6 神様ウズメ様!
女性の痴話喧嘩って面白いですよね。
ちなみに、セリフに悪意は一切ありません。
狩りから戻ってきたら、家を掘っていた一家に呼び止められた。
変なものが出てきたらしい。
俺が今住んでるのは崖の途中にあるログハウスで、王宮って言うほど立派じゃないけど。
ちょっとは威厳が出せる。
なにせ皆はテントみたいな竪穴式住居だし。
だから雨が降ると毎度大変。そこで崖に横穴を掘って家を作らせてるんだ。
少し時代に逆行してるかもしれないけど、木を倒すのも材木作るの大変なんだよ。
で。
「こんなん出ましたけど」
なんだ? 石像? お地蔵さんか?
「手毬を持った子供みたいだな」
坊主でもないし。袈裟も着てないけど……こういうのもあったか?
いやいや。
なんで?
おかしいでしょうよ。
なんでお地蔵さんがいるんだ?
それも山の中に埋まってたってどういうことだよ?
ここ石器時代だよね?
あれか?
オーパーツ的な何かとか??
駄目だ。わからん。
とりあえず家に運ばせておこう。
お地蔵さんは確か守り神だったはずだし。
「タカト?それはなに??」
「ただいま。ミュー。子供の守り神みたいなものだよ」
たぶん。間違ってないはず。
「へぇ! じゃぁ何かお供えしないと」
あっさり信じたなぁ。これも二人の絆ゆえか!
まぁミューは身重だもんな。
一年も頑張ったしそりゃあ出来るよね。
――パンパン
「良い子が生まれますように」
「いいですよぉ」
「へ?」
目を開けたら、光の中に童女が居た。
どこから……ってまさか。
女神様みたいな?
あ。いかん。ミューには刺激が強いかもしれん。
「ミュー、ちょっとだけ離れてるんだ」
おかっぱの座敷童?
鮮やかな振袖みたいな和服と手毬が綺麗だな~。
ってか髪サラッサラ! 何その光沢!
あ、ちょっとシズクに似てる気がする。
ってことはやっぱり森の女神様みたいなカンジなのかな?
「もしかして……女神様?」
「え?」
「いや。え? じゃなくて神様ですか!?」
「と、とんでもない!」
「え? 違うの?」
「わたし神様ですよぉ?」
おいっ!
なんでそんなの知ってるんだよ!
「えへへ~一度やってみたかったんですよぉ」
かわいい……けど頭痛え……ホントに何なんだこの世界。
ん?何でそんな匂い嗅ぐの?
しがみ付かれるとくすぐったいです。わはははは。
「……大神殿派の匂いがする」
大神殿?なんだそりゃ。
なんで悲しい顔してるの?
「ねえねえ私に乗り換えない? 家内安全子孫繁栄安産祈願! 旅に出るなら道中安全!」
っていうか近いです。可愛い子だから嬉しいけどミューの目がそろそろ怖い事に!
女豹のポーズで近付かないで!
「何シテも……イイよ? お兄さんの為ならウズメ頑張っちゃう」
小首傾げないで!
神様に手を出したらどんな目に会うか判らないじゃないですか!
「あざとい! あざといのよあんた達は!」
あ、森の女神様……助かった……。
ものすごい怒ってる。けど片手で持ち上げるなんて力あるなぁ。
「出たわね大神殿の。あんた達こそ恥ずかしくないの?そんなスケスケ着て。やらし~」
知り合いですか座敷わらしさん。
でもそんな挑発するようなことやめてください。
「恥ずかしい訳無いでしょ。もっとも?そんな貧相な体じゃぁ見せられても困るよね~?」
いや、こっちに振らないで下さい!
どっちも地雷じゃないですか!
見たいけど!
「発展途上なんですぅ! いくらでもお・お・き・く・で・き・ま・す・ぅ! 省エネなの! 信仰バカ食いしないと維持できない大食らいとは違うのぉ! あとはバナナみたいに垂れるだけのクセに」
「言ったわねこのチビ黒頭! 何が八百万よ! 一匹見つけたら一万匹の黒いのと一緒のクセに!」
「なんだと大神殿の種馬痴女ぉ! あんた達が馬鹿みたいに英雄なんか作るからとばっちり受けたんじゃない!」
大神殿……森と狩人の女神……大神殿……ギリシャ神話のパルテノン神殿?
え?
じゃあ何か?
ここ石器時代じゃないの?
え?
どういうこと??
……………………
…………
……
実に人間臭い神もいたものだ……。
まぁ、パイの数が決まっていれば、より多くを取った方が命を繋げられるのは当然。
そう思えば彼女達の気持ちもわからんでもないな?
しかしそもそも。ああも人の数を減らしたのは神々だろうに……。
そういえば神々が文明だけをリセットし、なぜ記憶を残したのか?
なのだが。
つまりは自分達への信仰を忘れられては都合が悪かった。というわけだ。
まったくもって、人間顔負けではないか?
これでは人間ばかりを、『究極の生きたがり』とはいえんな?
パイの取り合いがどうなるか?
気が向いたら見にきたまえ?
タカト君は本気で石器時代だと思っていたようです。