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龍王様の半身  作者: 紫月 咲
2章 半身と番【つがい】
8/80

神と龍王 1




真っ直ぐに睨み合う2人。

剣呑な視線の交わし合いに、思わずこくりと息を飲み込む。





「何故なつなだけが、別世界に生まれた。」

“こればかりは、誤りとしか言えない。キミ達の生誕は、神界でも限られた要人しか関われない。赦されざる誤りだと、自覚はしているんだよ”

「そんな一言では片付けられたくない。それがどれだけの影響を与えたと思っている?」

“それも、なつながこの世界に現れたことで解消した筈だ。『彼ら』が求めるのは、なつななのだから”


その言葉に、彼の眼差しに更に強い感情が宿る。

それがどうしてなのかも、2人の会話の内容も意味も分からなくて、私は黙って見守ることしか出来ない。





“『神界』で、『大神様』がずっと手をこまねいていたと思っているのかい?彼の方は御自ら出来ることを全て為し、なつなを探していた。『愛し子』のためだけに…世界は二の次だった”

「ならば何故誤った!?世界よりも『愛し子』と、そういうならば何故!」

“それは龍王、キミに話すにはまだ早い。今キミに話す必要性も感じない”

「…っ!!」


彼にだけはどこかそっけない態度でそう話を終わらせた神様は、ふとその瞳を宙へと向けて、またその瞳を彼に向けた。




“ふむ。先程の話に戻れば…解消どころの話では済まないかな。『今日』だけは、なんとか僕が抑える。だが明日からは、それも出来なくなる。『彼ら』はすぐに動き出すだろう。なつなを求めて”

「……」

“僕が説明しても構わないよ。その件だけは、なつなには説明していないから”

「……いや、僕が話す。」

“そうかい?なら、僕は明日の朝まで席を外そう。キミ達にとって、待ちに待った出会いの夜だしね。——さて、外の様子でも観察してこようかな”


そう言ってしっぽを揺らし、私に一度視線を向けてから、ひらりとベッドから降り立つと、銀色の猫の姿の神様は、そのまま開いていた窓からひらりと出ていってしまう。






唐突に訪れた、2人きりの状況。

2人の話の意味も分からないまま、そっと彼に視線を向ければ、どこか不安そうな瞳があった。

そんな彼の名を呼ぼうとして、ふと気づいたこと。





「レーン……やっぱり呼びにくいな。呼んじゃいけないなら、レイって呼んでもいい?」

「え…」

「あ、やっぱりマズいのかな?なら、他の人はどう呼んでるの?」

「…誰も。誰もが僕を呼ぶ時は、『龍王様』だ。僕の名は誰も知らない。」

「え?」


その意外な答えに驚くしかない私に、彼は真っ直ぐな眼差しを向ける。






「僕の真名を捧げる相手は、なつな…君に決めていたんだ。他の誰にも、名を呼ばれたくも、捧げたくもなかったから。」


そう言って、目を細めた彼。

その真っ直ぐな想いに、胸がきゅんと疼いて、涙が溢れそうになる。





「だから君が僕を呼んでくれるなら、どんな名でも構わない。それに、僕の真名から考えてくれたんだろう?『渾名』を。」

「!え…?」

「この世界でも、真名から別の名をつけるんだ。でも、君がいた世界のように…渾名という言い方はなかった。」

「さっき、そんなことまで読み取ったの?」

「僕は意識して力を使う、その術を知っているからね。でもなつなはそうじゃない。僕と引き合うようにして、初めて力を使ったに過ぎないから。だから意識して力を使うことで、僕と同じくらい読み取れるようになるよ。」

「そうなんだ…」


そう呟いた私に彼は優しく微笑んで、私の目の前へと移動した。





「なつな、素敵な渾名をありがとう。御礼に、君の渾名を僕に決めさせてくれる?」

「決めてくれるの?」

「もちろん。君の真名は、『サワキナツナ』。それに相応しい渾名は――サーナ。この世界の言葉で、『太陽』という意味だよ。」

「太陽…」

「君は知らない筈なのにね。君が名付けてくれた『レイ』という渾名は、この世界の言葉で――『月』という意味を持つんだよ。」

「え…」

「『太陽』と『月』。互いになくてはならない存在――僕達と同じように。」


そう噛み締めるように呟いて、暫くののち。

彼は真剣な眼差しで、私を見上げた。








「だから、僕は君に告げなければいけない。君の秘密を…」





なつな――君が持つ、力を。






すみません、ライナスの登場までちょっと引っ張ります。


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