7 役割分担
ぇーと。
整理してみよう。
・元々文明はメッチャ進んでた。
↓
・結果世界大戦争。
↓
・世界は滅びかけたらしい。
↓
・それを神様が救った。
↓
・人が少なくなって神様への信仰が薄くなってせいで、神様激弱り(イマココ)
う~~ん……。
シズル姉さんも村の人もあまり詳しく知らないみたいだ。
結局のところココは石器時代じゃないし。
神様が普通に出てくる。
神さまは地球の神様に似てる。
神様は人に崇められて元の力を取り戻したい。
これ位しか判らないんだなぁ。
それにしても地球の未来みたいな話だな。
でも半分自業自得っぽいよなぁ……人が居なくなったら困るとはいえ、もう少しやりようがあったんだじゃないのか?
「でも何で助けてくれたはずなのに、皆はあまり神様に感謝とか捧げ物とかしなくなったの?」
「それは……神々の一部に救済に反対派が居たように、人にもこの救済に否定的な人達がいたそうです」
あぁ、文明の利器が無くなって『生きるのに必死になる位なら、死なせて欲しかった』的な話か。
確かに、猛獣のいる無人島にナイフもライターもなしで放り出されるようなものだしなぁ。
「特に、救済された世代の人達はその傾向が強かったらしく、ここの王も代々その傾向があったそうで……神頼みはさせないようにしていたそうです。権力者として欲求を満たすことで発散していたんだと思います」
「人類至上主義……いや選民思想みたいなものかぁ」
シズル姉さん……あんな豚に子供まで産まされたのによく話してくれるなぁ……。
確かに聞いたのは俺だけど……まさか王が関わってたとは。
あ、待てよ。
じゃぁこの際国策として神様に皆でお供えとかしたら……もっと繁栄するんじゃないか?
アルテミス様に森を豊かにしてもらって、男が加護もらって狩りをして。
で、ウズメ様に村の守り神として守ってもらおう。
「タカト様?」
あ、考え込んでたら心配させちゃったか。
うあ、顔近いですよ。シズルさんって顔が綺麗なんだから。
流石に目をつけられるだけあるっていうか。
まぁ胸はミューが一番だけど!
でもそのせいで妹のシズクちゃんと離れ離れになっちゃったわけで。
シズクちゃんがいきなり『お嫁さんにして』なんて言うから驚いたけど、こういう事だったとは。
「うん。辛いことまで話してくれてありがとう。おかげでこれからの事も決められそうだよ」
「いえ、そんな……その」
お礼を言うとシズルさんは真っ赤になってしまった。
やばい。綺麗な人が照れるとめちゃくちゃ可愛くなるな!
「シズクが大人になるまでで構いませんので、またお願いします」
「あ、はい。こちらこそ」
三つ指突いてお辞儀するここは寝室だったりする。
だって、うちでこういう話が出来そうな、年上で詳しそうな人ってシズルさんだけだし、
『子供まで産んでしまって、どんな顔して村に戻ったら良いのか判らないので忘れさせて下さい』
って言うんだもん。
うん。
子供のカガリ君はシズルさん似だし、俺の子供として育てます。
ミューも賛成してくれたし。
責任とるついでに、責任とらないといけない事までイタシテしまいました。
さぁコレで後には退けないぞ! 退かないけどね!
さて。
朝一番で村の広場に皆を集めて神様を呼ぶ事にした。
「――というわけで、実は俺が狩りが上手かったのはアルテミス様のおかげだったのです。狩りに行く男性には同じく神様の力を借りて、皆の生活を楽に出来るようになって貰いたい」
おお!と神々しく後光の差す二人の女神を前に皆がひれ伏している。
なんか気分がいいぞ。
えらくなった気分だ。
あ、俺王様か。
「で、こちらのウズメ様は村が襲われないようにしてくれるということなので、村の外に行く人はアルテミス様、中の人はウズメ様にお願いをしつつ、一日の成果の一部を分けて感謝をしましょう」
「でも村の中にいて何か捧げられるようなもの作れるかねぇ……」
「違うよぉ。私はね?『今日も一日ありがとう』って言ってくれるだけでぇ、『明日も頑張ろう!』ってなるから、それだけで良いんだよぉ? 私はね」
両手合わせて微笑んでるウズメ様。
うわ~~可愛いな~。
でも『私はね』、ってアルテミス様にチラ見しながら言わないで下さい。
「っんん。捧げ物は当然頂きますよ。でもそれは森を『豊か』にする為のもの。巡り巡って皆さんにお返ししますので、損にはなりませんよ」
や~め~て~……アルテミス様はアルテミス様で『豊か』とか強調するし……。
「……大食らい」
(ピクッ)
胃が痛~い!
コレはどっちに祈ればいいの!?
助けてミュー!
「あと、お二人のために祭壇を作って祀りたいと思います」
お地蔵さんも剥き出しで置きっ放しじゃぁ駄目だろう。
あ、アルテミス様は何を祀ったらいいんだろうか……。
ギリシャ神話だと弓が有名だけど……弓に使える紐がまだ作れないんだよな……。
模造弓でもいいか今度聞こうっと。
あとは色んな神様が見つかればそれだけ楽になりそうだけど……。
お客様の中に二人の仕事を取らないような、職人さんみたいな人いませんかー!?
………………
…………
……
かくして、かの王国は発展への足掛かりを得た。
二人の神は一部協力してかの国に富を齎すだろう。
だがしかし。
神々は彼女らだけだろうか?
そして国はアレだけだろうか?
ただ人が増え、技術が生まれ、大きく発展すればそれで終わりだろうか?
それでは面白くない。
人とは、奪う者。
奪い、蹂躙し、従え、
そして創り、耐え、裏切る者。
発展とはそういうものなのだろう?
さぁ。
私を愉しませておくれ?