19 クールダウン sideアロイス
超絶不機嫌なヘルゲを連れて、ひとまず森へ避難。
だーもう!
あんな美人をこっぴどくソデにしといて、この男はまだプリプリ怒って…!
「…で?君はなんでそれでそこまで不機嫌なわけ?僕はうらやましいくらいだけど?」
「不機嫌にもなるだろうが。あの女、俺の逆鱗に触れたんだ。消し炭にしないだけ我慢してるだろう」
でも尋常じゃない赤黒いオーラ出して、めっちゃ攻撃態勢で立ち上がったよねぇ!?
「ちょ…『あの女』なんて、かわいそうだろ…まあ、ちょっと彼女も言い過ぎだけどね」
「ヘルゲお兄ちゃん、アロイスお兄ちゃん…どうしたの?何怒ってるの?」
お、女神降臨。
昨日は現代社会の授業で失敗して半泣きだったけど、今日は好調みたいだな。
しかし、ニコルにこんな恐々とさせるなんて…
まーだムッスリしてやがるよコイツ。
ヘルゲのお仕置き、決定。
「ニコル聞いて聞いて!ヘルゲねー…」
「黙れ」
「ヘルゲ、ニコルが怖がってる。いい加減にしなよ」
「む…すまん…ニコル…」
よし、ちょっぴりお仕置き成功。そうだそうだ、少しは反省しろ。
まあ、ビルギットもしつこかったしね…このくらいにしてやるか。
「ヘルゲ。何もビルギットが悪くないなんて、僕は言ってないだろ?」
「ふん…さっきかばってただろうが」
ハイお仕置き再開ぃぃ~!
「ニコル、ヘルゲはね、ビルギットにお昼ごはん一緒に食べて、海まで散歩に行こうってデートのお誘いを受けたのさ」
「えええぇぇぇぇぇ!」
「アロイス!!」
ばかめ、怒りで何も見えなくなりやがって。
一気に冷静さを欠く弱点があるのに、防諜もしてない学舎でがっつりさらすところだったんだぞ。
あんな、女の子相手に魔法までぶっ放す勢いの怒りは「可愛い妹」の域を超えてるっつーの。
あああ、ニコルがまたビクビクしちゃったじゃないか~…
しょうがない、そろそろクールダウンしますか。
…
…
「ヘルゲお兄ちゃあん…」
「ニコル…だめだ、俺には止められん…すまん、俺が不甲斐ないせいで…」
おや、少しクールダウンしすぎたかな。
ニコルに涙目で「やめたげて、お願い」のおねだりなんていうご褒美もらっちゃったしね、今回は少しだけで許してあげよう、ビルギット。
はー、僕も美人には大概甘いよなあ…