表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Three Gem - 結晶の景色 -  作者: 赤月はる
明の年、暗の年
109/443

109 人生経験の権化 sideヘルゲ







俺が中央に戻り、バジナ大隊長とホデク隊長に簡易養育室を与えられた日の夜だ。ヴァイスに戻ると、俺を見咎めたデニスがツカツカと向かってきた。



「…おい、バルタザール大佐の執務室に着任の報告に行け。呼んでたぞ」


「そうか」


「コンラートはどうした」


「知らん」


「…チッ、変わってねーじゃんか…」



デニスを無視してそのまま大佐の執務室へ向かった。

ノックをすると、エレオノーラ中佐の声で「お入り」と返事があった。



「デア ナーメ イスト ヘルゲ・白縹。ゾルダード フォン ゼプツェーン フンデァート ドライ。コード0268499。本日よりヴァイスに着任致します。長期に渡り、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」



形式通りの着任挨拶をして、さすがに迷惑を掛けたので謝罪しておく。

…どうせ、見透かされているとは思うが。



「ふん…ヴァイスで堅苦しいのはナシだっつったろうが。どうせ謝罪なんぞ口だけだろう、おめぇ」


「…」


「で?目的は果たせそうか」


「俺に未来視の能力はない」


「…へっ、言いやがる。じゃあ言い方を変えよう。計画は順調か」


「ああ」


「おめぇ、誰を守ってんだ」


「…」


「ニコルって娘か」


「これから生まれる者も含む」


「デカく出たな。そりゃあ”白縹”と同義だぜ?」


「なら、そうなんだろう」


「おめぇ、マザーに何された」


「それが分かれば苦労しない」


「…やれやれ、それじゃ埒があかないよバルト。ヘルゲ、アンタは私らに計画を話す気はないのかい」


「俺にはヴァイスを巻き込んで平気でいられるような器も、勇気もない」


「私らに話した方が、リスクコントロールができると言ってもかい」


「誰も知らないうちに、いつのまにか変わっている。表面上は、何も起こっていないことになる。俺はヴァイスが動く必要がない以上、ヴァイスに余計なリスクが増えるだけだと考えているが…フィーネもコンラートもアロイスも話すべきか悩んでいる。時間が必要だ」


「そんなに、怖いかい」


「ああ」


「私らを巻き込んだ方が、アンタらの恐怖は薄れるのにねぇ。それをしないのも、恐怖かい?それとも矜持かい?」


「…俺は矜持などとは無縁だな」


「…そうかい、わかった。私らは予測で動くだろう。致命的にジャマならば”必要”なことなんだからお言い。いいね?」


「ああ」


「下がっていいよ」



俺は一礼して執務室を出た。


…まったく、ほぼ知られていると見ていい有様だな…


俺の浅知恵など、お見通しか。

知略の権化エレオノーラ・白縹…

人生経験の権化、と言った方がしっくりくるな。



あの執務室に、”完全に消えた”コンラートも”方陣で隠れた”フィーネも同席させられていた。中佐に呼ばれて隠れているように言われたんだろう、まったくいい趣味をした婆さんだ。



まあいい。

敵でないことを喜ぶしかないだろう。





  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ