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Three Gem - 結晶の景色 -  作者: 赤月はる
その後の結晶たち
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191 どっちもどっち sideアロイス

  





ヘルゲとフィーネに依頼したテントの試作品が出来上がってきた。

カイさんとカミルさんも加わり、レポートはすぐに仕上がったけど…やはり問題は激戦区、しかも昼夜問わず砲火に晒されるような場所にいるケースだった。拠点となるベースもどきがあるならマシで、そういう時は普通に野宿。相手がゲリラ的な手法を取る場合、マナを感知されると厄介なので結界も敷かずに休むことがあるという。


うーん…でもそこまで想定しちゃうとテントなんて持って行っちゃいけないと思うんだよね。そのテントのせいで見つかるかもしれないんだから。


…と思っていたけど、ヘルゲもフィーネも自信満々だった。逆にそういう状況ならこいつは役立つ、とまで言う。



「テントと言われたから、最初はキャンバス地の丈夫な布とかいろいろ考えたんだがな…やはりテント自体を設営できないケースに対応できなくなる。そこで結論は、結界方陣だ」


「え、マナを感知されるんじゃないの?」


「だから、感知されないようにしたのさアロイス。この魔石入りのピックを土に差すと、土中で方陣が展開される。土中なのでマナの光も漏れないし、結界が出現するとそれを覆うようにして隠蔽が展開される。結界が完成すると同時に住環境整備に入るんだが、これには2通りのルートが設定されていてね。一つはテントの実物がないケース。隠蔽された結界の中に防諜・遮音・遮光の複合方陣が展開され、さらに結界表面に迷彩を施す。もう一つはテントの中で展開するケース。これは軍であてがわれたテントに入ることができた時、結界表面には寝袋等で眠っている使用者の画像が映し出される。だが本人は遮光方陣の中で食事をしていたり、通信していたりすることができる」


「…はあぁ~…なるほどね。テントの分荷物が嵩むこともないし、いいねそれ。…ん?三種類の複合方陣…!?結界と隠蔽の二重方陣の中に複合方陣?密閉型だから、なんか重ねすぎて干渉しそうだけど…ていうか…その方陣、レベルいくつなの?」


「…レベルは…単独の方陣として見れば、各々レベル…10かそれ以上になってしまうねえ…?ま、まあホラ、複合方陣として見れば、そんなには行かない…よ?」


「干渉しないようにクアトロの複合方陣を開発したんだ」


「ちょっと待った…クアトロ!? 三種類じゃ…」


「ああ、迷彩を映し出すプログラムも一緒にブチ込んだからな」



僕は衝動的に粘土味の方のレーションを掴んだが、このマッドなHENTAI魔法使い姉弟が結界方陣で防いだため、お仕置きが未遂に終わった。



「だーっはっはっは、アロイスも苦労してんなー!いいじゃんか、エレオノーラさんもそろそろこいつらのことは諦めるぜ?それよかテント作り終わったら俺らの分も通信機と移動魔法、クレ」


「ああ、すぐできる。…おいアロイス、カイとカミルの通信機…どうするんだ?俺たちと同じ仕様・・にするのか?」


「ああ…そうだねえ…もう統一しちゃおうか?アルマたち三人の分もあるし…ニコルに選んでもらおう」


「ニコルが何選んで…あ!まさかぬいぐるみかよ!?」


「ピンポーン。ご希望はありますかお二人とも」


「「ねえよ!」」


「じゃあニコルにお任せコースですね、承りました~」


「「魔石のままクレ!」」


「無理でーす、グラオの標準仕様でーす。それに大佐も中佐もホワイトライオンのぬいぐるみなんですよ、諦めてくださーい」


「「­これは…地味にキツいなこの職場…三十路男がぬいぐるみ…」」


「兄貴、慣れだよ慣れ。俺はぬいぐるみと一緒に訓練した男だぜ?ニコルには勝てねぇって…」


「「ぜってぇ人前で通信できねえ…」」


「もともとそれが狙いなんですよ。カイさんとカミルさんには絶大な効能ですねえ。ま、ニコルがどんなぬいぐるみを選んでくれるか楽しみにしててくださいね」



向かい合わせで地に膝をつき、ガックリと項垂れるカイさんとカミルさん。息がぴったりですね。



「…まあ、これでプレ・ミッションはほぼ見通し立ったかなー」


「肝心のレーションはどうなったんだ?」


「ああ、もう完成したよ。毎日配達するから保存性にそこまで拘らなくてもいいし、単純に汁気が少ないものならヴァイスの食堂のメニューからスヴェンさんがチョイスしてお弁当に仕立ててくれる。代金はもちろん派兵期間中は軍持ちになるしね。コンバット・レーションや甘味はクラウディアさんが定期的に補充してくれることになってて…まあ、あとは稼働する時期にポーターを全員に紹介して驚かないでねって言っておくくらいかな?」


「ん?でも普通に料理を試作してなかったかい?」


「ああ、あれはねえ…実験に半年くらいかかるから、まだ無理」


「半年!?何の話だい?料理だろう?」


「真空パックの実験してるんだー。加熱調理した料理を真空状態で小さな結界方陣に入れておくと…どこまで食べられる状態で保存できるかなって。最大半年いけるようだったら、非常食にもレーションにもなるでしょ」


「アロイス…お前俺たちのこと言えるのか…料理の鬼かお前は…」


「クアトロ複合方陣作っちゃうヘルゲに言われたくないよ!僕のは常識の範囲内でしょ!」


「作った料理を半年後に食おうとするのは常識じゃないだろう!お前も大概だぞ!」


「「「「兄弟ゲンカすな」」」」




うー、ヘルゲは全然わかってないんだからなー!

まあでも、これでニコルたちが入隊してきても戦場で不自由させないで済むよね。お兄ちゃんは頑張ったよ、ニコル。





  

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