出会い~回想~
次の日は、清々しいほど天気がよかった。
それとは逆に、咲生の心は土砂降りだった。
寝坊したのだ。
渉との約束の時間は11時。
只今の時刻、10時58分。
・・・間に合わない。
約束してる場所は、ここから20分もかかる。
慌てて出てきたせいか、携帯を忘れてきちゃったし。
こんな日に限って・・・。
怒ってるかな、それとも厭きれて帰っちゃったかも。
いろんなことが頭の中でぐるぐる回っていた。
駅に着いたら、ちょうど渉が待つ駅の方向へ向かう電車が来ていた。
「なんとか乗れた。」
座ることもでき、安堵と同時に疲れがどっと押し寄せてきた。
昨日は、今日のバレンタインのことを考えてたら、なかなか眠れなかったのだ。
・・・はぁ、何やってんだろ私。
電車の中の暖かさがちょうどよく、だんだん眠気が襲ってくる。
寝ちゃダメだダメだと思いつつも、意識は遠のいていった。
「ったく、担任の話は長いんだから!!」
昼休み、担任の先生に呼ばれ言ってみると、進路について話してきた。
もう、高校を入学して1ヶ月が過ぎようとしている。
学校にもなれ、生活リズム整ってきた。
先生の話は、最近あった進路についての用紙を白紙で出したことについてだっだ。
他にも何人かいたらしく、書かなかったことに対しては、あまり言われなかった。
ただ
「やりたいことはないのか?」
と。
・・・やりたいことないなぁ。
進学はしたいけど、何系に進むかは思いつかないし。
そんなことを考えてると予鈴のチャイムがなった。
「やばっ。」
急いで教室に行き支度をした。
こんな日に限って移動教室だし。
支度を終えたときには、授業3分前だった。
教室は走ってギリギリの場所だった。
教室を出て、人の間を避けて走っていく。
あともうすぐで!っという曲がり角で人にぶつかった。
「きゃっ!!」
「うわっ!!」
2つの声が重なり合う。
それと同時に、辺り一面にはプリントがばら撒かれてた。
「すみません!!」
私は、急ごうとする気持ちと恥ずかしさで心臓がいっぱいいっぱいだった。
相手に謝りながらプリントを拾っていると声をかけられた。
「永田咲生さん?」
「えっ・・・?」
声をかけた主を見た瞬間驚いた。
そこには、女子の間で噂になっている蓮見渉だった。
「同じクラスの蓮見渉なんだけど・・・分かる??」
彼は苦笑しながら聞いてきた。
「知ってるよ。」
私は緊張しながらも返事をした。
それが、私の彼氏・蓮見渉との初めての会話だった。
授業には少し遅れてしまったが、初めてということもあって、今回だけは見逃してもらえた。