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龍王様の半身  作者: 紫月 咲
1章 出会い
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まさかの私の半身は、龍の王様でした





目が覚めて。

目の前にいた、私の半身は。

トカゲでした。






「んなバカな!!」


心からの声を叫ぶ。

トカゲなんて…トカゲなんて!





“キミの半身は、人ならざる者だからね。だから驚いたらいけないよ?”


そう言っていた彼を思い出す。




くそう、あの猫め…!

確かに人じゃないけど!でもトカゲって、トカゲって…!



混乱した頭で目の前の姿を見つめていた時、ふと感じる視線と、もふっとしたやわらかな感触。

それに引かれるように視線を向ければ――







「なんでここにいるの?!」


私の声に、目の前にいる自分の半身が震える。

けれど私の視線を一身に受ける彼は、動揺もなくしっぽを揺らした。





“言ったでしょう?どちらを選んでも、キミには僕から加護を授けようって”

「それは聞いたけど…」

“キミは初めてあるべき場所に還ってきた。でもキミには知らないことばかりの世界だ。だから僕がキミの守護を果たすために、共にきたんだよ”


そう言って、どこか楽しげにしっぽを揺らす姿に、私は彼の脇に手を差し込み、抱き上げた。





「私の守護って、じゃあ神社はどうするの!神なし神社になっちゃうじゃない!」

“それは心配いらないよ。僕は担当を外れたから。今頃新しい担当の神がいる筈だよ”

「……。神様が担当とか、なんて現実的な…」


どこか打ちひしがれた気持ちになっていると、そんな私の意識を呼び戻すように、彼のしっぽが私の手の甲を撫でた。






“さて、そろそろ本題に移ろうか。『彼』が可哀想だ”


その言葉にはっとして視線を向ければ、私と彼に強い視線を向けたまま、どこか居心地悪そうにする姿。





「お、怒ってる…の?」


恐る恐るそう尋ねれば、私に向ける視線はどこか柔らかく、優しい。

交わる瞳は、夢の中と同じエメラルドを思わせる緑色の瞳。


けれど、私が彼をその場に下ろし、その彼が私の太股に乗ってきた瞬間。

その瞳に、殺意のような敵意が混じる。





“なつな、安心するといい。彼はキミに怒ってなどいないよ。僕に怒っているのさ。キミと親しげだからね”

「え…」

“それから、彼はトカゲなどという知能の低い者ではないよ”

「そうなの?」

“うん、よく見てごらん。キミは彼と似たような姿をあの世界で見たことがあるはず。彼は、ドラゴン――龍さ。そしてその力も知能も最上位の……『龍王』だ”

「!!」

“キミはその彼の半身。つまり先程も話したけど…”


「『なつな』…」


彼の言葉に衝撃を受けていた私は、その小さな声を聞き逃しそうになった。

その声にハッとして瞳を向ければ、なつな、と何度も何度も呟いて。


その緑色の瞳が、私を射抜いた。







「君の名前は、なつな…?」


その声が紡ぐ、私の名前。

あの世界では聞き慣れた、名前。


でも、こんなにもこんなにも…嬉しかったことがあったかな。

名前を呼ばれただけで泣きそうになるなんてこと、今まであったかな。




そして私は、手を伸ばす。

意識をしたわけじゃない。

なのに触れたくてたまらなかった。


こんな風に、抱きしめたくてたまらなかった。

夢では、いつも叶わなかったから。











「そう、そうだよ…私はなつな。澤木なつなっていうの。」

「サワ…?それは真名?」

「マナ?」

“真の名という意味だよ。この世界で真名は、誰にでも名乗ってはいけないものなんだ。名を縛れば、その者を意のままに操れてしまう”

「真の、名…」

“真名を明かすは、真の忠誠を誓う者、永久の愛を誓う者。そしてキミ達のように――魂を分かち合う者”


神様のその囁くような言の葉に、私は耳を傾ける。



こんな小さな体で、彼は私をずっと待っててくれた。

寂しかっただろうに、辛かっただろうに。

決して短くはない23年間、現れるかも分からない、私を。


そして、こんなにもこの出逢いを喜んでくれている。


私達は、『魂を分かち合う者』。


彼は私、私は彼。

2人で1つ――だから。












「私の名――真名をあなたに捧げます。」

「!」


自然と、そう口にしていた。

この世界に来て、初めて自分の名前を告げるのは、彼が良かったから。


その言葉に、彼は目を見開いて。

抱きしめていた腕から離れると、少しの距離を取ってから、翼を大きく広げ、高らかに宣言した。






「僕の名を――真名を君だけに捧げよう。僕の名は『レーンルイハルベルト』。愛すべき僕の半身、これからはずっと一緒だ。」





死が、2人を別つ時まで――










やっと名を明かせたー!!

1番気合の入ったシーンです。

ヒロインの名は、『澤木なつな』。

さわき、と読みます。

そして龍王は、レーンルイハルベルト。

噛め!と言わんばかりの名前ですね(笑)


さ、次はいよいよライナスの登場!…かなあ?

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