正体は
どれくらい走っただろうか。
目の前には若林公園。
私が渉に告白した場所。
公園に入ってベンチに座った。
顔を上げて周りを見渡すと、2・3人しかいなかった。
また俯く。
頬には、涙が流れた。
・・・何やってんだろ、私。
渉困らせちゃうし。
目の前が突然暗くなる。
・・・えっ?
顔を上げた瞬間、息を呑んだ。
「見つけた!!」
渉が息を切らせていた。
立ち上がり逃げようとしたが、腕をつかまれた。
手を離すために後ろを振り返ったが、ぐいっと引っ張られた。
気がついたときには、渉の腕の中だった。
「ちっちょっと・・・離して。」
胸を押すが、びくともしない。
渉は渉で
「逃げるからいや。」
と言って離す気がないらしい。
私は渉の腕の中で、涙をぽろぽろ流していた。
しばらくして泣き止み、恥ずかしさが込み上げてきた。
「離して。」
「逃げない?」
「うん。」
やっと解放してもらった。
そして、勇気を出して言う。
「別れないよ。」
渉の顔を見ていられず俯いてると
「さっきから何なの、それ??」
少し怒り気味の声が返ってきた。
「だって・・・。」
また涙が出そうになる。
「咲生!!」
渉が大声を出し、体がビクッと震えた。
「ごめん、咲生・・・大声出して。」
渉が呼び捨てにするのは珍しい。
切羽詰ってるのかもしれない。
「どうして別れるなんて言うの??」
優しい声で聞かれた。
「さっきの女の子に好きだっていってたし、付き合うって・・・。」
渉は、首を傾げ考えていると
「あぁー!!あれね!」
と思い出したような返事だった。
「あれはねって言うか、その前にあの子なんだと思ってるの?」
「渉に告ってきた女の子。」
「・・・あの子、弟の彼女だよ。」
呆れたように言ってきた。
「・・・弟の彼女?」
「そう。誤解は解けた??」
苦笑していた。
「半分は。」
「もう半分は?」
「付き合うこと。」
渉は、あの時の経緯を話し始めた。