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Three Gem - 結晶の景色 -  作者: 赤月はる
三つの結晶
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12 女の子の日常 sideニコル

ニコル10歳、兄二人17歳





私たちは来年、中等1年生になる。


そうすると、基礎修練も応用修練も今より難しくなるらしい、全部変わっちゃうって、アルマが今から不安そうにしてる。



「大丈夫だよ、アルマは水魔法もすごくうまく制御するし、瞳の練度も高いじゃん」


「そういうことじゃないよう、ユッテは不安にならないの?先生もナニーも、担当が変わるんだよぉ?宿舎だって…部屋割でニコルやユッテと離れたら、私、白霧が増える自信、ある…」


「えー…白霧増えるってあんた、どこまで不安がってんの…そのうじうじした性格で、よく基礎修練の成績いいよね。つか、今までその性格で大丈夫だったんだもん、白霧増えるとかいまさらないって。ハイハイ、この話は終わり!」


「ユッテひどいぃ~!」



さっぱりした気性のユッテにばっさり斬って捨てられ、目じりに涙をためながらアルマがふくれてる。



「ねえ、ニコルは?ニコルだって離れたら寂しいよね?」


「んー、でも部屋が違うだけで同じ宿舎だしねー。それに私、中等の宿舎って森が近いからうれしいんだぁ。ああ、早く来年にならないかな…もうゴハン食べた後に全力疾走しなくて済む…いつも脇腹痛いの、いやだもん」


「「あぁ…そう…」」



ん?アルマもユッテも、目の焦点あってないよ?



「ニコルはこう・・だし、初等のままでいられるわけないんだし、もう不安がるのはやめな、アルマ。ね?」



ユッテがアルマの頭をよしよしと撫でる。


なんだかんだで、面倒見いいんだから、ユッテ。あー、いい光景だな。

栗色の子リスを愛でる、金茶のお母さん狐みたい…癒されるぅ…にへへ。



「…ニコル、あんたが今思ったこと、口に出してみな?」


「え?『栗色の子リスを愛でる金茶のお母さん狐みたい、癒されるぅ』」



ぱぁん、とノートで頭をはたかれた。



「いたいよユッテぇ…」


「その!変な妄想ふくらまして!人をオカズにニヤけるのを!やめろ!!それにキツネとリスじゃ、捕食関係でしょうが!!」


「そんな変態っぽい言い方しなくてもいいじゃないよー、微笑ましいなぁって、そんな感じの温かい目だったと思うデスよ?」



ユッテの剣幕にちょっとビクビクしちゃって、口調がおかしくなっちゃうよ。


それにオカズとか…ユッテは年上のお兄ちゃんたちや同期の男の子連中ととても仲が良くて、なんというか、たまに下ネタみたいな言い回しが入る。


下ネタってわかる自分もはずかしい…ユッテのせいだ…


この気性だからか、男の子と一緒にしゃべっているユッテは本当に違和感なく溶け込んでて、逆に心配になるくらい。


ユッテ、本当に男の子になったりしないよね?ね?


なんだか私までアルマの性格がうつりそう。




グレーテ先生の授業が始まって、私たちは席についた。

今日は現代社会の授業で、マザーが収集した時事問題の映像がフォグ・ディスプレイに映し出される。



「…なので、最近の『緑青ろくしょう』の一族では、中級の水魔法と風魔法の混成魔法ミックスについて研究されています。このミックスに関しての問題点は何かわかる人?」



はーい!と数人が手を上げる。



「はい、ではオスカー、どうぞ」


「二人でやるから、タイミングも出力も、合わないと思う」


「はい、そうですね、その通り。だからきっと、研究者はその問題にもう気付いたと思わないかしら?皆なら、どうやって解決しようと考えますか?」



うーん、と考え、みんなそれぞれ近くにいる子と相談を始める。


グレーテ先生はディスカッションをそのままにし、静かに様子を見てる。

アルマやユッテも相談していて、私はそれを聞きながらぼんやり考えていた。



(…ヘルゲお兄ちゃんだったらきっと、一人でサクッとミックスやりそう…あ、だめだ。今は授業中、授業中!「こんな魔法の変態を参考にしちゃダメ」ってアロイスお兄ちゃんも言ってたじゃない。集中しなきゃ)



「はい、みんな意見はまとまったかしら?」



グレーテ先生は教室を見渡すと、みんなの意見を順番に聞き始めた。

しまった…ユッテたちとすり合わせてないや。



「はい、じゃあ、ニコル?」



私の順番が来ちゃった…うーん…現実的に考えたら、どんな方法があるかな…



「…緑青には今、『リンク(接続)』のユニークがいると聞きます。リンクが出力調整とタイミング合わせを担当できるなら、風魔法担当と水魔法担当は座標設定とマナの錬成に集中できると思うんですけど…」



う…グレーテ先生が何も言ってくれない…ありえないアホ回答だったのかな…

隣でユッテとアルマが「やっちまったこいつ…」みたいな顔してるう…



「…ごほっ…ニコル、リンクの情報は、どこから…?」



あ!

しまったぁ…これヘルゲお兄ちゃん情報だったっけか…


え、え、どうしよう。秘匿ランクいくつの情報だって言ってたっけコレ?

うひゃー、リンクじゃなくてマザーって言えばよかったぁ~!



「あ…あの…マ、マザーの図書館に…」



ううー、ごまかせるかなぁ…

ふむ、とグレーテ先生は一つ頷く。



「素晴らしいわ、ニコル。『リンク』は3か月前に顕現してね、最近になってようやく制御可能になったらしいの。この情報がマザーの図書館に公開されたのも、つい昨日の午後のことなのよ。きちんと情報収集をしているのね、偉いわ」



ぐは!!

ごめんなさいグレーテ先生…嘘ついてごめんなさいぃ…

いたたまれないよ~…


ユッテがすっごい氷みたいな目で見てるよぉ~

やめてほんとに、反省してるから!


ユッテの薄い水色の瞳ってアロイスお兄ちゃんに似てるのよ!

ああぁ、きっと怒られる…



結局、緑青の実験はマザーに制御させる、が正解だったみたい。


リンクのユニークはまだ力が安定してなくて危険なのと、いつでもリンクが健在とは限らないから。



ひととおりみんなの意見を聞いてから、午前の授業は終わった。

ああ…お昼食べたらアロイスお兄ちゃんにも、ヘルゲお兄ちゃんにも謝らなきゃ…






  

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