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ExtraMaxWay-NaturaProdesse-  作者: 凩夏明野
第八章-愛の国-
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星終美麗

「それが“天より堕ちた集合体(ネフィリム)”ですか。思っていたより小さいな。」


「ま、こういう物の定義って奴は結局主観に頼るしかないからな。君がこの巨人を小さいと思うのもおかしい事ではない。俺にとっては十分に巨人だがな。」


“天より堕ちた集合体”が“星の火”を防いだのだろうが、直接防いだ訳ではないみたいですね。

[……あの黒い軍勢が盾になったと考えて違いないだろう。あれは……千の重力で作られた軍団さ。]

軍団?


「説明がまだだったな。この黒い軍勢は“エルヨ”。千の重力で形成された一個師団だ。全部で777体いたんだが、流石はメタトロンの術式兵装。ただの一振りで半分以上を消し飛ばすとは。」


「……人の忠告は聞くものだぞネフィリム。せっかく塩を送ってやったんだから学習しろ。」


「何をだ?」


「喋りすぎだ。」


“攻撃”も何も掛けずに前へと走り出す。

一番先頭の黒い軍勢まで辿り着くまで大体30秒程か。

それだけあれば作戦も立てられる。

[……成る程。だから“攻撃”を掛けなかったんだね。]

ええまあ。

“ネクローシス”を使いすぎて少し疲れた、というのもありますが。

[……君。]

ははは、大丈夫ですよ。

まだ持ちますからね。

さて、黒い軍勢はざっと見積もって300程といった所。

直接刃を交えなければ、“攻撃”を節約出来るかどうかは分からない。

“天より堕ちた集合体”は言わずもがな、全力で当たらなければ殺されてしまう。

そして本体のネフィリム。

彼に対しても全力。

とするならばやはり体力の消費は抑えたい。

だったら手段はこれだ。


「有象無象はさっさと消えろ。降り注ぐ契約の対価。“契約の天使(アゲロス)”。」


私の言葉と共に、天から矢が降り注ぐ。

あるものは光り、あるものは燃え、あるものは黒く、そしてあるものは目にすら止まらない。

それらは大地へと着弾する。

黒い軍勢を貫通して。

千の重力で形成されていると言うから、もう少し固いかと思っていたが、割と脆い様だ。

[どちらかと言えば戦闘力に重きを置いているようだね。……彼等が手にしている剣、あれ下手な術式兵装より強力そうだ。]

確かにその様ですね。

火の矢、電気の矢、重力の矢は結構な量が弾かれている。

重力の矢で押し潰せないという事は、やはり千の重力の方が上位という意味ですね。

[……そりゃね。僕の使う重力は結局自然の物だ。自然は神が創り出した。……なら、神に近い天使が固有に持つ重力の方が強いのは当然と言えるだろうね。]

ですね。

だが、やはり光の矢はそうもいかないみたいだ。

そもそも目で追えない物は弾けないのだから当たり前だが。


「流石メタトロンの術式兵装だ。光の矢を“エルヨ”が落とすのは無理らしい。」


「そうですね!」


数も少なくなった所で私も刃を振るう。

それなりに固い上に交える刃は一々重い。

が、結局有象無象は有象無象、雑魚は雑魚だ。

こんな前座に手を焼く程私は、私達は弱くない。

一体、また一体と消し去っていく度に、私は巨人へと近付いていく。

相も変わらず降り注ぐ矢の中を私は進む。

ネフィリムと“天より堕ちた集合体”を殺すために。


「私はこんな所で止まっている訳には―――」


「いいや、そろそろ止まってもらう。」


気付いたのはネフィリムが私の言葉を遮った直後だった。

それはただ単純に当たり前の事で。

時間が時間だ、そうある事は当然で、そんな事は頭の片隅にすら無かった。

明るいなんて事は、今の時間を考えれば本当に当たり前で、正しい。

だが、“熱い”ということには気付くべきだった。


「“エルバハ”。」


ネフィリムが言い、もう一つのネフィリムと呼ばれる巨人が地を揺るがす声を発する。

そして私は熱波に襲われた。


「相変わらず凄い熱気だよなネフィリム。俺まで参りそうな程だ。これを受ける側の気持ちにはなりたくない。ま、今回の受ける側はやはり大層な奴だ。まさか“エルバハ”を切り裂いてダメージを抑えるとは。」


「説明……好きかネフィリム。喋り過ぎな、ごほっ……。上に説明好きなんて……嫌な癖だ……!がはっ!」


「そういう君の趣味は強がる事か?難儀な趣味だ。“エルバハ”を八等分にしてダメージを抑えたのは賞賛に値するが、死にかけの筈だ。そう強がらなくても―――」


「黙れ。」


「ふう。黙ってほしいか。無理な相談なので君を黙らせる事にしよう。」


ネフィリムが右手を挙げる。


「どうせ冷たくなるんだ。ならこれでいいだろ。“ネピル”。」


瞬間、場に冷気が集まる。


「“ネピル”。“天より堕ちた集合体”が持つもう一つの技だ。幾千もの氷の刃を放射する。動けないであろう君に対してこの仕打ちは酷だろうが、容赦はしない。でも用心はする。君には近付かないで殺す。じゃあな。」


右手が振り下ろされる。

又ぞろ巨人が意味不明な言葉を発した。

そして氷の刃が放たれた。

……全く、学ぶ事は他の動物と違って人間だけに許された物だと言うのに、奴はそれが許せないらしい。


「喋り……過ぎだ。」


私の声はきっとネフィリムには聞こえていない。

氷が大地に突き刺さる轟音が響いたから。

故に、最後まで奴は学べないんだ。


「さようならジェイカー・リットネス。君は確実に俺が今まで戦ってきた中で最強―――」


「でしょうね。」


「!」


「何を驚いている?私があのまま、大地に伏したまま、お前を“殺す”事なく大人しくしているとでも思ったのか。」


そう、あのままでいる筈がない。

私にはこの鎧があるのだから。


「“神の代理人(デウス)”。装備した者のあらゆる傷を癒す鎧。」


「……君が言ったんじゃなかったかな。説明し過ぎとか。」


「ふん。これから死ぬ相手に何を言おうが大した事じゃない。死人に口無し。そうだろネフィリム。」


「もういい。ネフィリム、さっさとそいつを殺せ。」


「……言っただろう。お前を殺すと。未来不確定。選択可能。記録更新。“天の書記(チョイス)”。」


「今になって本の術式兵装なんて―――」


「未来予言、“天より堕ちた集合体”は私に消される。」


手加減はしていられない。

“攻撃”星百脚へ、“攻撃”星百腕へ、“攻撃”+“電気”、“速攻”。


「―――そんな物出してどうな……る。」


「どうかなってしまったな、ネフィリム。」


再びの轟音。

それを発したのは巨大な火の玉でもなければ氷の刃でもない。

七等分に切り裂かれた巨人の体が大地に崩れ落ちる事で発生したものだった。


「上位呪文、自然呪文と物理呪文の二重詠唱により発せられる呪文。強力だが、誰も好き好んで使おうとはしない。何故か、体に掛かる負担が大きすぎるからだ。自然呪文はそもそも人間が扱える物じゃない。何故なら我々は、お前達ライノセンス勢を含めてどうしようもなく人間で、不自然だからだ。」


「……饒舌だなジェイカー。喋り過ぎなんじゃないのか。」


「これから死んでいくお前に対するせめてもの手向けだ。話す事が好きらしいからな君は。」


……未来予言。


「……化け物だな君は。ただの人間が、俺をここまで追い詰めるとは思いも寄らなかった。」


「そういう事は言わない方がいい。……君は強かったんだから。」


「そう言ってもらえると助かる。決着を付けると、が……あ……。」


「……学習する事は結局無かったな。」


私の言葉から遅れる事約1秒。

ネフィリムの体から血が噴き出した。


「決着なんてこんな物だ。現実もこんな物。……結局、どこまで行っても私達は人間なんです。」


「成る程。現実でも、あまりに早く斬られると……こういう風に血が出るんだな。」


「……未来予言。ネフィリム、君は死ぬ。」


「そう、か。忘れていたよ。それが噂に聞く未来予言を可能にする……唯一の術式兵装。」


「そうだ。“天の書記”。冥土の土産として覚えて、逝け。」


「あ……ああ……。そう、させて……もら……。」


そう言って、ネフィリムは赤く染まった地に倒れた。


「未来予言、君は……次こそ人間になれる。く……。」


緊張の糸が切れるのと同時に、“天の書記”、それに“神の代理人”は消えた。

[……無茶をしたね。“ネクローシス”の連続使用。“攻撃”星百という容量オーバーの呪文。それに加えて……上位呪文。体が悲鳴を上げている。]


「ええ……。さすがに疲れました。」


地面に仰向けに倒れ空を仰ぐ。

……私も大概甘い。

最後の最後で敵に同情するなんて。

[君は人間なのだからそれでいいんじゃないかな。人は感情の生き物なんだから。]

そうですね。

……神が大好きなあいつだ。

許してはくれないかもしれないが、それでも納得はしてくれたでしょう。


「とにかく、敵は取りましたよ紳、爽君。」


そう、ネフィリムは死んだ。

だから脱落。

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