゃね、ヘルゲがジャマだってイヤがるから排除しているのであって。

普通に考えたらこんな前髪で無愛想なのにモテてる超うらやましい男なんだよね、こいつ。


…自分で穏便に排除してほしいなぁ…いや、ムリか…


まあ、もし有効な手段だったら、今後のことも考えて採用してもいいな。



「ヘルゲはここ以外じゃ、しゃべれないよ?どうするの?」


「ふふーん、わかってますって。そうじゃなくって、とりあえずホラ、見た目からっていうことでぇ…髪形、変えてみるのは、どうかなあ?」


「お?おぉ、斬新な発想…なの?それ…」



…ヘルゲの前髪については、中等にあがった瞬間から同期全員の興味をひいている。


とにかく前髪をからかわれても、切れば?と進言されても「触るな」「切らん」「必要ない」等のテンプレで返しており、それでも一瞬髪に触ったやつの手をヘルゲが払いのけたら、そいつの手首が折れた。


まあ、ナニーも見てたんで、そいつは自業自得ってことでカタがついた。

それでもう同期は全員「ヘルゲの前髪はアンタッチャブル」という認識が染み渡ったのだ。



と、そこで勢いに乗ったニコルの、渾身の一撃が来た。



「ヘルゲお兄ちゃんは、長い前髪で相当ソンしてると思うの。だって『悪魔』なんてひどいよ!ユッテも言ってたよ、『陰鬱な雰囲気が悪魔そのもの。そしてお年頃のお姉さま方は(わる)に弱い』って!」


「ぶふぅっ悪…悪って…ぶふあっしぬ…しぬ…ニコル勘弁して…今日のニコルはアサシンか…!」



く…苦しい…ほんとに苦しい…ヘルゲが!ワル!ぶふぉっげほげほっ


黒くま求めて東奔西走するあいつが!


ニコルに泣かれるとフリーズして、汗が滝みたいに流れるあいつが!


ニコルが笑うとスライムみたいにでろでろになるあいつが!


ニコルに怒られると奈落の底で穴掘るほど落ち込むあいつが!



ひい、ひい…はあ…死ぬかと思った…

やっべー、ユッテ&アルマと話してみたくなってきたぞ。

おっもしれー!




「ニコルがそうしたほうがいいと言うなら、俺はかまわんぞ。もともと、何も見たくなくて髪で遮ってただけだからな。いまは見たくないものなんてないが、単に面倒でそのままだっただけだ」



お。

うーむ、さすが、ニコルの提案ならアリになるのか…


でもなるほどな、あの当時の過剰反応はそれが原因だったのか。

「見られたくない」じゃなくて「見たくない」だったんだな。



…つか、いきなり髪形変えた後、周囲に説明するのって僕なんじゃね?


ふおー…目に見えるようだー…



ま、いいか。

ニコルが僕らのことを真剣に考えてくれたことなんだからね。


ニコルの自慢のお兄ちゃんは、後始末くらい頑張りますとも、ええ。



「じゃあ、とりあえずヘルゲお兄ちゃん前髪上げてみて?いきなり切っちゃうのも、失敗したらこわいし…どれくらい短いのが似合うか試してみようよ!」



おお…長年の禁断の扉が、女神によって開かれる時がきた…!







なんっじゃそりゃあああああああああああ!!


おま…っ


ヘルゲ髪 切る → 学舎大騒ぎ → 僕 説明に大わらわ → 学舎でヘルゲにイカれる女の子 年齢問わず急増 → 僕 排除に大わらわ → ヘルゲ 村で買い物する → 村でヘルゲにイカれる維持セクトの女性急増 → 僕 排除に大わらわ………


ナニコレ走馬灯?走馬灯なの?僕 死ぬの?死んじゃうの?




ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!



「ヘルゲ!だめだそれ!却下!お前、フェロモンは顔から発射するもんじゃないんだぞ、わかってるか!?」


「…どういう意味だ…アロイス、お前なんかイラッとするぞ…」



あほかこいつ!鏡見たことねぇのかっ


つか、宿舎でフロも一人でまんじりと入ってるし、寝るときはフトンに全身もぐりこんで繭みたくなってるし、僕は僕で見られたくないんだろうなと思って見なかったし…


ああああ、こんなとこに一番の危険があったなんて…


は!こんなヤバいの誰かに見られたらっ



「ばかやろう、いいから手をおろせ!誰かに見られたらどうすんだ、誘蛾灯じゃないんだからなっ!」


「だから、どういう意味だっいい加減お前、説明しないと『飛ばす』ぞ!?」



うるせぇぇぇぇ、いいから隠せよその顔面凶器っ


僕を過労死させる気かああああああ!!



はぅっ

ニコルが顔真っ赤にして停止してる!!


うわああああ、ニコルが穢れるだろ、このやろおおおおおっ


ニコルがまともな恋愛できなくなったらお前のせいだからなっ



「ニコル!正気に戻ったか?いいな、今のは“秘匿レベル9以上”だ!わかったな!?」


「う…うん、わかった…」



くそ、これはヤバい。ニコルに毒だ。

僕はバイパスを使って、今の映像記憶をほんとに秘匿レベル9以上に設定してやった。



はあああああ、マジこいつ、勘弁しろよ…


まだ事態を把握してないな…お前、帰ったら説教だ。


主に、顔の美醜についての特別講義だ!!




つか、今のでわかったぞ…


こいつ、ビルギットが美人だなんて、少しもわかってなかったんだ。

ありえない…仕方ないなあ、もう…


ほんと、僕がいなきゃどうなってたんだろうなこいつ。


…しょーがない、がんばるかあ。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ