vsジェイカー・リットネス
「……紳に話は聞いていましたから驚きません。」
「えーつまんないなぁ。」
「何をしに帰ってきたんですかめ―――」
「ありゃりゃぁ?あたしジェイクに言ってなかったっけ?」
「はい?」
「あたしの地位についてよ。」
地位……。
「成る程。合点がいきました。ライノセンスは嘘を吐いていた訳ですね。」
「そうよ。あいつとはエジプトとかロシアとかでちゃんばらはしたけど、決闘なんてしてない。なのにあいつときたらぁ……。ホント、ぶった切らなきゃあたしの気が治まらないわよ。ぷんすかぷんよ全く。」
「“慄然する十二の咆哮”をぶんぶん振り回さないで下さい。どなたかの車がお釈迦になってしまう。」
「そうならない様にしたいならさぁ、さっさとジェイクも構えてよ。」
「……はあ。」
仕方ないか。
「天高く炎立つ。天蓋を焦がす灼熱の天国“炎の柱”。」
「わぁー熱い。」
「余裕ですね。」
「当然でしょ。」
と、なんの前触れもなく女は突っ込んできた。0.3秒
“慄然する十二の咆哮”による凄まじい早さの斬撃。0.4秒
ま、私は反応出来ますがね。0.4秒
“炎の柱”と“慄然する十二の咆哮”が激しくぶつかり合い火花を散らす。0.5秒
「なはははぁ。流石メタトロンの剣ねー。メルトロスの一撃を普通に受け止めるなんて。」
「当たり前、でしょう。こちらの天使も神を冠する……者なのですからね!」
刃を振り抜き女から距離を取る。
「“慄然する十二の咆哮”。使用者に十二の力を与える大剣ですか……。噂に違わぬ強さです。」
「ありゃりゃぁ。あたしジェイクにメルトロス見せたことなかったけ。」
「ないですね。」
「うわぁーそれはごめんね。」
「別に謝る必要はないのですが……。」
「ですが?」
「いえ、これはまだ続けるんですか?」
「あ、そうだぁ!アゲロス使ってよ!」
「……。」
この人の話題転換には付いていけない。
何故ここで“契約の天使”が出てくるんだ。
「オリハルコン着るからさ、使って使って使ってよー!」
「別に私は構いませんけど。」
「やったぁ!絶大的最高防御神。“|規律に纏いし堅牢なる装甲”。」
「はあ。降り注ぐ契約の対価。“契約の天使”。」
「うわぁーい!すごー―――」
女の歓喜の声も最後までは聞こえなかった。
……恐らく、光の矢、火の矢、重力の矢が雨霰と降っているあの空間で、彼女ははしゃいでいるんでしょうけど。
「……。」
気配が無くなった。
「やれやれ。彼女は一体何をしに私の前に来たんだ……。」
因みに知っているとは思いますが、私の家と呼べる物はW.W.Sの一室です。




