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ExtraMaxWay-NaturaProdesse-  作者: 凩夏明野
第六章-マリオネット-
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険悪疑惑

……朝か。

朝って確実に来るよな。

[は?]

俺の発した意見に対して“何寝ぼけた事を言っているんだこの間抜けは”と言ったニュアンスを含んだ“は?”で返された。

[なんだいきなり馬鹿な発言をして。続け様に精神的苦痛を受けて頭がいかれたか?]

いやいや別にそんな訳じゃない。

俺は変わらない日常を噛み締めただけだ。

[ふむ。中々良い趣味だ。]

いや別に趣味じゃないけど……。

[ならさっさと起きろ。]

分かってる。

ベッドから下りて伸びをする。

節々がこきこきと小気味良い音を発てて鳴る。

同時にすっきりした感覚が俺を満たした。

朝一のこきこきは止められない。

[そんなどうでもいい感想はいらん。今日はW.W.Sに行くのか?]

……どうしよう。

ジェイカーをストーキングして以来、俺は3日間W.W.Sに行っていない。

だって、どんな顔をしてジェイカーやセナリアに会えばいいか分からないから。

俺が学校に行かない事について母さんは何も言わない。

気楽と言えば気楽ではある。

不登校をほったらかすのもどうかとは思うけど。

[話が脱線しているぞ。行くのか、行かないのか、それが問題だ。]

……行きたくない。

[成る程。選択肢に無い答えを選ぶとは、よほど行きたくないのだな。]

まだ心の整理がついていないから。

[ではまた惰眠を貪るか?それとも又ぞろ外をブラブラするのか?]

そうだな……外に行くか。

思い立つと同時に財布を持って部屋を出る。


「……母さん、少し出掛けて来るよ。今日も昼飯いいから。」


「あらそう?それは楽で助かるけど、学校に行く訳じゃないわよね?」


「……ごめん。」


「別に謝らなくていいわよ。W.W.Sに通わせるのにお金が掛かる訳じゃないし、毎日行かなきゃいけない訳でもないでしょ?」


「それはそうだけど。」


それは学校に行かなくて良い理由にはならないと思う。


「……あんたが何に対して悩んでいるのかは分からないけど、それは私じゃ解決出来ない事なんでしょ?」


「うん、まあ。」


「なら私がとやかく言う資格は無い。あんたはあんたで、自分でしっかり考えて、後悔の無い様に進みなさい。大変な事なのかもしれないけど、あんたはそれをどうにか出来るかもしれない力を持っている。」


「かもって。断言はしてくれないんだね。」


苦笑気味に返すと、母さんは笑いながら返してきた。


「断言なんて誰にも出来ないわ。出来る事は信じる事だけ。私は何があろうとあんたの事を信じるから。だから、悔いを残さない程度に程々に頑張りなさい。」


「……うん。分かった。行ってきます。」


そう言って家を出た。

……何か、最近は誰かに諭されたりする事が多いな。

[ふん。これがもし誰かの書いたシナリオなら果てしなく気味が悪いな。まるで自分が何もかも分かっている様な口ぶりで鳥肌が立ちそうだ。]

あんたにも鳥肌が立つ事なんてあるのか。

[ないな。]

……。

さ、何処に行こうかな。

って考えても仕方が無いな。

別に行きたい所なんて無いし。

昨日までもブラブラと、当てもなく彷徨っていたからな。


「取りあえず今日も適当……ん?」


空を仰ぐと、二回……だっけ?

二回くらい見た白いあれが見えた。

[紙飛行機、だな。]

多分……毬だよな。

空を危なげない様子で延々と飛び続ける紙飛行機を飛ばせる人なんて毬くらいだろう。

今更だけど、あれどういう仕組みで飛んでいるんだ?

[なんだ気付いていないのか。全く以て相変わらず情けない。あれは術式兵装だ。]

な、なんだってー!

マジですか。

[マジだ。……大城毬から聞いていなかったか。私は奴の中の者が分かっているから普通に話してしまっていたな。奴が今現在同化しているのは、ドルイトスから抜き取ったヘベルメス。“水仙煌めく蘭重の間”を使うサンダルフォン。そして“盗みし(セクレタム)九十九代の録音(オペレティオ)”を使うヘルエムメレクの三柱だ。]

三柱?

三って、それ凄いじゃないか!

[ふむ確かに。]

いや驚いた。

変な奴だとは思っていたがそこまでとは。

[凄い変と言っていたのか……。]

いや、まあそうだな。

それで合っているな。

んで、あの紙飛行機はどんな術式兵装なんだ?

[それは本人に聞けばよかろう。]

……ああそうか。

紙飛行機を追えばいいんだ。

よし、行き先は決まったしさっさと行こう。

紙飛行機は結構先に進んでいるしな。

……かなり飛ぶな。

このままだと第四地区まで行くぞ。

[というより、第四地区に向かっているのではないか?段々と下降しているぞ。]

言われてみれば確かに。

でもなんで第四地区に……。

[行けば分かるだろう。走れ。]

……はいはい。

言われた通りに走り出す。

程なくして壁に囲われた地区、第四地区が見えてきた。

と同時に、門の前に立つ人影も見えた。


「おりょー?涼治君じゃなーいおっひさー。……まずったかなー。」


「おっす久しぶり。何をまずったんだ?」


「いやいやーこちらの話だよー。それでね涼治君、お願いがあるんだけど聞いてくれるかなー?」


「お願いによるけど、取りあえず聞くよ。」


「えっとねーっとおっとっと。」


毬は空から落ちてきた紙飛行機を見事キャッチして、一気に破いた。


「おいおい、それ術式兵装なんだろ?破いていいのか?」


「良いのよ良いのよー♪……こっちの方が都合が良いし。」


「何か言ったか?」


「いやいやーまたまたこちらの話だよー。」


「そうなのか。んで、お願いってのは何だ?」


「んー、もうちょっと待ってー。」


何処から取り出したのか、本に何かを書き込む毬。

……一体何を待っているんだ俺は。


「おっけーおっけーお待たせー。」


「じゃあ改めてお願いを聞こうか。」


「ああもういいよ。お願いは消えてなくなりましたーばいばーい♪」


と、俺に向かって手を振ってきた。


「……まともな会話もせずさようならか。」


「勘違いしないでよー。今のは涼治君にさよならした訳じゃないからー。」


「はあ?じゃあ誰に対してだ?」


「まーまーその話は置いときましょー。えっとー、本日はお日柄も良くー……。」


等とお約束の文句を話し始めた。

一体どうしたんだこの人は。

元々おかしいとは思っていたが、ここまで挙動不審ではなかった筈だ。

[大方、“盗みし九十九代の録音”がやった事を誤魔化そうとしているんだろう。もう解散したから“後ろを向くな”という願いを請う事を止めて場を濁しているのだ。]

解散?

後ろ?

[本人に直接聞け。説明するのは面倒だ。]

んー……何かよく分からないけど。


「えー今日は運動会日和な日でー、何かーなんだっけー?ブルーハワイ?的なー♪」


「ちょっとよろしいですか毬さん。」


引き続き意味不明な校長先生の挨拶を述べている毬に話し掛ける。


「はーい何かね涼治君。」


「“盗みし九十九代の録音”。」


「う……。」


俺の一言で毬はピタリと動きを止めた。


「ヘルエムメレクが持っている術式兵装なんだろ?どんな力を持っているんだ?」


「……はー。何で知ってるのよー。私喋ったっけ?」


「さあな。それについては覚えがない。」


「ちぇー。誤魔化せたと思ったのにー。うーん。取りあえずこの新聞の記事見て。」


「ん?」


ベリネに送られてきたのは、英語で書かれた記事だった。

取りあえず英訳ソフトで英訳する。

んー何々……日付は2220年4月4日。

見出しは、ハーメルンの笛吹き女?

なんだそりゃ。

[記事を読めば大方分かる。]

はいはいっと。

“街から消えた5万人以上の子供達。事件は警察に入れられた一本の電話が皮切りとなり発覚した。その電話は家の子供が消えたという物だった。警察は周囲をよく捜す様にと伝え通話を終了した。しかしその後複数の家庭から子供が消えたという、最初の物と同じ通報が入った。そこで警察は捜査に移ったのだが、子供達の行方は掴めなかった。魔術の大御所であるW.W.Sの捜索班によれば、魔術的要因が複数見受けられ、魔術師の犯行であるという事までは分かったが、それ以上の証拠は見つからず、子供達も見つかる事はなかった。”

……ね。


「こんな大事が外国で起きていたとはな。」


「あうー……。」


「毬がこれをやったのは分かったが、結局“盗みし九十九代の録音”はどういう能力なんだ?差し支えなければ教えてくれ。」


「んーいいよー。本の術式兵装でね、対象を指定するとその人が望む九十九の願いを覗く事が出来るのよ。んでねー、それを利用して対象を操るーってのがこれの能力。」


ぽんぽんと本を叩きながら言う。


「それでね、これのページを破いて紙飛行機にして飛ばすと、飛んだ範囲にいる0歳から12歳の人を操れるの。」


「……成る程。それで子供達を操って誘拐した訳か。」


「ありゃ?怒らないの?」


「そうするかどうかは次の質問に対する問いで決める。なんで誘拐なんてしたんだ。今もしてたよな?」


「うーん。それって答えなきゃだめー?」


無表情のまま首を縦に振ってやる。

答えなくても怒るという意思表示だ。


「……まーいっか。私はライノセンス勢な訳なのよ。」


「それは知っている。」


「答える前に一つ説明しとくね。子供って純粋な魔力の塊なの。」


「純粋な魔力?」


「そ。混じり気の無い純粋な魔力。物を知らないから、必然その力にも……こう、ぐしゃぐしゃした物が入ってないの。」


ぐしゃぐしゃした物、ね。

何となく分かるけどそれ以上に良い表現の仕方が俺にも分からない。


「HAJACKの下に“|渦に現存する恒久たる永遠スティグミ”があるのは知ってたっけ?」


「ああ。聞いた事がある。」


「それは簡単に言うと魔力を上げる物。んでー、子供はその力の恩恵を受けやすいの。純粋な物同士共鳴しちゃうのね。前置きは此処まで。結論はさらーっと軽く述べましょー。純粋な魔力は使い勝手がいいの。大きな魔術、そう例えば禁忌呪文である“発現”を使う時なんかに。」


「使い勝手がいい……!お前まさか!」


「子供達の魔力は美味しく頂きましたー♪」


「やっぱりか……。」


他人から魔力の吸収。

出来ない事は無い。

俺はよく知らないけど、何でもそういう事が出来る呪文やら機械があるらしい。

[古来では方陳による術式で一人ずつ抜き取っていたな。]

……魔力を抜き取られた子供はどうなる。

[別にどうも。ただ3日程天の選定に掛けられ、現世に留まるか、天に召されるかのどちらかという詰まらない話だ。]

……成る程。


「一体何人の子供を殺した。」


「さあーねー。そんな細かい事一々覚えてないよー。涼治君は今までに食べたご飯粒の数を数えようなんて思わないでしょ?」


「っ……!」


この野郎……。


「……仕方ないじゃない。」


「え?」


「私はライノセンス勢。ライノセンスの命令は絶対なのよ。」


「……お前。」


「……ぷ、あはははははっ♪なーんてねー。見ず知らずの子供がどうなろうと知ったこっちゃないよー。」


だよな。

……ぶっちゃければ、俺も全く知らない赤の他人がどうなろうと関係ないと思っている。

そんな物まで気にする余裕や度量は俺には無い。

[偽善者よりは一等マシだろう。世界に何億の人がいる。その全てを気にするなど馬鹿のする事だ。]

そして徒労だな。

世界平和なんて俺は望まない。

俺や、俺の周りの人達が幸せならそれで良い。


「それで、その魔力は一体何の呪文を使うために溜めている。」


「EMW。“自然が(エクストラ)行う(マックス)完全排他(ウェイ)”。名前はもう知ってるよねー?」


「……成る程。そういえばライノセンスは自然保護団体だったか。」


自然大好きって謳っていたし。


「あはははー。それ面白いねー。」


「ExtraMaxWay、最終的に人が世界に出来る事……。なんでそれが人の殲滅に繋がるんだ。」


「だってー人間は不自然じゃん。私達はねー自然が大好き自然保護団体なのよ。だから自然に仇なす人間は、皆殺す。」


「っ!」


何時もと違う毬に狼狽える。

やはり本気なんだ。


「……でも、人間全員を殺すってあんたらはどうなるんだ。腐っても人間だろ。」


「そんなの決まってるわー。私達も殺す。」


「意味分からねえよ。」


狂信的過ぎる。

俺も世界を旅して自然が美しいという事は痛感した。

それを平気で破壊する人間がいるという事も知った。

だけど、人間を殲滅してまでそれを守ろうとは思わない。


「……なあ毬。」


「何かなー?」


「何でそうぺらぺら話すんだ。ライノセンスから口止めされていないのか?」


「べっつにーされてないよー。……大体、君がそうなるように書いて仕組んだんでしょー?」


「は?」


書いて仕組んだ?


「覚えてないよねー。仕方ない事だよ。“脳電”。」


「……。」


ピリリと体に、懐かしい刺激が走った。

それと同時に俺の体は動かせなくなった。


「私はそろそろ行くよ。次会う時は、どうなっているか楽しみだね。」


毬の顔が段々とこちらに近付いて来る。

そして唇が……。


「……甘いぜ大城毬。」


「ありゃー……。これは驚いたなー。」


“脳電”を強めの“操脳”で流す。

要領が分かれば難しい事ではない。

ま、掛けられて解くまでのスパンは約7秒あるから、その間に攻撃を受けると厳しいが。


「ちゅーし損ねたかー。」


「……俺とお前は敵。そうだろ?」


「目的が違う=敵とは限らないけど、そー思うならそうだよねー。じゃ、私は行くね。」


「ああ。じゃあな。」


背を向けあって、俺は自宅の方に。

毬は第八地区に向かってそれぞれ歩きだした。

……何か実の無い話になったな今回は。


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