13 ほんとに秘匿されてますか sideニコル
お昼をもそもそ食べていると、アルマが気の毒そうな顔をして話しかけてくれる。
「ニコルぅ、そんなに落ち込まないでよう。グレーテ先生も気付いてないし、何も問題、ないってば。ね?アロイス兄さんだって、わかってくれるよぉ」
「うん…」
「だいたいさ、ヘルゲ兄が大事な情報ニコルに漏らすから悪いんじゃん。アロ兄は普通に勉強教えてくれるんでしょ?」
「う…なんでヘルゲお兄ちゃんだってわかったの…」
「あんたの顔みたらわかるっつの。あー、もうしょうがないなぁ!つかさー、ニコル。アロ兄に言わなきゃいいことなんじゃないの?バレやしないでしょうに」
「ユッテ…それは無理。自分から話さなきゃ…」
「はぁ!?そういうのバカ正直って言うんだよ?」
「そうじゃないの。アロイスお兄ちゃんに隠し事は、できないの。私が嘘つくとすぐわかっちゃうし、こないだは隠し事してもすぐばれちゃったし。で、ばれるとね…」
ゴクリ、と三人揃って喉が鳴る。
「すっっっごいとろけそーーーな笑顔でね、『ふうん、ニコル…僕に嘘、つくの?』って言うんだけども、目が…目がああぁぁぁぁ」
ちょっとパニックになった私を、アルマがどう、どう、と宥めてくれる。
「…うう、とにかくその後、理詰めで私の嘘がどうしてばれたのかみっちり解説したあげく、今度くだらない嘘ついたら、私のぬいぐるみコレクションのどれかに操身の方陣仕掛けて、男湯に突撃させちゃうけどいい?って言うんだもん!!」
「うぐ…さすがアロ兄…えげつな…つか、なんってバカバカしくて効果的なの…」
ユッテ…感心するとこと違うから…
「とにかく…行ってくるね…」
そう二人に告げて、私は森へ走った。
途中で何度もトボトボ歩きになっちゃったけど。
*****
「なるほどねぇ」
「う…ごめんなさぃ…気をつけます…」
ただいま、アロイスお兄ちゃんに絶賛白状中の、ニコルです。
穴掘って埋まりたいです。
「まあ、グレーテ先生にもばれてないし。ほんとに情報公開がギリギリ間に合ってて、よかったねぇ」
はふ、と息を吐いて私の頭をぽんぽんと軽くたたくアロイスお兄ちゃん。
う…優しい…ちゃんと自分から白状してよかった…!
でもまだだ!まだ、ヘルゲお兄ちゃんが来てない…
「お。ヘルゲ!こっちだよ」
のそのそと歩いてくるヘルゲお兄ちゃんは、なんだか今日は不機嫌な感じがする…
怒られちゃうかもしれない、私。
いくらなんでも秘匿情報漏らす寸前だったんだもの。
いや、漏えいしたけどギリギリセーフだっただけか…
うう、ニコル、勇気を出すんだ!
…結論から言うと、私は怒られなかった。なんで??
「問題ない。ほんとにやばい秘匿情報には、公開キーがこなければ表層記憶に浮き上がらないよう、ロックしてから渡している。今回のも公開されてから思いついたんだろう?だから大丈夫だ、安心しろ。俺がニコルをそんな危ない目に遭わせるわけ、ないだろう」
といって、いつもみたく薄く微笑むと、頭を撫でてくれた。えへへ。
ふーん…そんなことできるんだ…どうやるんだろ?
それに、そういえば公開前の情報、ヘルゲお兄ちゃんふつうに持ってくるんだよね…
「…ニコル、いつも言ってるよね。こんな魔法の変態が普通だとは、思っちゃいけないよ。わかった?普通は、できないからね?」
アロイスお兄ちゃんは片方のほっぺたをヒクヒクさせながら言った。
それにしても、ほんとにヘルゲお兄ちゃんはいっぱい話してくれるようになった。
といっても、この森限定だけど。
ヘルゲお兄ちゃんは事情があって、みんなの前であまりいっぱいしゃべることができないのだそうだ。
でも、私とアロイスお兄ちゃんとはたくさん話をしたいって言って、この森で会うときだけ防諜の方陣を展開してしゃべってくれる。
それに、表情もね、たくさんわかるようになったんだ。
長い前髪は相変わらずだけど、うっすら笑うようになったし、うっすら口がへの字になるし。
一番わかりやすいのは、しょげたときに眉毛がはっきりハの字になるとこかな。
最初にヘルゲお兄ちゃんがうすーく笑ったのを見たときは、ほんとにうれしかった。
というか、一番反応したのはアロイスお兄ちゃんだったけど。
「笑った…まじか!」
って言いながら、顔を真っ赤にさせて、「うおお、野生の狼を手なずけた気分…!」ってプルプルと悶絶してたっけ。
その後ヘルゲお兄ちゃんに背中蹴られてたけど。
ふう、でもほんとに怒られなくてよかったぁ。
おじいちゃん、今日ね、こんなことがあったよ。
お兄ちゃんたちね、ほんとに優しいんだぁ。
うん、大丈夫。
修練だってがんばってるよ。
おじいちゃんに会えるの、楽しみにしてる。