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ExtraMaxWay-NaturaProdesse-  作者: 凩夏明野
第五章-通り魔的螺旋階段-
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vsドルイトス・P・レイヴァン

「出力マックス。俺はヘベルメスと同化しているがあいつはいない。故に気にする事は無いだろう。」


「何言ってやがる。相変わらず支離滅裂な奴だ。」


中の者がいないから、負担を考えずに術式兵装を使えるって事なんだろうが。

[分かっているではないか。]

まあな。

しかし出力マックスか……。

目を合わせていないのにどうだこれは。

とてつもなく不安な気持ちにさせられる。

何と言うか、方々から俺の名前を呼ばれているとか、そんな感じだ。

人なんて俺とドルイトスしかいないのに。


「召喚されたと同じだからか、体の調子は頗る良い。」


「そうみたいだな。喋り方がもうまともになっている。キャラ変えるのか?」


「それもいい。いい加減集団ストーカーにも飽きた……。だから、俺はお前に殴る!」


「結局変わってないじゃないか……!」


迫る右掌底を左腕を使い受け流す。1秒

が、右の膝蹴りには反応出来なかった。1.3秒

左脇腹に思い切りそれをくらってえずく。1.4秒

腹を押さえるその一瞬を取られ、俺は右上段回し蹴りを顔面にもろに受けて、1.8秒、体が180゜回転し、更に地面で顔面を強打した。2秒

ぶっ倒れた所に、腹をサッカーボールキック。2.3秒

再びえずく。2.4秒

ネリョチャギを極めるべくドルイトスは右脚を上げるが、そこを見逃す程俺も馬鹿じゃないし、この程度のダメージで反撃出来ない程やわじゃない。2.7秒

両手を地面に付き、体を回転させ足払い。2.8秒


「な……!」


足払いしたが、なんだこれは!

屋久杉でも蹴ったかの様だぞ。

びくともせず、ドルイトスはネリョチャギを俺の腹、さっき膝蹴りを入れられた左脇腹に極めた。


「がっ!おえっ……!」


限界だ。

俺は吐いた。

続けざまに足を取られ、いや持たれた。

右腕だけ使って持ち上げられる。


「ぐ……。」


「久しぶりだ。こうやって人を逆さまに持ち上げるのは。」


「悪趣味、な野郎だ。……人を、げほっごほ!人を逆さまに持ち上げるなんざ、普通やらない。」


「仕方ないだろ。貴様は僕が持ち上げたいと思ったから持ち上がった。問題は無い。」


「問題しかねえよ!大体、“攻撃”も使わず人間を片手で持ち上げるとかお前は化け物か!」


「化け物だとしても人間だ。」


「うおああああ!?」


右へ左へ振られた後、俺はラックに投げ付けられた。


「あ、が……は……。」


これは痛い。

床に倒れる俺の上にファイルがぼとぼと落下してくる。

これも痛い。

綺麗に綴じられていた資料も床にぶちまけられてしまった。

誰が片付けるんだろうなこれと思いながら、一枚の資料を眺める。


「……これは。」


“ドルイトス・ポーカーレイヴァン”

“男、29歳(享年)”

“身長185,0cm”

“体重74,0kg”

“魔術師15年”

“適正審査850”

“得意とする系統、操脳、魅惑、水”

“不得意とする系統、攻撃、強化”

“備考、悪魔同化(鹵悪魔『ヘベルメス』)”

これはどう見てもドルイトスについての資料だ。

横たわったまま、他の資料も見てみる。

ヤーチル、タスター、ハリル、デルト、ディート、ディオス、サナイ……。

……知らない名前ばかりだな。

それに、全部が全部魔術師という訳でもない。

最後の三人はワレラみたいだ。

と、何故か追撃してこないドルイトスに用心しながらもう一枚、ダメージが回復していなくて震える手で取り見る。


「……薫の資料だ。」


“如月薫”

“男、23歳”

“アダム発動時の瞳の色は銀色”

“身長167,6cm”

“体重53,7kg”

“Lv1Quick“光よりは遅い。でも速い”常人の約7倍のスピードで動く事が出来る”

“Lv2Speed“時間を加速させろ”自分の時間を早める”

“Lv3測定不能”

何なんだ一体……。

何でこんなもんがある。


「それは自分で考えれば答えは知れない。お前は真実に辿り着く。」


「げ。うわ!?」


しまった完全に油断していた。

再び足を持たれて逆さまに持ち上げられる。


「油断大敵。これは座右の銘がした方があまり悪くはない。」


「くそ……。いい加減にしろや!」


「ふん……。」


“攻撃”星五十を右腕に掛けてから、体を前後に揺らしてドルイトスの腹へと一撃与えた。

が、ダメだ。

こいつの華麗な“防御”の前では、ただの打撃は役に立たない。


「殴られようが私は動かない。てめえは動け!」


「な、うわあ!」


そして投げられる。

次はデスクの上を滑る様に俺は投げ飛ばされた。

筆記具やら紙やらが俺の背中に押されて床に落ちていく。


「あでっ!」


デスクの終着駅に着けば、当然俺は床に落ちる訳で。

さっきのラック衝突に比べれば大した事はないが、それでも痛いもんは痛い。


「畜生……め。人をそんなにホイホイ投げるもんじゃ……?」


何かおかしい。

何だ。

……悪魔。

はっとする。

これだけの失態を演じているのに、あいつから文句の一つも出ないなんておかしい。

悪魔、おい悪魔!

……反応無し。

ベレト……も反応は無い。


「まさか……。いや、だけど有り得ない。」


俺の腕や脚に不愉快な感覚、かつてドルイトスと戦った時に“操脳”を流し込まれたような感覚は、無い。

あの時、“操脳”を体内に流し込まれ、体から抜けない事で悪魔は奥に引っ込んでしまった。

そしてベレトが代わりに出てきた。

しかし今回は誰もいない。


「言った筈だ。僕は体の調子が悪くない。最盛期の力が今はあって昔は無い。」


「最盛期、だと。」


「“操脳”を気付かれないで流し込むなんて難くない。」


「……成る程。」


最悪の展開だ……。

あいつと目を合わせないで戦うのも、反撃に移るならこのままでは厳しい。

悪魔かベレトにまた目の代わりをしてもらおうと思っていたのに。

……いや、この程度の逆境はあの旅の中で何回もあった。

これも試練だと思って、甘んじて受けるべきなんだろう。


「……集約、結合、実現。影に形を。“影の王冠”。」


術式兵装自体はなんら問題無く使える。

つまり問題ナッシングだ。


「問題ならある。君は“影の王冠”で俺に一撃すら与えられなかった。考えてみれば、M92Fの発砲でしかお前は僕にまともな攻撃が出来ていない。だが、今あの玩具は持ってない様だ。」


「だったらどうした。あれからどれだけ経っていると思ってんだ。あんたの時間は止まったままだが、生きている俺の時間はその針を止める事は無かったんだ。」


……時間を止めた原因は俺なんだけどな。


「何時までもあの時の俺じゃない。それを、今見せてやる。」


「良いだろう。」


ドルイトスが構える。

徒手空拳の相手に刃を以てして対峙するとか、この時点で既に俺は甘えていると言えるだろう。

しかし、あいつはそれでも強い。

術式兵装にばかり目を向けてしまうが、“攻撃”を殆ど使えないのにあの身のこなし。

そっちこそ、真に注目しなきゃならない事なのかも。


「……何時までも俺はあの時のままじゃない。刮目しろドルイトス・ポーカー・レイヴァン。そして愛星芽部。これが、悪魔の力だ。」


『単純なる破壊の力。“武器”』


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