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龍王様の半身  作者: 紫月 咲
2章 半身と番【つがい】
13/80

父で兄で弟で息子で、母で姉で妹で娘でもある2人。

若干、性行為を匂わせる会話があります。

ご注意くださいませ。




「………」


それはもう甘ったるい眼差しで、私を見上げる人。

さっきまでの怜悧な眼差しが嘘のように、絡み合う視線は熱を孕んでいて、どこか居心地が悪い。


掴まれた手は、まるで柔らかさを確かめるように撫でられていてくすぐったいし、視線を逸らそうとすればそれを見咎めるように眇められる瞳。





「可愛いサーナ。頷いてくれますね?」

「うう…」

「ああ、その困った顔すら愛らしい…。僕をこんなに夢中にさせるなんて、いけない子ですね…サーナ?」

「ううう…」

「さあ、あなたの真名を僕に教えて?そして僕の真名を呼んで下さい――サーナ。」


よりいっそうの甘さと熱を含んで紡がれる言葉と名前に、私の動揺と戸惑いが更に加速する。




(だってだって、こんなイケメンにこんなに真正面から口説かれたこともなければ、こんな状況に陥ったこともないのー!!)



こんな時、恋愛経験皆無な自分が恨めしい。

元いた世界では、そもそも他人に恋愛感情的な興味が湧かなかった。

それに何より、そこまでの心の余裕がなかった。


今まで告白されたことはあっても、すぐに断ってきたし、そもそも男の人とプライベートを過ごすこともなかったから、こんな風に口説かれたことはなくて。

どうしたらいいのか、なんて言えばいいのか、対処法が全くと言っていいほど分からない。



(カッコいいとは思うんだけどな…)






「あの、私…」


でもとりあえず何か言わなければと思って、口を開きかけた瞬間。


傍らで、強い光が放たれる。

つい最近も感じたことのある光。その突然の光に目を伏せた時、ふわりと、私の背後で空気が動いて。


お腹に回される、細くも力強い腕。

軽々とすくい上げられる足。

そしてやわらかく頬を撫でた、白銀の――長い髪。







「え………レイ、なの?」


ライナスさんがしたのと同じように、片腕に抱き上げられて。

そのまま見下ろした先には、既に見慣れた2つのエメラルド。

優しい眼差し、すらりとした背丈、穏やかな微笑み。

絨毯の上にまで、白銀の髪を無造作に下ろした姿は、非の打ち所がないほどカッコよくて。






「人に…なれたのね。」

「初めて人の姿を取ったけどね。服はライナスを真似てみたけど…おかしくないかな。」

「うん、おかしいどころか…カッコいい。」

「本当?良かった。」


そう言って嬉しそうに微笑む姿は、龍でも人でも変わらない。

そんな彼にほっとした時、ふと強い視線を感じて――振り返って。


ちょっと、振り返ったことを後悔した。






「王、サーナは僕の(つがい)です。今すぐにお返し下さい。」

「ライナス、君こそおかしなことを言わないでくれる?サーナは漸く会えた僕の半身だ。まるで自分が優先のように奪わないで欲しいよ。」

「それであれば、僕にとっても会えるとも思っていなかった(つがい)です。奪わないで戴きたい。」

「いっそ出会わなければ良かったのにね、永遠に。」

「お戯れを。」



(なんだろう…2人とも笑顔なのに、交わされる会話が黒いよー!!)


居たたまれない空気に小さくなりながら、私はふと気づく。

それを確かめようとレイを見下ろして、おずおずと声をかける。





「あの、レイ?聞きたいことがあるんだけど…」

「うん?どうしたの、サーナ。」

「う、うん…。あの……さっきから2人が言ってる、(つがい)って、なんなのかなーって。」


声をかけると、今までのやり取りなどなかったように穏やかな眼差しと声のレイに、そう問いかけると、レイもライナスさんもお互いにきょとんとした表情になって。

暫くののち、レイが合点がいった様子で説明してくれた。





(つがい)というのは、僕達龍にとっての『運命の相手』のことだよ。」

「運命の…相手?」

「そう。僕達龍は、人と交わることで…『眷族(けんぞく)』を産んで貰うんだけど、誰でもいいわけじゃないんだ。交わることは出来ても、(つがい)でなければ――子は産まれない。」

「!え…」

「だから、(つがい)と結ばれず交わることが出来なければ…眷族(けんぞく)は残せない。それくらい、重要なんだよ。」


思ってもみなかった重大な話に、開いた口が塞がらない。



じゃあ、何か。

ライナスさんは、私を自分の(つがい)だって思ってて。

だからこそあんなに熱心に口説かれて、プロポーズされて。


……あれ、もしかして。

これって、断れない…よね?


っていうかそもそも――






「私は、レイの(つがい)じゃないの…?」

「!え…?」

「だって、私ってレイの半身なんでしょ?それって、もう婚約っていうか決まった相手ってことでしょ?違うの…?」


そう言った私に、レイも、そして何故かライナスさんまでも固まってしまって。

みるみる表情が険しくなっていくライナスさんとは違い、すぐにくすくすと笑い出したレイに、私は首を傾げてみせる。





「レイ…?」

「ご、ごめんね…!まさかそんな風に受け取っていたなんて思わなくて…。半身というのは、(つがい)とは全く違うんだよ。」

「そう、なの?」

「そうだな…分かりやすく言えばね。僕にとってサーナは、母であり姉であり妹であり娘であり。サーナにとって僕は、父であり兄であり弟であり息子である――と、いうことかな。」


一息でそう言ったレイの言葉を、なんとか噛み砕いてみる。


母であり姉であり、でも娘でもあるの?


それって――





「『家族』って、こと?」

「そう。それに言ったよね?僕とサーナは同じ魂が分かたれた存在だって。僕達は魂で繋がってる――だから、恋愛感情はお互いに相手に持たなくなっているんだよ。」

「そう、なんだ…」

「それに、龍王とその半身は――死んだ魂が、また新しい龍王と半身に生まれ変わる。だから、子を為す必要はないし…(つがい)なんて、必要はないんだよ?」


そう言って微笑んだレイの言葉に心から安堵して、私はほっと息をつく。


なんだ、そっか。

それなら、結婚とかも必要ないんだ。

もし私が誰かを愛したら違うかもしれないけど、焦る必要はないし。


それより、レイと私は家族なんだってことが嬉しい。

レイには素直に甘えられる。

ずっと一緒にいられるんだ。






「…あれ?」

「どうかした、サーナ?」

「何か忘れてるような…」


(そういえば、何で(つがい)眷族(けんぞく)の話になったんだっけ?)


そう考えかけて、はたと気づく。

そして気づいた理由に、若干背中に冷や汗をかきながら振り返れば……








「ふふ、サーナ?僕のプロポーズを忘れるなんて、いけない子ですね……どうしてあげようかな。」




ライナスさんのことを、忘れてた私のバカーー!!!!









レイさん、腹黒疑惑勃発。

ただし、なつなちゃん以外にかな?

そして、レイさん祝人化!

この世界の龍はみんな髪の毛が長いのです。

きっと髪型に個性が(笑)

では、龍王vs水龍時々なつなちゃん、セカンドバトル、始まる…かな?

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