C.D.Cサイドの一件
時はセナリアが失踪してから三日後。
所はC.D.C本部。
顔を合わせているのは更月涼治、ジェイカー・リットネス、御剣爽、神杉紳、金石健太。
当然失踪したセナリアはいない。
「では、各自手に入れた情報を開示して下さい。先ず爽君。」
「セナリアに会った。」
「何だって?!」
声を上げたのは更月涼治。
彼は机に手を付き立ち上がった。
「はい落ち着いて下さい更月君。続けて爽君。」
「分かった。会ったのは二日前。第四地区の中でだ。ライノセンス勢が集まるとすりゃ第四地区くらいしか当てが無かったから行ってみたんだが。」
ビンゴだったって訳か……。
「何でその時点で連絡しなかった。」
「仕方ねえだろ。こっちが気付いたのと同時にあちらさんも気付いたんだからな。その時にいたメンツはセナリア、糸井草春、ネフィリム、須磨孝、そしてライノセンス。大城毬を除くライノセンス勢が集まっていたな。」
……よく帰ってこれたな。
ライノセンスだけでも凄まじいというのに、ネフィリムと糸井までいたんだ。
殺されていてもおかしくない。
「いやー結構危うかったぜ。見つかった瞬間ネフィリムは術式兵装を出したし、糸井は蟲を大量に出してきた。ライノセンスは笑いながら見ていたけどな。」
「良く無事で帰って来てくれましたね。報告ありがとう。次に紳、お願いします。」
「分かりました。と言ってもそこまで有力な情報は得ていません。ライノセンス勢に他の協力者がいないかを調べてみましたが、俗に言う権力者などとのパイプは確認できませんでした。どちらかと言えばそういった方々は、ライノセンス勢を危険視して自国の魔術師を使って狩ろうとしている様です。」
人類が滅亡したら権力や金なんてゴミだからな。
……いやしかし、いくら権力者とは言え、ライノセンス勢の目的を知れる物なんだろうか。
「更月君は権力者がライノセンス勢の目的をどう知ったか疑問の様ですね。簡単な事です。彼等は全世界の権力者一人残らずに声を掛けていたんですよ。自然の為に死なないか、とね。」
「それは馬鹿正直というか交渉下手というか……。」
「それだけ大雑把に事を起こしても十分対処出来る組織だという訳です。以上が私の報告です。」
「ありがとう。次は金石。」
名前を呼ばれると、梨の皮を剥いていた金石が顔を上げた。
「俺はライノセンス勢の金の動きについて調べたんだが、中々面白い情報を得た。先ず糸井草春、本名、須江垣一政。」
「須江垣……。須江垣財閥ですか。」
ジェイカーが驚いた表情をする。
それも当然だ。
須江垣財閥と言えばHAJACKが日本だった時代、江戸の頃から続く大財閥。
出来た頃は金貸しを主な生業とし、現在ではHAJACKの銀行や貿易関連を牛耳っている。
「……そう言えば、須江垣の会長って4年前くらいに病死してませんでしたっけ?」
「そこだよ更月。そして現会長は須江垣一政。」
「成る程。HAJACKの銀行や貿易を独占している企業ともなれば、金は幾らでも出てきますね。」
「まあな。だがそれだけじゃない。ネフィリム、彼は孤児だった。そんな彼を養子として受け入れたのがストロド・ナルテレンス。」
ナルテレンスとは……また大物が出てきたもんだ。
[金持ちか?]
金持ちなんてもんじゃない。
TASCの金は全てストロド・ナルテレンスの物だと言っても過言じゃない。
彼はTASCの全てを管理している、言わば大統領みたいなもんなんだよ。
「今ストロドは病気で入院している。次にドルイトス・P・レイヴァン。本名は……あまり表に出したくない名前だ。ただ、ロで始まってドで終わる名を冠しているとだけ言っておく。その頭取だった男だった。」
「げ……マジかよそれ。」
俺はえらく偉い奴を手に掛けたのか……。
「ま、つまり俺が言いたいのはライノセンス勢が金に困る事は無い。これだけだ。」
「ありがとう。そこに更に金石を追加しようとしていたとは。真の金の亡者は他にいたみたいですね。では次に私から。」
一口珈琲を含んだ後、ジェイカーは口を開いた。
「セナリアの家族に話を伺ってきました。どうやら彼等はセナリアがライノセンス勢に加わっていた事を知っていた様です。」
「な……!」
それなのに止めなかったのか。
有り得ないだろ……!
「落ち着いて更月君。別にセナリアが特別という訳ではないんだ。ベイグラント家は代々サブナクを受け継いでいる。その理由がライノセンス勢のする事に凄く関係がある。サブナクは“腐食”の権化。つまり7つある物理呪文の1つを担っている悪魔なんだ。調べた所、ExtraMaxWayを発動するにはその権化、7柱の悪魔と天使が必要らしいのです。ベイグラント家がその1柱を代々受け継いでいたのは、全てライノセンスに加担する為だった。そしてたまたまセナリアの代でライノセンス勢が動きはじめた。」
「だからセナリアはライノセンス勢に……って事ですか。」
「まあそういう事だね。」
タイミングが悪かったって言うのか。
そんな……そんな事で納得なんて出来る訳ないだろ。
「あの、ジェイカーさん。ちなみに残りの6柱は分かってんのか?」
「はい。“攻撃”はカマエル。“防御”はネビロス。“強化”はキマリス。“回復”はラファエル。“操脳”はヘルエムメレク。“魅惑”はヘベルメス。つまり、現在確認されているだけでもライノセンス勢は4柱を使役している。」
「私のカマエルまで入っているのですね。確かに、彼の“攻撃”の星は千もありますからね。」
納得納得といった顔で言う紳さん。
……俺がネフィリムと戦った時、確か毬はラファエルと同化している奴を連れてきて俺を直した筈だ。
つまり、ラファエルも既に奴らの手の内と考えていいだろう。
後はキマリスと紳さんが同化しているカマエルを揃えればExtraMaxWayは発動されてしまう。
……中々重大な事じゃないかこれ。
[ふむ。ま、実際はそれだけいなくても発動出来る。]
え?
[神クラスの悪魔と天使が5柱程いれば可能だ。]
そうなのか……。
何にしても猶予は無い訳だな。
「以上で私の報告は終わりです。最後に更月君。電光社はどうでしたか?」
「はい。田中太一と直接会って話したんですが、ライノセンスとネフィリム、センマイカ、ドルイトスに関しては電光社製のベリネを使っていない様です。彼の意見として、恐らくアフリカ辺りの違法ベリネを使用している可能性が高いそうです。で、セナリアは3歳の頃義体化の手術を行った。須磨孝は最近来たそうです。まさかあんなに弱そうな奴がライノセンス勢の一人だとは思わなかったので、普通に手術を行ったと。」
[実際、弱いからな弱そうではなく。]
戦った俺が一番よく分かるぜ……。
同情したくなるレベルだ。
「と、これで俺の報告は終わりです。」
「ありがとう。中々有意義な情報を得る事が出来ましたね。では次にこれからの動きについて話していきましょう。」
ホワイトボードに書き込まれるジェイカーの字を何となく眺めながら俺は思う。
待っていろセナリア、必ずお前の考えを聞かせてもらうからな、と。




