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ExtraMaxWay-NaturaProdesse-  作者: 凩夏明野
第五章-通り魔的螺旋階段-
43/84

vsセンマイカ

「……。」


口元に笑みを残したままドルイトスは消えた。

それと同時に、奴の腹に突き刺さった刀もその存在意義を達成して消える。


「……疲れた。」


ドルイトスは強かった。

そして手加減の上手さも半端な物ではなかった。

俺はあれだけ蹴られ、投げ飛ばされたというのに、軽い打撲傷が残った程度だからな。


「……最後まで意味不明な奴だったよあんたは。と、そうだ忘れてた。」


悪魔?ベレト?

……まだダメか。

既に体に入り込んだ“操脳”を“操脳”で洗う事は出来ない。

一番簡単なのはベレトの箱庭を使う事なんだけど……。


「44の軍勢、無限であり夢幻の攻域。最高末路の生き地獄。解放にして開放の死路。準備は出来た。最上の待つ戦争を辿れ。“ロード・デス・ウォーヘル”。」


……ダメだよな。


“当たり前じゃない。ロストルケミスはベレトの上位種なんだからぁ。逆ならまだしも、今回は無理ね。”


「……愛星芽部!どっから見てんだお前!」


“最上階よ。さっさっと来れば会えるわね。”


「最上階だと?」


“そう。このカロス・バベルは7階建てのビルなの。早く螺旋階段を上って上に行きなさいなぁ。”


「螺旋階段なんて何処に……。」


“廊下の突き当たり。行ってみなさい。”


少し癪だが言われた通りに行ってみる。

と、そこに鮮血が所々に付いている螺旋階段が確かにあった。


「何だこれは……。」


“皆結構激しく戦ってくれるからね。血が凄いのよ、なはははぁ。けどドルイトスにはがっかりね。あいつが本気で格闘すれば涼治もズタボロの血だらけだっただろうに。”


その可能性は否定出来ない。

俺も変わっただのなんだの言ったが、基本的な戦闘じゃ絶対にあいつに勝てなかっただろう。

それくらいドルイトスは強かった。

ぬちゃぐちゃと、血でぬかるんだ螺旋階段をぐるぐると上っていく。

結構長いな。

……おお、今気付いたけど、この螺旋階段支柱が無い。

ロレットチャペルのそれと同じだ。


“あれ作ったのはロストルケミスと同化した男なのよ。”


「そうなのか。」


“確か名前はシーファスとかそんな感じだったわぁ。神の使いだったらしいけど、悪魔と同化して、その知恵を元に作ったの。支柱を作らなかったのは面白いからだって。”


「へえ。」


豆知識を聞きつつ、俺は上り続ける。

ロレットチャペルの階段は確か33段だったけど、此処のは100段くらいあるな。

人間の技術じゃ不可能な規模だ。


「当然だろう。人の技術とはそういう物では無い。セレンディピティという言葉は知っているか更月。」


「……確かに2階だな。セレンディピティとは言わば偶然の産物。人間の技術なんてのは、言ってしまえば全て偶然で成り立っている。これで説明は十分だろセンマイカ。」


「そうだな。止めるだけ。ただそれだけで私の欲望。“静止(トリック)(スター)”。」


「いきなり本気だな。」


真横から出現した“静止線”をしゃがむ事で避ける。

……あれ?

纏まらないし、消えない。

何故だ?


「考えても埒は明かないぞ更月。ほら次も避けてみせろ。」


「ちぃ……!」


四方八方から金の糸が放出される。

ある糸は上から。ある糸は背後から。そしてある糸は下からだ。

全部消えない。

糸の結界でも作る気か。

こんな狭い空間でそんな物作られたら堪らない。

取りあえず廊下から待避、それが正解だ。

という訳で、俺はドアを蹴破って部屋に入った。


「その行動自体は正しい。だが、選択した部屋は不味いな。」


「……そうみたいだな。」


入った部屋は、さっきドルイトスがぐちゃぐちゃにした様なオフィスではなかった。

会議室、大した広さもない会議室だ。

それに気付いて踵を返そうとしたが、時既に遅し。

扉があった場所には糸が張り巡らされている。

まるで蜘蛛の巣。

それも捕らえるだけじゃなく、体の中に侵入してくる恐ろしい巣だ。


「甘かったな更月。2階に広い部屋は無い。故に俺が2階に配置されたんだろう。」


「……適材適所って所だな。全く以て参るよ。だが、忘れているんじゃないか?」


「ん?何をだ?」


「“静止線”は“影の王冠”の前に切り捨てられる存在だって事をだよ。」


さっきまでは避けたが、今からは斬ろう。

一々“影の王冠”を振るっていては体力が、とも考えたが、どちらかと言えば糸を避けて動き回る方が疲れる。

“武器”と違って召喚しっぱなしの“影の王冠”を握り直してみる。

……よし、“私意たる粘性(チーモ)”は掛かっていない。

戦うのは二度目で、しかもその時は苦しいながらも勝ったんだ。

だから、きっと今回も大丈夫。

センマイカと戦う上で気をつける点は、あらゆる場所から現れる“静止線”と、あらゆる空間に粘性を与える“私意たる粘性”。

特に気をつけるべきは後者。

俺はあれのせいで片足を切る羽目になったからな。


「考えは纏まったか?」


「ふん。相変わらず優しいな。ゆっくり考えさせてくれるなんて。」


「戦いに於ける俺の流儀だ。まともな攻撃手段を持たない俺は、後手に回った方が戦いやすいのでな。」


センマイカが右手を振るう。

と、右手から“静止線”が放たれる。

まるでワイヤー、何かのアニメみたいだ。

正面から来るそれを、俺は切り裂く……?!


「な……!」


「ドルイトスの戦いで学ばなかった様だな。」


“静止線”が“影の王冠”に絡み付く。

まるで蛸、いや烏賊……いやいや。

さっき言ったみたく蜘蛛の巣、糸って所だな。

雁字搦めにし、じわじわと弱らせそして喰らう。

人は自分の自由にならない事を嫌う。

それが自分の体の自由という事なら特段に。


「くそ……!斬れないじゃねえか!」


「今俺の中にアルマロスはいない。あいつの負担は考慮に入れなくていい。故に“静止線”の強度を最大まで上げる事が出来るのさ。」


「まんま蜘蛛の糸だな。だけどよ、あんたも学んでないみたいだな。」


「……何?」


「場合は違うが、応用編だ。“攻撃”星二十全て腕へ。」


「おわっ!?」


一気に“影の王冠”を引き、センマイカの体をぐらつかせる。

次に“影の王冠”を思い切り振り抜き、そのまま放る。

当然“影の王冠”は吹っ飛ぶし、それに繋がった糸、そしてそれを操るセンマイカも吹っ飛んだ。

……糸の長さが1m強くらいじゃなきゃ出来ない芸当だなこれは。


「ぐっは……!」


壁に激突するセンマイカと、壁に突き刺さる“影の王冠”。

……解除は出来ないか。

完全に捕らえられている。


「成る程……。あの巴投げの事を、言っていたのか。」


「そういう事だ。投げ飛ばされる方向と使っている術式兵装が違うが、予測は出来た事態だろ?」


「確か、に。」


ふらふらと、センマイカが立ち上がる。

それなりに効いているらしい。


「しかし、“影の王冠”はこれで完全に封じた。」


と言いながらセンマイカは、“静止線”でぐるぐると“影の王冠”を覆い壁から引き抜いた。

何をするのかと見ていると、投げられた。

俺に向かってじゃない。

窓に向けてだ。

“影の王冠”はガラスを突き破り、そして外に落ちていった。


「何してくれるんだよあんたは。」


「卑怯とは言うまいな。何時までも放置していた君が悪いんだ。」


……相変わらず解除不能。

あれだけがちがちに固められたから当然だな。

武器が無い。

“武器”を使ってから……まだ15分程か。

悪魔が眠っている?今、その程度の時間の経過じゃダメだ。

まともな物が出るとは思えない。


「シンキングタイムは終了だ。」


「うげ……。」


足が動かない。

いや、それだけじゃないな。

腕も頭も、体自体がまるで“空間に固定された”様に動かない。


「これが“私意たる粘性”の本気か。いやー恐ろしいね。」


「……やけに余裕だな。自棄になったか?」


「自棄にもなりたくなるさ。俺は動けない。そして今から金の糸が俺を覆い、体内に侵食する。それを防ぐ手立てが一つしかないなら自棄にもなる。」


「一つ、な。言っておくが生半可な“防御”では防げ得ないぞ。」


「く……くくく。あははははは。あんたがこれから見るのはよ、この世で至上の『“防御”』だ。」


「そうか……。ならば見せてもらう!」


金の糸が、俺に侵入すべく襲い掛かってくる。

……さあ見せてやろう。

この世で最も堅牢な『“防具”』を。


『単純なる鉄壁の盾。“防具”』

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