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135 矜持 sideニコル

  





「次、ニコルね。えーっと…収束はいいとして…品質検査の時は湖みたいなのを出したって言ってたわね…津波ではないの?」


「あ、たぶん津波も出せると思います。やってみていいですか、ハンナ先生」


「もちろん。アロイス!結界強度を大規模魔法仕様にしてちょうだーい」


「あ、ハンナ先生!できたらその…結界は切ってもらっていいですか?」


「ええ!?応用修練場が壊れちゃうわ…って、もしかして…ヘルゲみたいに自分で結界張るとか言う?」


「んっと…たぶん結界があっても干渉はしないと思うんですけど、念のため…”盾”を出さないと、大規模魔法仕様の結界でも耐えるか怪しいので」


「…ああ…そうなの…うん、わかった。悪いわね、私たちも精霊魔法って未知だから…いちいち説明させてごめんね」


「いえ、そんなことないです。私こそお世話かけてすみません…じゃあ、盾出しますね」



アロイス兄さんが結界を切って戻ってきた。

よーし、やりますか!



守護、お願いね。


( 是 )



ヴォ…ンといつもより大きな音を出して、応用修練場全体に透明だけど薄い乳白色の甲羅みたいな「盾たちのドーム」が出来上がる。マナを錬成して…この前より少し詳しく「お願い」をした。



皆、お願い。あの中に荒れ狂う津波を起こしてくれるかな?もちろんドームを壊さない出力でね。


( 是 )



マナの友人たちの”翻訳”をしてくれる守護がいなければ、どんなのが出るのか不安で使えないかもしれない大規模魔法。出力調整とかは必要ない。私が守りたいものを的確に認識し、やりたいことを理解し、敵と判断したものには容赦がない。


いま、ドームの中は台風でも来ているかのように暴力的に”荒れ狂う海”があった。海上はしっちゃかめっちゃかに荒れ、海中は炭酸水のように泡立ちながら攪拌され、中に誰かいたならばまともに泳ぐことなど到底不可能な状態。



皆、ありがとう。もう充分だよ、お疲れ様。

魔法がおさまったら、守護もドームを解除してね。


( 是 )



…ふう。これなら大規模魔法って胸張って言えるよね!

ハンナ先生見ててくれたかなー。



「…これ…津波ってレベルじゃ…」


「ハンナ先生、もう諦めましょう。宝玉はこうなんだって思った方が、仕事は進みますよ…」


「そ…そうね、それしかなさそうね…」



あ…もしかしてやりすぎ…?

よくヘルゲ兄さんも「やりすぎた」って言ってるもんなー…

精霊魔法ってイメージとか感覚で出すから、私がしっかりしなきゃいけないんだ。

失敗失敗…次は気を付けようっと。

目標は「適正な強度」!これだね!




「ニコル…なんか明後日の方向に決意固めてないかな…?」


「そんなことないよう。今後はやりすぎないように、適正強度を心がけますよ?」


「…ああ、手加減を覚えないとヘルゲみたいになっちゃうもんね…」


「うん…極力、人様にご迷惑をかけない方向で…」


「いい心掛けだと…思うことにする。うん」



アロイス兄さんと二人で生温い感じの会話をしていると、ユッテたちが来た。



「イヤッホーゥ、ニコル過激じゃーん!あの盾やっぱイイ仕事するねーえ!」


( ユッテ殿はよくわかっておられる )


「ねぇねぇニコル~、なんかタッちゃんがおいしそうに見えなーい?ミルク味の飴みたいだよね、甘くておいしそぉ」


( アルマ殿は何か誤解しておられる。それに我らは守護ガーディアンという名があるのだが…っ )


「なあ、精霊魔法ってミックスとか考えなくても直接的に事象変換するんだろ?どんなことができるかガンガン検証してったほうがよくねーか?」


( …なんと建設的な…オスカー殿は貴重だな。主、我らは感動した )




ユッテとアルマのお気楽発言にいちいち反応し、オスカーのもっともな意見にオーバーな評価をする守護…そろそろ慣れてきたけど、なんでこんなオモシロい子になってるんだろ。


…あれ、皆が混ざってるって言ってたよねぇ?それってオモシロい人に偏ってるってこと…なのかなー…あんまり深く考えないようにしよっかな。



「うーん、でも皆の修練のジャマになるからいいよ。徐々にやってくから」


「ニコル、私はオスカーの意見に賛成だわ。ちょっとアロイスとも話し合って、他の子の邪魔にならないような方策を考えるわね。あなたも加減を知りたいなら、練習量は大切だもの」


「…わかりました。よろしくお願いします、ハンナ先生」


「いいのよ、それが私たちの役目だわ。はい、じゃあ次の子いきましょ!」



度胆を抜かれたらしい他の同期の子は、少しだけ調子を崩しているようだった。ついこの前まで同じ立場だったからわかる、その辛さ…でも、これも仕方ない事だと割り切った。


強者になったからって、傲慢なつもりは…ない。だって、これはそれぞれが”自分で乗り越えるべき”こと。そして、そんなに辛いのはかわいそうだ、と安易に同情することほどの”傲慢”はない…そう、思ってる。


オスカーとのことがあって、たくさんそういうことを考えたからなのかな。

”傲慢で不誠実な行い”とはどういうものなのか、ある程度は自分の中で基準ができてきて…私は”自分の領分”についての考えもハッキリしてきたように思う。冷たくする気もないし、突き放す気もない。ただ…皆がそれぞれの思いを持ちながらも、お互いを尊重できたら嬉しいなあ、と考える。



( 主、それはフィーネ殿の言っておられた”矜持”だな )


…そっか。こういう気持ちも矜持って言うんだ。ふわっとしか理解してなかったかも。ありがとう守護。




こうして緑玉としての私が、始まっていった。





  

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