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異世界神話奇譚  作者: 玉梓
石器の王国
18/21

10 それはオレのお稲荷さんだ!

ホントにこんなの書いてていいのか^^;

 蛍の舞う黄昏時。


 裸の肉がぶつかりパンパンと小気味良い音が響いていた。


 周囲には飛び散る汗とすえた体臭が漂い、


「うおおおおお!」


 獣の咆哮をあげる男の体が強張り、素足が高々と伸びてビクビクと震える。


「ぁあああ!」


 もつれ合う二人の体が固まったまま地面に崩れた。


 荒い息と息を呑む音だけがあるそこに




 高々と軍配が上がる。


「東~蹴速(けはや)山~」


「しゃああああ!」


 うん。至って普通の相撲です。本当にありがとうございました。


「すいません。負けました」

「あ、はい。ご苦労様でした」


 それにしてもなんて体力してるんだろう。

 連れてきた十人、全員負けてしまうとは。

 ここまでくると素直にすごいと思えてしまうな。負けても爽やか。

 ちょっと羨ましいな。


「いや~! 今のは危なかったが良い勝負だった!」


「流石は父上!」


 この門番はおっちゃんとこの子供らしい。

 父上父上ってべったりだなぁ。

 いつかはこの子も筋肉達磨になるのか。


「おうよ! っと……最後の一番と行きたいが、流石に腹が減ったな。よぉし! 飯にしようぜ!」


 おっちゃん同様、豪快な腹の虫が鳴り響いて相撲大会はお開きになったようだ。


「今日は宴だ宴! 蔵を開けろーい!」


 宴会とな。ではうちからも提供しよう。


「あ、うちから持ってきた肉も使ってください」


「お肉!?」


「肉か! そいつはいい! 今日は無礼講だー!」


「父上は何時だって無礼講じゃないですかー」


 む……糞真面目な美形なだけかと思ったら肉を見て喜ぶとは。なんだ。


「笑った顔もできるんじゃないか」


 意外と可愛いし。


「なっなにか言ったか!?」


「い~え。何も」


 それにしても、この世界に来てこういう所はホントにいいなと思う。

 時計は無くても太陽は出ているし、腹の虫とあわせて一日を過ごす。

 起きてゴハン食べて出勤して。

 時間が来るまで働き続けて。

 なけなしの給料はビールとタバコに消えてしまう毎日よりは、よっぽど充実してると思う。

 素晴らしき哉。晴耕雨読。有言実行。横断歩道。


 そして燃え上がる組み木を囲んでの盛大な焚火。むしろキャンプファイヤーか。

 肉が中心になったが、久しぶりの白米は本当に美味しかった。


 此処にはもう一つ、美しい物があった。


 最後に出された『特別料理』


「これは――!」


 金色の俵のような包み飯。噛めばジュワリとにじみ出る甘い煮汁。

 逆に中は甘みを抑えたさっぱりとした酢飯。しかも硬すぎず柔らかすぎず、絶妙な固め具合!


 これは間違いなくお稲荷さん!


 米だけじゃなく大豆もあるだと!?

 しかも発酵技術があるということは味噌もあるのか!?


「神や……間違いなく神が此処に居るでええ!」


「お兄ちゃん大丈夫?」


 いかん。あまりの懐かしさに涙が……。

 皆が何事かと見てるがしかし、懐かしの和食なのだ。感激しても罰は当たらない!


『ふむ。ばれてしもうたかの?』


「え?」


「え?」


 蛍だと思ってた黄色い光が一個、人間大に大きくなると、そこには本当に神がいた。


「いや、ばれてなかったんじゃないか?」


「え?」


「え?」


 垂髪の黒髪和服美人!ウズメ様と違ってしっかりでっかい大人の女性に……狐耳と尻尾だと!?

 ファンタジックな和服を押し上げるほどの存在感。これが八百万(やおよろず)神の実力か!


『いやいや。この者達も信仰の匂いがするし、いずれ気付かれてしまうなら、のぅ?』


 あ、そういえばウズメ様も大神殿派の匂いとか言ってたな……やっぱり神様同士はそういうのが判るのか。

 となればやはりここは真面目に交渉しないといけないのか。


「改めまして。天宇受売命(アメノウズメ)神、アルテミス神を祀る隣国の国王タカトと申します」


宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)を奉る秋津国の蹴速だ。まっ堅っ苦しいのは無しにしようや」


「国を大きくする為に神々の力をお借りしたい――」 


 神様を前に嘘吐いちゃいけないよな。

 これは俺の本心。国を大きく強く。その為にはまず地盤が必要だ。



「……はふぅ」


 湯船に浸かれる日が再びこようとは……!

 なんというか、大きな五右衛門風呂といったら判りやすい。十人位は入れるかもしれない。

 しかしそんなことよりも、日本人の魂には風呂は必要不可欠だ。

 ちなみにシズクちゃんは疲れて寝てしまっている。

 まぁうちの国で風呂に入りたくても、水を引いてこないといけないし、大変なんだよなぁ……。


 あ、そういえば国の名前……決めてないな。

 秋津……和風だ。

 響きも良い。先を越されたようで少し悔しいな。

 此処は一つ、負けないような名前をつけなければ……タカト国。ないな。

 タイフォン。英語はちょっとな

 タ……タイランド。違うなもっとこう、和風の。

 ……古風で和風…葦原中津国!

 近い! 近いけど秋津と中津は発音的意味で近すぎる!

 そうだ高天原(たかまがはら)


「これだ!」


「わっ!?」


 勢いよく立ち上がったらすぐ後ろで声がした。

 なんだ。蹴速のおっちゃんとこの門番じゃないか。

 尻餅なんてついちゃって。


「うわ……顔だけじゃなくて体まで線が細いなぁ。全然焼けてないし、肌真っ白じゃないか。そのくせピンクの突起とか女の子か……」


 ん?


「き……っ」


 きのせいか胸膨らんで……る?


「へ?」


「きゃあああああああ!」


 『バシーーーーン!』


 強烈な平手打ちを食らって湯船に浮かぶ俺。


 なんて凶暴な普乳だ……。


 いつか絶対泣かす……。


---------------------------


国名:『秋津』


国王:蹴速(けはや)(44)

王妃:――

王子:多々良(たたら)(24)

王女:五郎八(いろは)(16)


人口:79人

兵士:33人


宗教

主神☆宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)

広域:×疫病祓い・×雷雨招来・○五穀豊穣

個人:Lv3呪殺・Lv2呪詛返し・Lv1空腹耐性


標準武器:青銅(輸入)

標準防具:麻の服

標準住居:丸太小屋

農耕技術:水田。水車小屋


総合評価:農耕民族


【国王】蹴速 44歳/男/国王/寡夫

守護神:宇迦之御魂神Lv2

才能:【尚武】

性格:【精力的】【公明正大】【勇敢】【不屈】【脳筋】【高身長】【筋肉質】

総合能力:豪快な武人


---------------------------






 ………………


 …………


 ……


 幸運(ラッキー)とは、何を持って言うべきか


 障害とは、乗り越える事によって自身をより強い物へと変えるモノだ


 不幸もまた、障害となる意味では、不要なモノとは言えぬらしい


 乗り越えるべき障害を、不幸を、たまたま降って湧いた幸運が吹き飛ばす


 これでは成長を失ってしまう。そうだろう?


 ただ連綿と続く変化の無い毎日が楽しいだろうか?


 時に刺激がなければ人生はあまりにもつまらない


 だが、その為に後の人生が狂わされる様な事はあってはならない


 花火のように大きく感動を与え、そしてすぐに消える


 それこそが本来あるべき


 幸運(ラッキー)の姿だと、私は思う。


 そう。今日の彼のように


 一瞬の感動と


 一瞬の衝撃を。


 男の無理強いは、いかんよなぁ?


 紳士諸君?

ちなみに作者はタバコも酒もやりませんよ。

相撲は神事です。ヤラシイ目で見てはいけません。


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