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龍王様の半身  作者: 紫月 咲
3章 なつなの初恋
26/80

閑話 生まれぬ命と生まれた命

本編の序盤まで遡ります。

裏話のようなお話なので、ちょっと長いです。

ただ、話的にはなつなちゃんのトリップ後の重大なやり取りとなっています。

よろしければ、お読みくださいませ。





「――どうか、あなたが精一杯愛してあげて。私が愛せなかった家族のことを…23年間、何も返せなかった家族のことを。そして、今度こそ生きて幸せに…なってね。」



ただ、祈る。

誤ってしまった私の誕生を経た中で、救えた命の――幸せを。

そして愛せずに、心を許せずに距離を置いてしまった家族を思い、願う。



私の祈りや願いを受け止めるように、眩い光が放たれて、そして消えていった。








     *







「――ねえ、シオン。聞きたいことがあるの。」

“なんだい?”

「私が…直接『大神様』に会ったり、話したりは出来ないのかな?」



この世界にやってきて、数日が経った頃。

私はある決意を胸に、レイも同席したお茶の時間に、シオンへそう切り出した。


思いがけぬ私の問いかけに、問われたシオンも、紅茶を口にしていたレイも、私の足元に躯を横たえていたコハクも、息を呑むようにして動きを止めた。

ただ唯一シェリアさんだけは、何の話だか分からずに私達を見守っている。






“ふむ、唐突な問いかけだね。何故か、理由を聞いてもいいかい?なつな”

「…私がいた世界では、私はどういう扱いになったのか…そのことがずっと気にかかっていたの。行方不明とか、失踪扱いになってないのかなって。」

“その辺りのことは心配ないよ。なつながこの世界にきた瞬間、キミの存在はあの世界では『なかったこと』になった。何も残らない。家族の記憶からも誰の記憶からも、キミはいなくなり…記録にも残らない”

「……そっか。」

「……。なつな、もしかして君は…後悔しているの?この世界に戻ってきたことを…」


深く息を吐き出しながら呟いた私の仕草を見て、悲しげな表情で問いかけたレイに、私は慌てて首を振る。

意図した決意を、そんな風に誤解されてはたまらない。





「ううん、そうじゃないの!ただ、私が突然いなくなったことで…騒ぎになったり、家族を悲しませたくはなかったの。私は愛せなかったけど、家族は…私のことを精一杯愛してくれたから。」

「なつな…」

「だから私の存在自体があの世界で、初めから存在しなかったことになるなら…それでいいの。やっぱり何度考えても、あそこは私の居場所じゃ、なかったから…」

“なつな。キミが一番知りたかったことは、そのことではないね?——大神様に会って、本当は何を確かめたい?”


シオンの確信を持った問いに頷いて、私は告げる。


どうして、私は誤ってあの世界に生まれてしまったのか。

何故、大神様は誤ってしまったのか。


シオンは、このことを“あり得ないこと”だと言っていた。

ならどうして、その“あり得ないこと”が起きてしまったのか。

シオンにはきっと、言えないんだと思ったから。

神界でも、重大な秘匿事項なんだろう。


でも、その当事者である私には、知る権利がある筈だと思った。


そう告げるとシオンは黙り込み、暫く経ってから深く息を吐き出して私を見た。






“…確かにキミの言う通りだ。なつなは当事者であり、被害者だ。知る権利は、キミだけに在る”

「じゃあ…」

“キミの問いに答えよう。答えは『()』だ。会うことも、話すことも出来る。ただし――この世界ではムリだ。『境界(きょうかい)』まで赴かなくては”

境界(きょうかい)…?」

“神界と、その他の界の狭間にある空間だよ。神界にいる神は、本来神界を出ることは赦されていないんだ。ただ、最上位の神――大神様だけは…境界までなら出ることを赦されている”

「じゃあ、そこに行けば会えるの?」

“会える。境界に神以外が入れば、大神様はすぐに察知するだろう。それに大神様も、なつなに会って…謝りたいと望んでいらしたからね”


そう認めたシオンに驚き、希望が叶いそうな私の動きを遮るように、レイが立ち上がる。

そして彼は厳しく険しい表情を隠さずに、シオンを見た。





「なつながこの世界を離れるなら、僕も共に行く。1人で行かせるわけにはいかない。」

“それはムリだ。本来神界は、下界への直接の干渉も関わりも持たない。今回は特例中の特例だ。僕となつなのみが行く”

「…!僕も当事者の筈だ!何故共に行くことが出来ない!」

“分かっているだろう、龍王。この世界から『龍王』と『半身』が同時にいなくなることの意味を。なつなはまだ還ってきたばかり、短時間であれば影響はないだろう。けれど龍王、キミはなつなが不在の間、この世界を支え続けた。そんなキミがこの世界を離れれば、どれだけの影響を与えることになると思う?”

「…っ…!」

“これはなつなの心からの『願い』であり、『希望』だ。『見えざる者』達も、それを理解している。なつながこの世界を少しの間離れても、嘆くことはなく、逆に願いを叶えようと力を振るうだろう。…しかし、分かるだろう?彼らはキミのために、力を振るうことはない”

「…っそんなことは分かっている!分かっているけど、嫌だ!僕達は2人で1つの存在。――僕はもう、なつなと離れたくない…!」


まるで胸が引き裂かれそうになるほど悲痛な、レイの叫び。

私の我が儘が、レイを苦しめている。

そのことに切なく胸が締め付けられて。


…でも、でも。

私はその思いに駆り立てられ、思わずレイの手を両手で掴んで、重なった潤んだ瞳に語りかけた。





「…ごめんね、レイ。私の我が儘だって、分かってるの。でも、私は知りたい。なんであんなことになったのか、どうして起こってしまったのか。…私があの世界で生きた23年間に、区切りをつけたいの。」

「区切りを…?」

「うん。区切りをつけて、私は今日からこの世界に生きる『澤木なつな』として、歩み出したいの。——大丈夫、レイ。私はちゃんと帰ってくるよ。だって、私の居場所はこの世界の…レイがいるここだもの。他にどこに行くというの?」

「なつな…」

「心配しないで。シオンが一緒だし…それに、シオンが私が望まないことはしないって、レイだって知ってるでしょ?」

“そうだよ、龍王。見くびって貰っては困る。ほんの一時だ。境界とはいえ、それ以上なつながルシェラザルトを離れれば、影響が出る恐れがあるからね。それに、キミがなつなを信じずにどうする”


シオンの言葉にはっとしたのか、レイは重だるくソファーに身体を沈めると深く息を吐いて、私を抱き寄せてから、優しく微笑んでくれた。





「――分かった。行っておいで、なつな。君が知りたいことを聞いてくるといい。僕はここで、君を待ってる。」


そう言ってくれたレイ。

でも、繋いだ手のひらが震えていて。

それでも送り出そうとしてくれた気持ちに泣きそうになりながら、私はレイをぎゅっと抱きしめてから身体を離して微笑み返すと、黙って見送ってくれるシェリアさんに笑いかけ、コハクの躯を撫でた後。


シオンを肩に乗せ、瞼をとじる。

そして大きな力の流れに身を任せ、その場を後にした。







     *






“――なつな、目を開けて”



シオンの声に、瞼を開ける。

開けた視界に映るのは、一面の真っ白な世界。

足元はまるで水面に立っているような感覚で、私が動く度に波紋が広がっていく。


そして暫く歩いた先で、私の肩から降り立ったシオンは、ある一点を見据えて、恭しく頭を垂れた。






《――漸く会えましたね。万物に愛されし乙女、選ばれし尊き龍王の半身よ》


響き渡る、凛とした声。

その声と共に姿を現したのは、金色の羽を広げ、優雅に輝く大きな鳥だった。





「あなたが、大神様ですか…?」

《そうです、なつな。我が愛する子。漸く会えましたね…貴女のことは、この子から聞いていますよ。その魂のように、麗しい心優しい乙女だと》

「どんな説明を…。それより、その…神様はみんな、動物の姿をしているんですか?」

《いいえ。神は元々、精神体なのです。人に視認して欲しい時だけ、こうして個体の姿をとるのです。動物を選ぶのは、最もありふれていて…何より世界に紛れやすいからです》


そう説明してくれた大神様は、その羽を休めるように水面に降り立ち、そして金色の瞳で私を見上げた。






《なつな、まずは謝罪をさせて下さい。貴女を誤った世界に誕生させてしまったのは、私の過ちです。到底赦されることではないと思いますが…》


まるで頭を下げるように首を傾けた大神様に続くように、シオンまでも頭を下げる。

そんな2人に私は焦り、慌てて首を振った。





「過ぎてしまったことは、もういいんです。——今の私は、幸せです。まだ数日しか経っていないけど…あの世界も、レイも、他の龍達も、みんな優しいです。だから、いいんです。」

《……ありがとう。貴女は、この子が言った通りの乙女なのですね》

「買い被りのような気がしなくもないですが…」

《いいえ。貴女の本質は、皆が見抜いているのでしょう。…さて、あまり時間もありません。貴女が聞きたいことに、答えましょう。何故、23年前のあの日、過ちが起こってしまったのか――》


私の問いを見透かしたようにそう告げた大神様に、思わず私は唾を飲み込み、けれど覚悟して頷く。

それを見届け、大神様は静かに語る。


あの日の出来事を。







《龍王とその半身の代替わりは、私達神にとって…最も重大な事柄なのです。故に大神の名を冠す私は、その任を全うしなければなりません》


《代替わりは、神界の最奥――『揺りかご』と呼ばれる小さな(ほこら)で行われます。そこに肉体を失った2つの魂が戻り、そして新たな肉体と自我を得て、あの世界の聖壇へと移る。それが一連の流れです》


《けれどあの日、予期せぬ事態が起こりました。『揺りかご』に戻った魂の内、半身の魂が――形を成さない何かに、導かれるように別世界へと引き寄せられたのです》


《本来なら有り得ないことです。龍王と半身の魂は、私達神によって幾重にも守られ、加護を受けた選ばれし魂。…けれどそれを引き寄せたのは、時を同じくして生まれ、けれど失われかけた小さな命の――生への強い執念だったのです》



《ある人間の夫婦の間に生まれかけた、小さな命。来るべき時を待てず、早々に生まれそうになった命は…必然と失われかけていました。——それも、その命の定め。また来るべき時に新たな生を得るため、神界へと流れていくはずの命。けれどその命は、今この時に生まれたいと、強く願ったのです》


《小さな命に見合わぬ、本来ならまだあるはずのない強い自我。生への執念。ここに在りたいと望む思い。それは龍王と半身が生まれる時に溢れる力の波動と、同じ強さを持っていました》


《そしてその命がいよいよ失われた時、まるでその願いを叶えるように…半身の魂、なつなが引き寄せられ、生まれたのです。生まれぬ命の代わりに》






「私は、生まれたくても叶わなかった命の…代わりになったんですか…?」


予想外のその事実をなんとか噛み砕きながらそう漏らすと、大神様は頷き、続ける。





《全ては偶然です。けれど、初めて起こったあり得ない事態に…私はすぐに対処出来なかった。その一瞬の隙…それ故になつなはあの世界に生まれ、生まれぬ命と同化してしまった貴女の魂を、その痕跡を私は追えなくなってしまった》


《神界の長であっても、生きる魂になんの障害も残さず無作為に選別することは出来ません。手がかりは何もなく、私に出来たことはあなたがいるであろうあの国に、存在する神達にあなたに当てはまるであろう年齢の娘達を選別するように命令したことだけ》


《——これが私の過ちの全てです。私は大神の名を冠す、神界の(おさ)です。故にこの過ちは罪深く、そして何より…龍王にも貴女にも、酷く辛い思いをさせてしまった。そのことが、何より申し訳ないのです》

「大神様…」

《私に出来ることがあれば、お詫びにはなりませんが…せめて何かしたいのです。望みはありませんか?なつな》


そう言って私を見上げる大神様の言葉に、首を振りかけて。

ふと浮かんだ考えに、私は大神様を見る。






「あの…神界には、どんな魂も還ってくるんですか?」

《そうです。転生の輪に加わるために》

「なら…私と同化した魂も、本来なら還っているはずですよね?」

《そう、ですね…。貴女が世界を渡った時、同化していた命は切り離され、元の魂となり神界に戻っているはずです》

「――じゃあ、その魂を元いた世界の私の家族の元に、新しい命として…帰すことは出来ますか?」


予想外の望みだったのだろう。

言われた大神様も、私達を静かに見守っていたシオンも、驚いた様子で私を見ている。





《それが、貴女の望みですか…?》

「望みと言っていいなら。両親も兄も…温かい、愛情深い人です。愛せなかった私が、生まれる筈だった命の代わりになったんだとしたら…その命が生まれてもいいはずでしょう?」

“なつな…”

「だって、その命こそが『本当の家族』だもの。私にレイがいたように、その命だって両親や兄のところに生まれたかった。だから、必死に生きようとしただけ。…不幸な偶然だった。私は、今はそう思えるの。」


そう言い切った私を2人はどこか驚いたように見つめ、暫く何も言わなかった。

でも、やがて大神様は羽を広げ、ふわりとその場に飛び上がった。





《——分かりました。では、その望みを叶えましょう。丁度、安産と長寿の神であるこの子もいることですし》

「え…」

“気づかなかった?キミが参ったあの神社は、安産祈願や長寿を願う人が参るんだよ。僕はそこに座していた神だからね”

《この子の力があれば、容易いでしょう。貴女が与えた名の恩恵を受け、力も強まっていますし》


そう続け、大神様は広げた羽をより大きく広げ、舞い上がる。

すると金色の光を帯びた粒子がその躯から放たれ、シオンへと降り注ぐ。


そして彼はその粒子を纏い、高々と飛び上がり一回転して水面に降り立つ。

そこに広がる波紋、シオンがまたその場から飛び上がって離れると、広がった波紋はまるで波打つようにうねり、やがて勢いよく吹き上がりながら太い水柱となる。


そしてその水柱が収まった頃、その中心に現れたのは――金色の光を放った、淡い球体だった。






《これがその魂です。転生の輪から呼び戻しました》

「これが…」

“近づいてはダメだよ。肉体を持たない魂は脆く、影響を受けやすいんだ。特になつなとこの魂は23年間も同化していた。故に近づけば容易く、また同化してしまう”

「そうすると、どうなるの?」

《二度と切り離せません。貴女とこの魂が切り離されたのは、世界を渡り、在るべき場所が分かたれたからです。この魂は、あの世界に在るべき場所を持たない。故に切り離されただけ》

“元々はキミの魂の力や輝きの方が、この魂よりも遥かに強いんだよ。この魂がなつなを引き寄せられたのは、あの時たまたまこの魂の想いが…キミの魂に匹敵する程膨れ上がったからだ”

《故に、あまり長い時間貴女の傍に留めてはおけません。今も既に、貴女に引き寄せられていますから》


その言葉に魂を見れば、漂いながらも私の方に動いている。

それを見て思わず後ずさる私に、2人は確認するように問いかける。






《では、なつな。よろしいですね?この魂に、新たな生を。あの世界での、貴女の家族の元へ》

「…はい。ただ、1つだけ懸念が…」

《なんでしょう?》

「母は、もう高齢出産になる年齢です。そんな母に、今から子供を生ませるのは酷な気もして…」

“なんだ、そんなことか。心配ないよ。時を正す(・・・・)だけだ、『始まりの場所』から『現在』へ”

「時を、正す…?」


予期せぬ言葉に首を傾げる私に、シオンはしっぽを揺らしながら告げる。






“全てはこの命が失われたことから始まった。だからその『始まり』を正す。あるべき姿に、元の形に”

《あの時生まれる筈だった命。時を正すことで、その命を正しく生まれさせ、時を進めます。『現在』――なつな、貴女が生きる23年間と同じ時(・・・・・・・・)まで》

「!」

“そうすれば問題ないだろう?キミが生きた23年間とは、全く異なる人生をこの命は歩む。あの家族との関係も、異なるものになるだろう”

《これが私とこの子から、貴女へのお詫びを兼ねた贈り物です。…望みに見合いますか?》


どこか不安げな様子で私を見据える大神様に、開いた口が塞がらない。

こんな都合がいい展開があるのかと思ってシオンに視線を向ければ、私の意図を読み取ったのか、キミが言う『神様補正』だよ、と言ってきた。






《『神様補正』、ですか…下界には面白い言葉があるのですね》

「いえ、なんというか…説明しにくいので、あまり気にしないでください…」

“それで、どうかな?キミの望みに適うかな?”


そう訪ねるシオンに私は頷く。

それを受けて2人は安堵したように息を吐き、改めて大神様は私に声をかける。







《では、なつな。この魂を見送り、そしてお別れです。貴女に会えて良かった》

「私もです。こんな体験は二度と出来ないし、あの世界に渡るまで…神様に会えるなんて思いもしませんでした。」

《なつなだからこそです。万物に愛されし乙女よ。私達神も見えざる者も聖獣も、貴女をいつも…見守っていますよ》

「…はい。恥じないように精一杯生きて、この力をあの世界やレイ達のために…役立てたいと思います。」

《――良き心です。麗しく純粋な優しい心。我が愛する子、どうかその心を(うしな)わないで下さい。貴女に大神の加護を…》


そう囁き、ふいに大神様の姿が空気に解けるように薄くなると、次の瞬間には男性とも女性とも取れる不思議な姿をした人が、慈しむような柔らかな微笑みを浮かべて、私を抱き寄せる。

包み込むように抱きしめられ、優しく髪を撫でながら私を見つめ、頰に口唇を落とすとまた私を抱きしめる。

ただそれだけのことなのに、感じる絶対的な安心感に思わず涙ぐんだ私の頬を撫でてから、また次の瞬間にはその姿も空気に解けるように薄くなり、元の大きな鳥の姿となって羽ばたいた大神様に導かれるように淡い魂の光がふわりと漂っていく。


それをシオンと2人で見送りながら、私は無意識に語りかけていた。








「――どうか、いっぱい愛してあげて。私が愛せなかった家族を…何も返せなかった家族を。」



もう、二度と会えない家族。

最後まで馴染めなかったけど、嫌いではなかった。


愛されていることは分かっていても、同じ愛は返せなかった。

居心地は悪かったけれど、心底嫌ではなかった。


罪悪感を切り離せなかった、元いた世界での…23年間。



だからどうかたくさん、愛して欲しい。

甘えて、ぶつかって、ケンカして笑い合って――家族になって欲しい。






「そして、どうか幸せに…なってね。あなたの人生を、生きて。もう失われないように。」



気づかないまま、同化していた魂と魂。

その強い思いが私を引き寄せ、こうしてその命を救うことに繋がったなら…それだけで、辛く悲しかった23年間が――報われる気がした。


だから、もう()くさないで。

精一杯、生きて。


私はこうして、離れた世界で願うから。

あなたの幸せを、その家族の幸せを。





そして、大神様の姿も魂の光も消えた後、私とシオンも帰路につく。

私の、在るべき場所へ。

帰りを待つ、愛しき龍王の元へ。















「――おかえり。」


そうして戻った私を、待ちかねていたように抱き寄せる腕。

微かに震えるその身体を同じように抱き締めて、私は感極まったように泣いてしまうのだった。


この、奇跡のような出来事に。






さて、件の神様、大神様の登場でした。

本編では、なつなちゃんがトリップした後のことに触れられなかったのと、何故なつなちゃんがルシェラザルトに根付くことが出来たのか、その理由も明らかにしたくて、閑話として書いてみました。

凄くご都合主義だなーってトコはおいておきまして、うまく纏まったのでよしとします(笑)


大神様のイメージは、日本でいう朱雀に近いです。

シオンはまあ、銀色のロシアンブルーみたいなイメージです(笑)



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