表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ExtraMaxWay-NaturaProdesse-  作者: 凩夏明野
第六章-マリオネット-
48/84

ストーキング

「……。」


ジェイカーさんが見つからない。

一体何処にいるんだ。

[ふむ。案外こちらのやろうとしている事を察知して雲隠れしたのではないか?]

……あながち間違っていない気がする。

食堂で大きな声出しちまったしな。

あの場にジェイカーさんがいなかったという保障はない。

とか考えていると、ベリネにコールが入った。

相手は当然薫だ。


<着いたぜ。今何処だ?>


<第一校舎の……7階だ。>


因みに、第一校舎は16階まである。

無駄に高い。


<7階ね。一瞬で行くから待ってろ。>


<いや一瞬でってそりゃむ―――>


「よう。」


「うわあ!?」


確かに一瞬で薫は来た。


「何か甘いもん持ってないか?チョコでも飴でも、この際砂糖でも果糖でも黒糖でもサッカリンでも良いんだが。Speed使って更にQuickまで使ったから結構な、疲れたんだ。」


「あ、いや。そうなのか。悪いが何も無い。」


「だよなー。期待はしてなかったから良いさ。さて、お望みの物を渡そう。」


渡されたのは一見してただの服……と運動靴?


「ありがとう。で、この靴は何なんだ?確かに俺が履いてる靴はスニーカーで運動向きとは言えないが、それにしたって別に走り回らなきゃいけない訳じゃない。」


「まあな。だが別に走り回る為の靴じゃない。これはな……なんだったっけ。」


「おい……。」


「ああ思い出した思い出した。“消音機能付き運動用履物”略して“ストーキング専用ネクラ運動靴”だった。」


略した後のが長いなんてどんな略称なんだ。


「フェイドが超高性能覗き用衣服だってのは確かなんだが、足音までは消してくれない。だからこれを持ってきてやったんだ。」


「フェイドの名称に多少……いやかなりの悪意を感じるが、そこは置いといて。ありがとう助かるよ。追跡なんてやった事なかったから。」


「二個貸しな。ま、この借りは世界を救うとかして返してくれ。


……釣り合っているのかそれは。


「もう一つ、情報をやろう。ジェイカー・リットネスはこの校舎の3階にいたぜ。今もそうかは知らないが。」


「そうだったのか。」


食堂は1階にある。

そして俺は上へ向かって順々に探していった。

入れ違いになった訳だ。

ジェイカーさんに見つからなかった事を考えれば不幸中の幸いだな。


「何から何までサンキューな。」


「構わないぜ。重要な事なんだろ?何たって仲間をストーキングするくらいだからな。」


「……まあな。」


結果、白と黒がはっきりする……かは分からないけど。

何にしても重要な事だ。


「……頑張れよ涼治。此処が正念場だ。そして乗り切れるだけの力をお前は持っている。」


真剣な顔でいきなりそんな事を言ってきた。


「お、おいおい。何だよ改まって。」


「いや別に。」


そう言うと破顔してへらへら笑った。

よく分からん奴だ。


「んじゃ俺は帰る。ついでだからまたSpeed使ってジェイカー見つけてくるわ。」


「そりゃ助かるよありがとう。」


それに対する答えは無く、薫は目の前から消えた。

と同時にベリネにコール。

相手はまたまた薫。


<ビンゴ……じゃないな。ジェイカーはまだ3階にいたぜ。3階の305教室の前で生徒と話してた。>


<仕事が早いな。本当、感謝感激雨霰だ。>


<ま、実質一瞬だからな。じゃあな気張れよ。>


<ああ。>


通話を切ってから取りあえずトイレに向かう。

上着を脱いで……まあ仕方ないか。

脱ぐ事を諦めて服の上からフェイドを着た。

脱いだ服の置き場が無いからな。

靴はそういう訳にはいかないから取りあえず履き代えた。

これはどうしようか。

まさかC.D.Cの部屋に置いておくなんて間抜けな事は出来ないしな。

トイレに置いておくのも嫌だ。

[ベレトの箱庭にでも置いておいたらどうだ?]

……成る程その手があったか。

術式兵装使用の所は省いてっと……よし準備完了。

早速フェイドを起動してみる。


「……消えたのか?」


[さてな。鏡を見てみれば良いではないか。]

確かに。

言われた通り鏡を見ると……消えている。

服は勿論髪の毛一本までだ。

凄まじきは田中太一の力だな。

[準備が出来たのだ。さっさとジェイカーの下まで行け。]

了解。

……はい省略。

俺は3階に着き、ジェイカーを視界に捉えた。


「君は良い才能を持っている。切磋琢磨すれば私を越える魔術師になれますよ。」


「いえそんな……。」


確かに生徒の一人と話しているな。

多分15、6歳くらいの女の子だ。

頬を赤らめながらジェイカーと話している。

[初々しいな。]

まあな。


「では私はそろそろ行かせてもらいます。」


「あ、はい!ありがとうございました!」


言うと女の子はたったったったったったったったったと小走りで去っていった。

[たったった、で良かったのではないか?]

いや聞こえた分をそのまま表現したんだよ。

おっと、ジェイカーも動き出した。

ん?

なあ、今一瞬こっちを見なかったか?

[……私もそんな気がしたが、こういうのはお約束だろう。]

確かに。

後ろめたい事をしていると被害妄想に陥るからな。

無駄な考え事はこの辺にしてジェイカーさんを追いかけよう。

……その後のジェイカーの行動は至って普通、言い換えれば詰まらない物だった。

又ぞろ女生徒と話し、女生徒と話し、女生徒と話し、女生徒と……。

ってどんだけ女の子と喋ってんだ!

[所謂イケメンという部類の顔を持っているからな。言い寄られてもおかしくはないだろう。]

そりゃそうなんだが。

これストーキングする意味あるのか?

此処までの話、目茶苦茶詰まんねえと思う……というより思われていると俺も思う訳なんだが。

[あまり似た様な単語ばかり使っていると阿呆だと思われるぞ。]

いやあんたも使っているぞ。

お……やっと話を切り上げてくれた。

さて、次は一体何処に行くのやら。

[外に向かう様だ。如月薫が見つけておいて良かったな。]

確かに。

じゃなきゃ今日中に見つけるのは不可能だったかもしれない。

……それにしても随分と歩くな。

って、此処は。


「ベルサーチが殺された研究所、です。真実は此処にある。だからこそ私は君を此処まで連れてきたんだ。」


「……。」


ばれているのか?

[分からぬ。誰か他の気配は感じられん。……やはり貴様に呼び掛けているのではないか?]

ですよね。


「いい加減FADE-outを解いて出てきたらどうですか。」


と言われ、これ以上姿を隠すのは意味が無いと感じてFADE-outを解こうとした。

しかし、次の一言でその意味が無い事が無い事を知る。


「セナリアさん。」


「……!」


あ、危ない危ない……。

思わず“え?”と言う所だった。

いや、それは置いといて……。


「あら。ばれていたんですか。」


背後から聞こえた声は、確かにセナリアの物だった。

振り向くまでもないが、そりゃ振り向くよな。

そこにはセナリアがいた。当然だな。

あれ……?

[なんだ?]

いや、なんだろうか。

セナリアを見て何か不自然さを感じたが、それが何なのかよく分からない。

必要な何かがセナリアには足りていない。

充足感が無いとかそんな大層な物じゃないんだけど……。


「どうして分かったんですか?」


「足音だよ。フェイドは確かに高性能だが、音までは消してくれませんからね。」


「あら。それには気付きませんでした。」


俺がセナリアの不自然さに気付けない間にも、会話は進んでいる。


「それで、用件は当然ベルサの事、だよね?」


「そうです。取りあえずこの映像を見てくださるかしら。」


「……ほお。」


恐らくだが、俺に見せた物と同じ映像を見せているんだろう。

いや……直接的過ぎないか?

これじゃストーキングした意味が無い。

[物事は直截に述べた方が楽で良い。私は七面倒な事と瑣事が嫌いだ。]

だからって……いやだからってってのもおかしいけど、犯人らしき人に証拠を見せるのはどうかと思う。


「成る程。確かに私が犯人の様ですね。」


「……どうなんですか?」


「結論を一つとこの映像の矛盾点を二つ、それを述べるくらいしか私には出来ません。」


「それで結構です。」


「分かりました。」


そう言ってジェイカーさんは近くにあったぼろい椅子を引き寄せて座った。

セナリアは立ったままジェイカーの言葉を待っている。


「私は犯人ではない。容疑者は必ずこう言いますが、真実を述べて悪い事はありませんから。これは真実です。」


「そう言うとは思っていました。でも……実際映像が―――」


「次に。」


セナリアの言葉を半ば強引に遮りジェイカーは続ける。


「この映像の矛盾点です。一つ目は映像の角度。何処の誰だか知りませんが、ベルサを殺した者が現れた時、ベルサは壁に背を付けてへたり込んでいました。」


「……それがどうしたのですか?」


「この映像はベルサを斜めから捉えていますね。しかも背後を。」


……あ。

[成る程……。いやいや、気付けないとは貴様だけでなく私も情けない。]

壁に背を付けているのに背後を写している。

そんなもの、ただの監視カメラじゃ不可能だ。

隠しカメラなら出来なくもないが。


「何故この映像は背を写しているのでしょうか。監視カメラは基本天井に設置してあるので、斜めに写るのは当然です。しかしこの場合、背を壁に付けているのですから写るとしても頭頂部だけでしょう。違いますか?」


「違いませんね。」


「第一、この研究所に監視カメラは無い。ウィールハート……いえ、赤沢颯太と一緒に此処を使っていた私が言うんですから確かです。」


「……え?そうなんですか?」


珍しくセナリアが驚いている。

確かに俺も驚いた。

この研究所はその昔、魔術師が使っていたというのは聞いていたが、その魔術師がジェイカーさんとウィールハートだったなんて。


「はい。……天高く炎立つ。天蓋を焦がす灼熱の天国“炎の柱(コラスィ)”。」


「え、ちょっとジェイカーさん?」


[待て。]

いや俺は何も言ってない。

[今にも飛び出しそうだったので止めてやったのだ。]

……だって。

何でジェイカーさんは“炎の柱”なんて出したんだ。


「……“攻撃”を使って壊す事も出来ますが、あまり思い出の場所を傷付けたくないので。」


と言うと、ジェイカーさんは壁に切っ先を突き立てた。

スルッと、まるで熱した鉄をバターに突き刺すが如くスルッと、壁に“炎の柱”は突き刺さった。

その後、何かプラスチックの様な物が割れる音が聞こえた。


「よっと。」


壁から“炎の柱”を一旦引き抜き、刺した周囲を……凄まじい速さで丸く斬った。

凄いな。

確かに出来る人だとは思っていたけど、ジェイカーさんってやっぱり凄い。

あんな速さで剣を振るうなんて俺にはまだ無理だ。

[年季の違いだな。]

そうですねー。

丸く切り取られた壁が軽い音を発てて床に落ちた。

出来た丸い窪みの中にあったのは、所謂カメラという奴だ。

別に所謂必要は無いけど。


「と、これが覗き魔の正体です。全く、何処の誰だか知りませんが趣味の悪い人間もいたものです。」


「……犯人が仕掛けた物でしょうか。」


「十中八九そうでしょうね。私を犯人に仕立てるための策といった所だと思います。」


「成る程。最初の矛盾点は解決しました。次を説明して下さるかしら。」


「いいでしょう。次はもっと簡単です。私以外に気付く者はいないでしょうけどね。私は刀なんて使いません。」


「……は?」


うん。

セナリアの感想は尤もな物だと思う。

俺も思わず“は?”と言いそうになったからな。

そんなもの矛盾と言えるのか?

ジェイカーさんにしか真実は分からないじゃないか。


「えっと、それは矛盾なのかしら。」


「大いなる矛盾です。そもそも私は武器をあまり使いません。一々“腐食”を物体に纏わせるより、直接相手に入れた方が早いですからね。ま、メタトロンと同化してからは武器も悪くないと思う様になりましたけどね。」


「……そうですか。」


「私の疑いは晴れたかなセナリアさん?」


「元々疑いたくて疑っていた訳ではないわ。二つも矛盾点があるなら、被疑者から外しても構わないです。」


「それは良かった。じゃあW.W.Sに戻ろう。」


「……はい。」


ジェイカーがセナリアを連れて研究所から出た瞬間、俺は床に座り込んだ。


「……っはー。疲れた。」


[貴様は別に何もやってなかろう。]

いやいや、あの場で黙って突っ立ってるのは中々しんどかったぞ。

[……。]

ん?

どうかしたのか?

[私も矛盾点……というより、あからさまにおかしい、先程の会話を聞いていれば誰にでも分かるおかしい事実がある。]

おかしい事実?

[監視カメラは案外誰にでも分かる物だ。あれは寧ろ存在感を示す事によって犯罪などを未然に防ぐ物だからな。]

それは分かるけど。

それが何の関係が?

[対して隠しカメラとは、名が体を示すが如く“隠してあるカメラ”だ。]


「……おい。いや、でも!」


[埋まったままの隠しカメラ。その存在を知るのは、そして映像を抜けるのは……。]


「止めろ……止めてくれ!ジェイカーさんの無実は大体立証出来た。状況証拠が多いとは言っても信憑性のある証拠ばかり。ジェイカーさんはベルサーチさんを殺していない。犯人はライノセンス勢の誰かだって事で良いじゃないか!」


[喧しいがなるな。]


「煩い!」


……これ以上仲間を疑うなんて嫌だ。

[だが、これもまた動かし難い証拠だ。]

黙れ。それ以上言うな。

何も聞きたくない。


「[はっきり言ってやろう。セナリア・ベイグラント・サブナク、彼女は現時点で最も犯人に近い存在だ。]」


勝手に口を使われた事に対して怒る気にもなれない。

ただただ、再び生じた疑惑に抉られる痛みを感じながら項垂れるだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ