深部に至るは全てを知った(真)
切り落とした。
……つもりでしたが、やれやれ一体どの様な技を使っているのか。
私の“炎の柱”は、轍の首を斬りはしたが、落とすには至らなかった。
しかしそれにしても、常人なら既に死んでいる怪我だ。
だのに奴は普通に立って私を見ている。
「な゛るほど。矢が降ってぎで、わだしの腕をおとじだ訳か。」
「そして続け様にお前の首を落とす算段だったが、やりますね。」
死にはしないが血は出る。
それが口にまで上がって轍が喋るのを阻害する。
しかしそれでも苦しそうな風はまるでない。
「ふん。うっどうじい血だ。いっそ、ぷっ。いっそ一度死んでやろうか。」
「そんな事はしなくてもいい。殺すからな。」
「……全く。今の様子を更月涼治に、みぜてやりたい。」
「更月君に?それは結構どうぞどうぞ。」
……彼が根本に抱えているであろう事に比べれば、私の内面の問題など軽い。
ばらされた所で彼は引いたりしないだろうし。
「ワレラは体を改造出来るんだろ?腕を生やすなり首を直すくらいしたらどうだ。」
「残念ながらそこまで便利ではない。第一、そんなこどが出来るならワレラに魂補充など必要無いだろう?」
言われてみれば確かに。
「この体の良いところはそれなりにあるが、そのうぢの一つ、血が流れても死なないという物。これは素晴らしい。」
「人外ですからね。それくらいの事はしてくれないと退屈です。」
腕が無くとも“千刃の谷”は恐らく使えるだろう。
早めにまともな死を奴にくれてやらねば。
「取りあえず一度殺します。中々恥ずかしいのであまり口にしたくはないのですが……。」
[……恥ずかしいとか言わないでよ。]
私は羞恥心の塊ですから。
愚痴を言いつつも“炎の柱”をゆっくりと振り被る。
矛盾しているがあまり気にしない様に。
「灰燼となって消えろ轍。“星の火”。」
頭上高く掲げた剣を思い切り振り下ろす。
剣が地面に当たるか当たらないかで止めると、凄まじい炎がその一閃より放たれ、両腕を失った轍醍醐を飲み込むべくその牙を輝かせながら一直線に奴へと向かっていく。
……そう言えばこの炎はどういう原理で放たれているんだ?
[振り被った状態になると、“炎の柱”は物理的な剣から純粋な炎の剣になる。その炎はこの場と僕の神域であるアストラルを繋げる物でね。それを振り下ろす事で宙に切り込みを入れる。]
つまり、その切り込みから炎が放たれるという事ですか。
[ま、そういう事だね。剣も確かに強力な物ではあるけど、“星の火”を放つ上ではただの橋渡しでしかないんだ。]
成る程。
未だ消えぬ劫火を眺めながら“星の火”について講義を受ける。
ま、言ってしまえばどうでもいい事ですけど。
[確かにどうでもいいかもしれない……。]
珍しいですね。
どうでもいいとか言わないでよ、くらい言うかと思いましたが。
[……やれやれ。やはり君も人間だな。]
……どういう意味でしょうねそれは。
[人外、それも現代に於て人外中の人外であるワレラを相手にするんだ。人間の常識は捨てなきゃ。不死身はね、殺し過ぎても殺し過ぎという事はないんだよ。]
そこまで言われてはっとする。
……果たして、私は“星の火”を放った時に手応えを感じたか?
答えは、言わずもがなだ。
何故なら、背後から“千刃の谷”を五発ほどもらったからだ。
「いって……!」
「……ほう。治癒力だけでなく、防御力もどうやら折り紙付きの様だ。祢々切丸による“千刃の谷”、しかも装甲の薄いであろう間接や首筋に当てたが、やれやれまさか当たるだけで終わりとは。」
確かに。
当たりはしたが刺さりはしなかった。
[僕の“神の代理人”を嘗めないでくれよ。これ単体ならば例えこの世界にある全ての核を集め同時に当てた所で生存する。それくらいの強度だ。]
そんな事になったら世は世紀末ですよ。
第一、今の世界に核はありません。
「鬱陶しい鎧だ。……仕方あるまい。ネクローシス、お前は俺に三つの取って置きを見せた。なれば私が特性を見せないのは武士道に反する。」
「別に必要ありませんが。」
「そう言うなネクローシス。せっかく見せてやるんだ。刮目して、見える様努力するんだな。『深部に至るは全てを知った』。」




