悩み
2月13日(金曜日)。
私、永田 咲生にとっては、一世一代の前の日。
周りの女の子達も明日に向けて準備をしている。
友達の間でも、何を作るとか誰に渡すとか、あるいは告白するとか・・・。
そう!!
明日は愛する人に(特に女性から男性に)贈り物するバレンタインデー。
・・・どうしよう。
「さっちゃん!!」
考えてると声が
「おはよう。どうしたの?そんな暗い顔して。」
柔らかい栗色をした髪に、くりっくりとした目。
見ただけでも愛嬌のある美少年。
彼の名前は、蓮見 渉。
そして、私の彼氏でもある。
「ちょっと考え事をね。」
「考え事ー??」
かわいらしく小首を傾げている。
「さっちゃんに悩みなんてあるの!?」
「・・・あんた、私をなんだと思ってるの・・・?」
「うーん・・・運動バカ??」
真面目な顔をして言ってくる。
「真面目に言ってんの?」
「それじゃー短距離バカ☆」
渉が言い終えるのと同時に、拳骨を入れてあげた。
そして私が歩き出すと
「さっちゃんひどぉ~い!!(泣)」
と言いながらついて来る。
私が悩んでたこと・・・それは、料理が下手なこと。
友達からも
「どうやったらそんなことが出来るの??」
と聞かれたほどだったし。
「さっちゃん、もしかして明日のこと考えてる?」
「ちっ違うわよ!!」
こういうときに限って鋭い。
しかも珍しく真面目な顔だし。
「ただ、一昨日返ってきた期末の結果が悪かっただけ。」
「本当?」
「本当!!」
「そっか。」
渉は、自分の考えに自身があるとき、なかなか引いてくれない。
「そういえば、明日バレンタインだね☆」
「そういえばそうだね。」
私は前から分かっていたけれど、今思い出したふりをした。
材料なんて、2週間も前から準備していたし。
「くれるでしょ??」
「間に合ったらね。」
はぁー・・・なんで自分はこんな言い方しか出来ないんだろう。
それでも渉はいつものように
「楽しみにしている。」
と笑って言った。
そして私達は、家に帰った。