プロローグ 〜龍の涙と欠けた心〜
降り注ぐ大雨。
巻き起こる風は、その雨を巻き込み大嵐となって、森に、大地に、人々に、まるで抑えきれない何かをぶつけるように、向かっていく。
森は木々を揺らしながらギシギシと耳障りな音を立て、大地では実りの少ない作物がその大嵐に耐えながら、そして人々は家の窓から、建物の軒先から、往来の中から、不安そうに時折空を見上げている。
鳴り響く雷鳴。
大空を覆う雲が闇のように、そびえ立つ巨大な城を覆う。
輝ける白亜の城。
人々が敬い、讃えるその城も、今はくすんでしまったように、輝きを失っていた。
その城の、最も奥。
限られた者しか入ることを赦されない、居室に。
今日も、咆哮が響く。
どこまでも悲しく。
どこまでも苦しく。
何かを請い願うような、尊き小さな龍の咆哮。
そして今日もまた同じように、その居室を訪れる人影。
「王よ、どうかもうこれ以上悲しまないで下さい。苦しまないで下さい。貴方の心が、これ以上死んでしまう前に…!」
跪き、苦悶の表情で自分を見つめるその人影に、王がその瞳を向けることはない。
王と敬われる小さな龍には、誰の言葉も届かない。
誰の感情も響かない。
それは、彼が求める者の言葉でも、想いでもないのだから。
「何処に行ってしまったの…。僕と一緒に生まれた筈なのに、僕達は2人で1つなのに…」
「王…」
「どうして、どうしてどうしてどうしてっ!!」
繰り返される問い。
繰り返される声。
悲しみ、苦しみ、絶望。
負の感情すべてを纏ったその叫びは、その居室の壁に、天井に、吸い込まれ、消えていく。
まるで、叶うことなどないのだと、思い知らせるように。
「会いたい、僕の『半身』…」
2つの宝石から、一滴、涙が落ちた。
見切り発車満点ですが、とりあえずご都合主義で参ります。
初っ端からシリアスですみません…!