罪悪感
“なはははははひひひ!にゃはははははは!うひひひいひひひはははは!お腹!お腹痛い!あははははははは!あはあはあはあはははははは!”
「……。」
“負けた!うひひひ!負けてるよこの人!ぶ!なははははははは!あーだめ!お腹痛いはははははははは!てし、手下に負けてるにゃははははははははははは!”
「手下じゃない。仲間だ。」
“仲間でも上下関係はあるでしょ。命令を出せるっていうのは、相手を下だと知らない内に思ってる事に同義よ。”
いきなり素に戻ってまともな事を言ってくる。
そういう奴が俺は嫌いだ。
“嫌いだとか言われてもね。これがあたしだから仕方ないじゃない。もう笑うの飽きたし。”
「人の心を弄ぶのが好きな奴だな君は。そんな君が俺は憎たらしい。」
“んふふー。まぁそういうキャラだからねあたしは。”
「そうだね。それで、次は誰だ。さっさと出せ。」
“元気ねー。ドルイトスにボコボコにされたのに。”
「戦う相手がいない所で“修復”を使うくらい難くない。魔力以外、俺は完全な状態だ。」
“あっそう。もうちょい進めばいるよ次の相手。しかしやるわね。5階に来客なんて初めてよ。良かったわね一番取れて。”
「そんな事はどうでも―――」
「よくない。何故ならそのお陰でまたお前に会えた。と言っても、俺は自分のまま此処に来た訳じゃないし、自分の意思で此処に来た訳じゃない。だが、結局の所こうして俺達は会えたんだからどうでもいい事だ。」
「相変わらず君はお喋りだなネフィリム。いや、アリスレット。」
「なんだその名前は。面白くもない冗談だ。俺はネフィリムで、男だ。千の重力纏いし力。“煉獄に咲く晩年華”。」
“煉獄に咲く晩年華”か。
確かに強力ではある。
“栄光の手”に匹敵する程の術式兵装と言っても過言ではないくらいに。
「愛星芽部がさっき言っていたな。相手を下だと思わないと命令など出来ないと。だがそれは違う。お前は俺達を下になど見ていなかった。俺達は仲間だったんだからな。」
「だから何だ。」
「いや、言いたかっただけだ。」
「……ネフィリム、いやアリスレット。俺は君と戦いたくなんてない。この台詞は多分此処に来て三度目だが、前二回は受け入れられなかった。三度目の正直だ、道を開けろ。」
「だから、私はネフィリムであってアリスレットじゃない。そんな物は過去に捨てた。」
「いいや違うね。此処に呼ばれるのは全盛期の状態の人間だ。だから君はシェミハザと同化した直後の君という事になる。ならアリスレットだ。君がお喋りなのも、いやネフィリムもお喋りなのだが、だからだろ?」
「……はいはい。認めてやる。私はアリスレット。ネフィリムになる前だ。」
つまり強い。
アリスレット、ある組織に属していた女の子。
“×××”という素晴らしい殺人者の複製を生み出す為に犠牲になった女の子。
ただそれだけだ。
「私は私で完成していたと言うのに。本当に余計な事をしてくれたよ彼等は。」
「そう。君が俺の行動に賛成してくれたのはそれが理由だ。この世界は“DynamicWorld”その物。あらゆる世界の住人が入り乱れる坩堝。その世界の人類を消し去れば、簡単に復讐は終わる。」
「その通り。全く、それを見届ける前に死ぬとは我ながら情けない。」
「君の願いは俺が成就させる。だから、再三言うが、そこをどけアリスレット。」
「……認めたけど、その名前で呼ぶのは止めろ。思い出したくない事が多過ぎる。」
「そうだな。じゃあそこをどけネフィ―――」
「無理だ。」
「……そうか。分かった。1と7。2と6。3と5。残る数字は一つにして絶対なる死の蜜。私はそれを愛し尽くす。“栄光の手”。」
「それでいい。一発で決めよう。私もこんな場所に長居はしたくない。」
「そうだな。」
君と話していると「」が多くなりすぎる。
そんな下らない事を考えながら俺はネフィリム、アリスレットに切り掛かった。
心を埋め尽くす程の罪悪感を感じながら。




