ネクローシス、武士と出会う
誰にも言わず私はW.W.Sを出た。
ウィールハートがライノセンス勢にいるにしても、やはりこれは私一人で片付けなければならない事だからだ。
そういうのはもういいよ、だとか、それ敗北濃厚フラグだろ、とか。
そんな事はどうでもいいです。
私は争いが嫌いだ。
好きな事は、過去の清算という壁を張った制裁のみです。
負けるために戦う事など一生しない。
[……そりゃ僕と同化したんだ。勝ってもらわなきゃ困るね。]
言われずもがな、ですよ。
普段と変わらない通り。
変わった事と言えば、第四地区というある種呪われた空間に行こうとしている者がいるという事くらいでしょうね。
擦れ違い様にぶつかりそうになった肩を引きながらそう考える。
「すみません。」
「いえ。こちらこそ前方不注意でした。」
と、軽く言葉を交わしてから歩を進める。
若者にしては中々礼儀がなった人だ。
恐らく18くらいか。
[人間も……中々捨てた物じゃない訳だね。]
そんな事は私の仲間を見れば一目瞭然でしょう。
[……ふむ。中々どうして……いや。]
何ですか?
[いや。別になんでもないよ。]
他愛ない話をしながらどんどん進む。
そして、それに気付いたのは電光社の通りを過ぎた辺りだった。
[やれやれ……。どうして面倒はあちらからやって来るんだろうね。]
面倒とは限りませんよ。
もしかしたらただの物好きか、若しくは勘違いか。
[勘違いの線は無いよ。あからさまに……こっちに視線を向けているからね。……バラしてるんだよわざと。]
何のために?
[さあね。やはり面倒と考える所だろう。]
言っている間に、私は第四地区に着いた。
「こんな使いきった台詞、勿論私は使いたくないのですが言わせてもらいましょう。“人の通りは無くなった。そろそろ出て来たらどうだ?”とね。」
「気付いていてくれて良かった。」
「……さっきの礼儀正しい若者じゃないですか。既に用は済んでいると思いますが。」
「ふむ。ま、顔を変えれば分かるかもしれん。この言い様だとまるで私が自意識過剰な様であまり褒められた物ではないが。」
スーッと、そんな感じに、いつ変わったのかを意識する間もない間に、若者の顔が見たことのある顔に変わった。
「おやおやこれは……。確かに面倒の方だった様ですね。」
「その通りだジェイカー・リットネス。“祢々切丸”。」
目の前にいた礼儀正しい若者は、一瞬の内に刃渡り2.2mの大太刀を持った轍醍醐に変わった。




