vsセナリア・ベイグラント
「……どちら様かしら。いえ、私はそれ以前に家の防犯システムについて問わなければいけないのかもね。」
「いやいやぁ。そんな事なかったよ。そりゃぁもう大した防犯システムだったからね。」
目の前に現れたのは小さな女の子だった。
「そう。じゃあそれについてはどうでもいいわ。貴女が何者かという事もどうでもいい。私が問いたいのは、何故私の至福の一時であるアフタヌーンティーを邪魔したかという事。それだけよ。」
「セナリアの力を知りたいからぁ。ただそれだけなんだけどダメかなぁ?」
「良いでしょう。切り裂こうか、腐る断絶。“多角鋭式六頭霊影刃”。」
右手に持つ物をティーカップから“多角鋭式六頭霊影刃”に変える。
[んー……。]
何よ。
[逃げた方がいいかもしれない。]
あのね、私だって目の前の人が強い事くらい分かってるわ。
でも、アフタヌーンティーを邪魔されて、それを看過出来る程私は人間出来てないのよ。
[何と言うかまあ……。安い理由だ。]
煩いわね。
戦う理由なんていつもそんな物よ。
肩がぶつかったから相手の国を滅ぼしたなんてよく聞く話でしょ?
[確かに。]
「そうかなぁ。肩がぶつかったから相手の国だけじゃなくてその周囲の国もぶっ潰すでしょ。」
「そんな面倒な事しないわよ。それより、貴女も武器を構えたらどうなの?まさかそのまま戦う気?」
「んー。セナリアってC.D.Cの中で一番弱いでしょ?メルトロスで攻撃したら死んじゃわないかなぁ。」
「確かに。メタトロンやベレト、カマエル、それに悪魔と同化している人と比べられたらさすがに形無しよ。あ、勘違いしないで。サブナクが弱いと言っている訳じゃないの。……何にしても。」
そういう嘗めた事を言われて。
「黙っていられる程私は人間が出来ていない!」
“攻撃”も何も使わず女の子に切り掛かる。
これだけ見るとまるで私が変質者か何か見たいね。
「はああああ!」
「はぁ。絶大的最高防御神。“|規律に纏いし堅牢なる装甲”。」
ごてごてした、これは……金色……?の鎧?
[げええええ!やばい!斬るなセナリア!]
は?あ……!?
「ああ!?」
「ひゃぁー女の子らしい悲鳴だぁ。そそるねーなはははぁ。」
“多角鋭式六頭霊影刃”が……砕けた。
攻撃されたのなら、いやそれも有り得ない事ではあるのだけど、砕けるのも分からないではない。
だけど……今私は攻撃したんだ。
なのに、砕けるなんて。
「あちゃちゃぁ。サブナクの言った通り止めときゃ良かったねセナリア。可哀相なサブナク。今彼の体は裂かれる様な痛みに覆われているでしょうね。」
「く……。」
何なのよこいつは……!
[“規律に纏いし堅牢なる装甲”……。オリハルコンっていうこの世で一番堅いと言われる、物質を知っているか。]
サブナク……。
取りあえず大丈夫そうね。
[まあ、な。これだけの痛みを感じるのは初めてだが……なんとか。とにかく、あれはオリハルコンで出来た鎧。あの術式兵装を持つ者とは、ずばり神悪魔であるロスト―――]
「まぁこんなもんよね。貴女じゃ私に勝てない。けど安心して。」
「……何をよ。」
ニヤリと笑いながら、そして私の耳元で少女は言う。
「ピー時は、ピーしてあげるからぁ。」
「……!」
思わず後ずさろうとしたが、その前に少女が5m程後ろに移動していた。
「大丈夫よ。誰も知らない誰も言わない誰も聞いていないからぁ。じゃぁばぁいばぁい。またね。」
女の子は消えた。
「……何なのよあいつは!」
……知ってるかもしれないけど、私の自宅は第一地区にある。




