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ExtraMaxWay-NaturaProdesse-  作者: 凩夏明野
第六章-マリオネット-
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マリオネット

「嘘何て言わないわよ。大体ジェイクと涼治は疑ってたでしょ?“セナリア・ベイグラント・サブナク”を。まぁあれよね、在り来り過ぎて凄く詰まんないってのはあるわね。」


「あ?」


「あ、ちょっと更月君……。」


気付くと俺は芽部に掴みかかっていた。

襟元を掴み、芽部を椅子から少し持ち上げる程に力が入ってしまっている。

冷静にならなきゃいけない事は分かっている。

だが、落ち着けない時がある。

人間だから当然だ。


「まぁまぁそんなに熱くならないで。暑苦しいわぁ。」


「うるせえ……!セナリアが犯人だって証拠はあるのか!」


「はいはいそれも話してあげるから。だから手を離して。じゃないと切り落として潰すわよ。」


[ほら下がれ。洒落ではないぞ。]

ち……!

手を離して数歩後ろに下がる。


「全く、あまり熱くならない方が良いわよ?」


「……。」


「はいはい分かったわよ。先ずカメラの映像。設置者でもない人があれを見付けるのは難しい。それをセナリアが見付けられるのはおかしい。次に、これはもうあからさまな証拠なんだけど、“多角鋭式六頭霊影刃”。彼女自身が使っていたのだから面白いわね。次に、ライノセンス勢は全員ベリネをカスタムタイプにしているの。そしてセナリアも。」


「……あ。」


今分かった。

セナリアとジェイカーさんが対峙した時の違和感。

彼女はフェイドを使っていた。

だと言うのに彼女はフェイドの服型を着ていなかったんだ。

そしてそれは当たり前の事だった。

何故なら、データ型のフェイドを使っていたから。


「でも、それは別に証拠には……。」


「そうね。じゃあ最後に決定的な証拠を示してあげる。あのね、あたし、あの場にいたの。」


「……何?」


声を上げたのは俺ではなくジェイカーさんだった。

その顔は怒りに満ちている。


「それは真実か愛星芽部。」


「本当よ。フェイドで隠れて見てたのよ。」


「なら聞くが、何故ベルサーチを助けず、そして……セナリアを殺さなかった。」


「ジェイカーさん何を!」


「答えろ愛星芽部。」


ジェイカーさんの言葉は気に食わなかったが、彼の怒気に押されてそれ以上は言えなかった。


「……助ける必要なんて無いでしょ。ベルサは大した魔術師じゃない。マリオネットだけは十分評価出来る物だったけどね。」


「芽部……!」


「落ち着いて下さいジェイカーさん!」


歯をぎりぎりと鳴らし、今にも芽部に殴り掛かりそうなジェイカーの前に立って体を抑える。

力を抜けば直ぐにでも、という感じがひしひしと伝わってくる。


「そしてセナリアは殺すに値しない。ただそれだけの話よ。」


「あ!?ジェイカーさん止めろ!」


俺の静止を振り切ってジェイカーが芽部に向かって走り出した。


「でも安心しなさいなぁ。“マリオネット”。」


「な……!」


ジェイカーの動きがぴたりと止まる。

いや止められた。

止めたのは一本の糸。

それを俺は見た事がある。

そう、ベルサーチ・マリオネットが作った術式兵装“マリオネット”だ。


「何故、芽部がこれを。」


「ジェイクは知ってるでしょ?私のロストルケミスの術式兵装“異質なる(エクソル)交霊の先覚(キズモス)”。」


「……そうか。交霊術の最高位。対象の中の者を引き剥がす術式兵装。」


「その通り。そしてそれは時として人すら引き剥がす。あたしはベルサーチの魂を受け継いだのよ。」


受け継いだ?

毬がドルイトスの目を介してヘベルメスと同化したのと同じ様な物か。

[それより遥かに高度な物だ。中の者を、同化している者から引き剥がす。人の魂を引き剥がす。どちらを取っても悍ましい力だ。]

確かに悍ましくはあるな。


「……私は!魂だけではなく……生きたベルサーチとまた会話がしたかったです。」


「うん。ごめんね。」


驚いた事に芽部は謝った。

そして“マリオネット”を解除して操作を解いた。

ジェイカーさんは冷静さを取り戻したのか、その場で顔を伏せて突っ立っている。


「……あれよあれ、世界の選択には流石のあたしも抗えない。こうやってあたし達が此処で話しているのだって、自分の意思とは限らないのよ。」


「……ふ。確かにそうかもしれませんね。」


「安心しなよ。あの子はあたしがしっかり殺してあげるからぁ。」


「いえ、それには及ばない。私は誓いました。ベルサーチを殺した奴を絶対に許さない。私が必ずそいつを殺す、とね。」


「でも……!相手はセナリア“かも”しれないんですよ?!」


[はあ。貴様は甘すぎる。大概にしておけよ馬鹿者。]

煩い……!


「……関係ありませんよ更月君。本当にセナリアがベルサを殺したというなら、迷うことなく私はセナリアを殺す。」


「だからぁ、本当だって言ってるのに。信用ないわねあたし。」


別にそういう事ではない。

ただ俺は元より、やはりジェイカーさんも信じたくないんだろう。

……いや、そうだと思いたい。


「ん、と。失礼。」


ジェイカーがこちらに背を向け何かをし始めた。

多分ベリネにコールだろう。

[タイミング的にばっちりだな。]

……何がだ?

[次のジェイカーの言葉を聞けば分かるだろう。]


「……成る程。分かりました。ではまた後ほど。」


そう言ってジェイカーさんはこちらに向き直る。

その顔は、笑っている様にも見えるし、また、悲しんでいる様にも見える。


「何ですか?」


「……セナリアが失踪した。」


[タイミングばっちりだ。]

その日、セナリアは一枚の書き置きを残して消えた。

そこにはただの一言、“全てが終わる”とだけ書いてあった。

『悪魔』

『人物:C.D.C、WWS』

更新します

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