◇第8話◇ ぶっきらぼう
体育の時間。
男女に分かれて授業をしている。
男子はサッカー、女子はバドミントン。
ちらっとアイツを見た。
コートの端にぶっきらぼうに立っている。
(アイツ…絶対運動神経いいくせに)
さっきの休み時間の歩く速さ、あんなに速く歩いても息切れしてなかった。
(顔はよく見たことないけど、頭良いしルックスも良いし、運動神経も良いし…)
アイツにパスがまわってきたみたい。
アイツはめんどくさそうに近くにいた味方にパスをまわす。
(ちょっ!あんたゴール間近じゃない!どうしてゴールしないの!)
パスをまわされた奴も、ゴールしなかったアイツに驚いてた。
(あの無気力さがなければ、モテるんだろうな)
「なーに中野くんのこと見てんの?莉子ちゃん♪」
誰かに冷たいものをおでこに当てられた。
「ひゃっ!」
ふと後ろを振り返ると、冷たいスポーツドリンクを持った加奈がいた。
「なんだ、加奈か」
「あたしじゃ悪かったかしら?」
「そんなこと言ってなーい」
加奈は小学校からの付き合いで、一番信用できる友達。
あまり積極的に友達作りをしない私の唯一の親友。
「莉子は、ホントに中野くんが気になるんだねぇ」
加奈は私の隣に腰かける。
「だってさ、あんな無気力な奴いないでしょ」
「えー、いるよー」
「誰?」
「莉子。」