15 衝撃のパジャマトーク sideニコル
ビルギットお姉ちゃん事件があって数日後。
お風呂からあがって部屋で髪の毛を乾かしていたら、アルマがうらやましそうに私の髪を触ってきた。
「いいなぁ~ニコル。きれいな髪だよねぇ~」
もー、また言ってる…
「だからぁ、私のは猫っ毛でつまんないって。アルマのふわふわの髪とか、ユッテのたっぷりしたツヤツヤの髪のほうが、私はうらやましいの!」
アルマは紫っぽいピンクの瞳に栗色のふわふわくるくるのセミロングで、とってもかわいらしい。
ユッテは薄い水色の瞳に金茶のツヤツヤゆるやかウェーブが背中まであるゴージャスな美形の女の子。…なんであんな性格なのかな…
で、私はと言えば。
銀色の、猫っ毛の、ストンとまっすぐな、セミロング。
…つーまんなああーい…
なのにアルマはことあるごとに私の髪をうらやましがる。
逆にいたたまれませんよ…気持ちは嬉しいんだけどさ…
「髪の毛っていえばさぁ、こないだのビルギット姉、悲惨だったよねぇ」
ギクッ
ユッテ、その話題はやめませんか…ドキドキ…
「そうだねぇ~、あれはね~。でもでもぉ、ビルギット姉さんと同室のナディヤ姉さんが言ってたんだけどねぇ?」
ひゃ…なんだろ、なにか犯人の痕跡でも…
「ビルギット姉さん、あの前日にねぇ、ヘルゲ兄さんに散々突っかかって、すっごく感じ悪かったみたいだよぉ?止めに入ったアロイス兄さんにまで、文句言ってたって。だから、バチが当たったのよーってナディヤ姉さん言ってたよぉ」
ほえ
バチ…なるほど、そういう方向になったの…そっか、それなら…うーん、いいのかなぁ!?
「あぁ~、そういうことね!つかさー、好きな人にイジワルとか、子供かっての。つかヘルゲ兄なんて、なんでそんな難易度高いのにいっちゃうかね!」
ぶはは!ってユッテが笑ってる…え?なに?ビルギットお姉ちゃんがヘルゲお兄ちゃんを好きだっていうの、そんなに知れ渡ってるの?
きょとんとしてる私を、ユッテがあ~あ、仕方ないねこの子…って顔で見てる。
むぅ…なによう~
「ニコルぅ…あんたほんとにわかってないみたいだから言うけどさ」
「な…なによお」
「アロ兄は笑顔がステキだよね?ドSだけど。で、人当りも柔らかくて、贔屓目に見てもけっこうなハンサムだよね?ドSだけど。」
「う…?うん」
そんなドSって強調しなくても…否定できないのが悲しいけど…
「で、ヘルゲ兄だけどさ。あの前髪うっとおしいけど、顔は整ってるよね?で、背も高くてスラッとしててさ。ちなみに…年頃のお姉さま方の言うことにゃー『あの寡黙さがシブくて、イイ』って評価らしいんだけども?」
「シブい…ええぇぇぇ、シブいいい!? あーははは、うっそだー、うきゃはは、やめてやめて、おなか痛くなるぅ~」
何言ってんのぉ、ユッテってば!
ヘルゲお兄ちゃんって、私のぬいぐるみコレクション見せてあげたら、へにゃって笑ってほっこりしてるんだよ?
一番のお気に入りは金色クマさんのロイだよって紹介したら、眉毛ハの字にして、黒クマのヘルはいないのかってしょげちゃうんだよ!?
はひー、おなかいたーい!
「…ハァ…この子ほんっとにわかってない…」
「はひ、ふひ…え?なに、ユッテ?」
「あのねえ!あの二人は密かに『天使と悪魔』ってセットで呼ばれてて、そりゃーもうお姉さま方にキャーキャー言われてるの!んで、毎日昼休みに森であの二人を独り占めしてるあんたは、嫉妬の対象になってんの!!」
!!??
…アルマがうんうん、って神妙な顔して頷いてる…
「そうなんだよねぇ~、私たちはニコルから聞いてるから違和感あるのもわかるけどぉ…ニコルとアロイス兄さんだけだもんね、ヘルゲ兄さんとしゃべれるの。そしたら、自分もトクベツになりたいってお姉さんたちが思うのも、無理ないよねぇ…」
天使と悪魔?
なんですか、そのろまんてぃっく街道まっしぐらな、うれしはずかしネーミング…
いや、そうじゃなくて!嫉妬?私が?独り占め?トクベツ?
…うっそーん…
白縹は精神修養しているので、精神年齢が高いことが多いです。
20歳で老成してるとかアリアリ。