表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ExtraMaxWay-NaturaProdesse-  作者: 凩夏明野
第二章-日々日常-
17/84

CASE:御剣爽

人が生きていく上で大切な物はなんだろうか。

やはり、現実的に考えると、絆とか仲間とかそういう以前に“親”だろう。

親がいなきゃそもそも産まれる事は出来ないし、親がいなければ産まれた所で育たない。

親程生きていく上で大切、重要な“物”はない。

ならば、何故俺はそんな重要な“人”の事を“物”などと形容するか。

答えは簡単、俺は親の事を覚えていないからだ。

5歳の頃、アフリカの大地に忘れ去られてから、俺は親に会っていない。

そしてどうやら俺は過去に対する愛着はほとんど無いらしい。

だからと言うか何と言うか、俺は親の顔とやらを全くと言っていい程覚えていない。

まあそんな細かい事はどうでもいい。

んじゃま、短くなるかもしれんが俺の話を聞いてくれ。

5歳。

幼い。

記憶力はほとんど無いと言ってもいい年代だろう。

あったとしても微弱な学習能力くらいだ。

しかしだからと言って、こんな事は有り得るのだろうか。

5年、少なくとも4年、育ててくれた、剰え親だったという人二人の存在が朧になる事は、有り得るのだろうか。

答えは分からない。

記憶力は人によりけりである。

親として子に向ける愛情も人によりけりである。

だとするならば、やはり、俺が彼らの事を覚えていない事は、案外あっさりと有り得る事なのだろう。

それは良いとしよう。

もう一つの方がどちらかと言えば重要だ。

聞くところによると、俺は5歳の頃アフリカで紳に拾われた“らしい”。

そして俺は、日本人貿易商の子供“らしい”。

それらの事を俺は明確に覚えていない。

それは酷くおかしい事ではないだろうか。

そんな大事、忘れたくても忘れられる物じゃない。

紳に聞いても然りだ。

あいつは俺をアフリカで拾った、そして俺は日本人貿易商の息子だった、と。

その結果しか知らず、過程は空の彼方だ。

しかし、あいつはそれをおかしいとは感じていない。

それは当たり前の事ではある。

奴が“紳士”だった頃を、奴は覚えていない。

俺と年が変わらなかった事も。

俺は覚えている。

何故なら権限者だったから。

全く、こんな中途半端な力、残されても迷惑だ。


「どうかしましたか爽?」


「ん?ああ、いや、別に何でもない。……ところで、神杉紳。」


「はい?なんですか改まって。」


「お前さ、自分の前の名前、というか呼び名って覚えているか?」


「前の名前、呼び名、ですか?それは前世のという事でしょうか?」


前世か……あながち間違えではない。

間違えではないが、大いに間違っているとも言える。

実際は死んでいない状態で此処まで来ている訳だし。

そういう意味で、俺達に前世なんて無い。

あったとしてもそれは、俺が権限者になるまえの話で、明確な答えなんて出せない。

ならば質問などそもそもするべきではないだろう。

問いの対は答え。

双極に於て、実際は対ではない不完全の愛でる対象。

これが問いの対が問いならば、それは史上に於て最も憎むべき物となる。

俺はそれを知っているが、紳士はそれを知らない。

そしてまた、“剣”もそれを知らない。

ならばこう言うしかないだろう。


「そういう事になるかな。」


「ふむ。私は前世という物を信じてはいますが、どうでしょうね。私が覚えていないのであれば、それは恐らく、覚えていたくなかった事なのでしょう。」


「成る程。」


それは正しく、そして答え、対である。


「……でもさ、俺は知ってるんだ。お前の前の呼び名も、俺の前の呼び名も。」


「ほう。それは興味深いですね。聞きましょう。一体何と言う名だったのですか?」


その問いに、対を用意するべく俺は答えを述べる。


「お前は紳士で、俺は剣。どうだ?理に敵ってるだろ?」


当然言った所で紳が思い出す訳ではない。

だがいいんだそんな細かい事は。

いつかまたあの世界に戻った時、そして今。

この孤独を少しでも拭い去る事が出来るのなら、俺はそれでいい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ