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128 邂逅 sideヘルゲ





ニコルをからかい倒した翌日、ブランチを食べながら機嫌のいいニコルを眺める。…白斑はない。盾も出していない。澄み切って、どの角度から見ても絶え間なく光を乱反射する、磨かれた「本物の宝玉」。


白斑はどこにあるんだろう。視認できない状態でも、ニコルを守っているのは間違いないということか。



「…ヘルゲ兄さん…そんなに見られると…非常に食べにくいと言いますか…何か顔についてる?」


「…宝玉がついてるな」


「…ソウデスカ…とりあえず、あんまり凝視しないでいただけるとありがたいんですけど…挙動不審になるもので…」


「気にするな」



よほど見られるのが嫌なのか?だが怒って顔を赤くしながらもモグモグと食べるのをやめないニコルは、ムクれてるんだか咀嚼してるんだかよくわからない。



「くっくっく…ヘルゲ、もう勘弁してあげなよー。ほんとにそんなに見てたら気になって、消化に悪いと思うよ」


「む…そうか。健康に悪いなら仕方ない」



渋々と視線を外しながら、ニコルに尋ねる。



「ニコル、瞳に白斑がないが。盾はどうしたんだ?」


「あ、それで見てたんだ…あっそ…えっとね、見えないけど皆ちゃんといるよ。私の周りに出てる時も、やろうと思えば不可視にできるし」


「皆?複数なのか」


「複数…でもあるし単体でもある。深淵の意志の集合体が統一されて動いているから」


「…もしかして、じいさんも統合されたか」


「うん、元おじいちゃんって感じかな」


「じゃあ、俺はじいさんと同じように盾と話せるか?」



ニコルはちょっと間を置いて答えた。



「…できるって。必要なら紅のところへ直接行くって言ってる。行かせてもいい?」



俺もアロイスも目を丸くしてニコルを見つめた。…なんだろう、この徹底した安定感は…海に溺れていたニコルとは思えない。本当に、大地に根を下ろしたかのような…ニコル自身が大木…いや、なのではないかと思うような。



「…ああ、頼む」



椅子に座ったままダイブすると、昨日見たオパールの盾がいた。



( 久方振りだ、昏い火 )


「…おう、じいさんか」


( 是 否 )


「じいさんでもあるが、今は違うのか。何と呼べばいい」


( 主は”守護ガーディアン”と )


「…なるほどな。守護、俺も一応調べたが、マザーにニコルが先祖返りと知られてはいないようなんだが。お前らが守ったのか?」


( 是 敵対者からのスキャンを察知、防衛反応により偽装した )


「いい判断だ、今後もそれで頼む。それと、昨日の養育室の圧壊は…マナの収束を感じなかった。守護の力は魔法ではないのか」


( 我らは深淵の意志。意志を持ったマナそのものと言える。従って収束のような余計な過程は不要。我らは主を守り、主の望みに沿うのみ )


「ニコルはマナを直に操るのか?」


( 我らは主を守る深淵の意志、マナそのもの。主が使う”魔法”はマナを友として錬成し、協力を願う主の意志。有り様は少々違っているが、大筋はその理解で合っている )


「…それは…精霊魔法か」


( 是 )


「伝説級だろう、それは」


( …遥か昔には大勢いた。マナを友とし、マナを奏でる”自然の体現者”。今はその人々の星も深淵に還ったが、主が生まれた )


「…そうか。ニコルは今後、精霊魔法使いとして公に認知されざるを得ないだろうな…軍でどういう使い方をされるか予測ができん。すまんが力を貸してくれるか」


( 是 昏い火と輝る水は主と同等の守護対象であり、同時に主を共に守る守護者ガーディアンでもある。今後も我らが紅い世界へ出向いて情報の共有化を図ることが可能 )


「それは助かる。アロイスの方はどうだ」


( 是 輝る水へも説明に赴く )


「頼む。…心強い味方がいたもんだな」


( …昏い火よ、我らの守護が間に合わなかったことを遺憾に思う。主がなおすことができた時には…今度こそ深淵の意志が昏い火を守るだろう )


「…なおす? …俺はもう真の望みと同化している。俺は充分だ、ニコルを守ってやってくれ」


( …是 )


「じゃあな」



俺はダイブアウトすると、ゆっくりと瞼を開いた。

すると目の前にニコルの顔があり、ビクッとする。



「あー!ダイブアウトしたよアロイス兄さーん!」


「ようやくか。話し込んでたねぇヘルゲ。ごはん冷めちゃったよ、あっため直したから食べちゃって」


「ああ。守護が…白斑の盾が、アロイスにも説明に行くと言っていたぞ。片付けはやっておくから、ダイブした方がいい」


「…!? 片づけを?ヘルゲがやってくれるの? …ニコル、お願いだから監督頼む…僕の聖域を守ってくれ…」


「…心配するな、まかせておけ。金属類は軒並み炎獄で溶解させてやるからな…」


「もー!ほら、アロイス兄さんは危なくないようにソファでダイブしてね!微動だにせず椅子で意識放り出すなんて、ヘルゲ兄さんの変態技なんだから!ヘルゲ兄さんも何も壊さないし溶かさない!というか片付かないから早くごはん食べてください!」


「「はい…」」



なんだか新しいニコルは怖い…





  

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