表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ExtraMaxWay-NaturaProdesse-  作者: 凩夏明野
第二章-日々日常-
16/84

CASE:セナリア・ベイグラント

そうね。

たまには過去を顧みるのも悪くないわ。

あれは私が10歳の頃、父さんからサブナクを受け継いだ日。

それ自体に別段語るべき事はない。

今まで何回も繰り返されてきた事が、私にも回ってきたというだけだから。

サブナクと同化して、話して、終わり。

問題なのは、語るべきなのは、その3年後、つまり私が13歳の頃。

2222年、フォーカードじゃないけど綺麗な並びの年の、これまたツーペアじゃないけど2月2日の事。

仕方ないから話しましょう。

貴方の■■■を腐らせる様に。

今更だけど、貴方って不満はないの?

[む?何に対してだ?]

この同化についてよ。

何年前からか知らないけど、連続してこの世にいて、同じ家系の者と同化している。

詰まらなくない?

[セナリアは知らないかもしれないが、俺達悪魔や天使がいる世界には何もない。俺にとってはだが、あんな所人間が定義する所の地獄だ。“退屈地獄”。無駄に意識があるだけに時間の経過を肌で感じてしまう。だから、俺にとってはこの世の方が心地好い。]

そう。

貴方達も結構大変なのね。

それで、後者の質問への答えは?

[意識があると、やはりと言うか何と言うか、長年付き添っていたり見ていたりする物に愛着が沸く。それは俺達の様な者でも同じ、だと俺は思っている。]

へー。

それはなんだか悪くない気分にさせてくれるわね。

愛って良いわよね。

五十音の最初の二文字しか使ってない。

つまり“あい”ってこの世に於ける初めてなのよ。

もう超愛したい。

[そして横着な訳だな。]

合縁奇縁。

[何にしても、これこそ3年も経って今更だが、これからよろしく頼むぞお嬢さん。セナリア、これから君が何をしようと、死ぬまでは近くで見守り愛着を持つ。嬉しい時も哀しい時も楽しい時も怒れる時も、如何わしい事をする時も。]

……変態。

私はジトッとした目で見えないサブナクを睨んだ。

[はっは。変態だと?如何わしいで何を連想しているんだ。]

殺すわよ。腐らせて。

[はっはっは。与えた力で殺されては俺も敵わんな。時にセナリア、俺は先程まで寝ていたので知らなんだが、一体何処に向かっているんだ?今日は休日でW.W.Sに行く必要はないのだろう?]

ええ、そうよ。

W.W.Sに行くわけじゃない。

今からW.W.Sの脇の未成年女子寮に行くのよ。

[……ほう。]

殺、す、わ、よ?

[話を続けてくれ。]

もう。

えっとね、私の親戚、と言ってもかなり遠いのだけれど、テーゼスタって子がいるの。

その子のご両親が亡くなられて家が養女にする事になったのね。

……養女を言い直したら消すから。

[……続けてくれ。]

それで普通学校に通わせる話だったんだけど、一応適正審査を受けさせたの。

そしたら何と100超えててね。

と言う訳で急遽W.W.Sに入学させる事になったの。

[ほう。それは分かったが、何故寮に入れるのだ?]

話を先取りしてくれて助かるわ。

何で寮に入れるかって言うと、遺言なのよ。

テーゼスタのご両親のね。

『拝啓スミス・ベイグラント様。我々の命がもう長く無いことは御存じかと思われます。そこでお頼みしたい事があります。それは一人娘のテーゼスタ・ストルクムの事でございます。まだ5歳、施設に入れて育てるのは、誠に私事ながら忍びない限りです。どうか、我々の亡き後、御迷惑とは存じ上げますがどうか、テーゼスタの面倒を見ていただきたい所存にございます。また、普通学校に通う場合も、万が一W.W.Sに通う事になった場合も、テーゼスタは未成年女子寮に住ませたいと思っており、既に先十年の家賃は支払い済みでございます。どうか、我が愛しの娘の事をお願い致します。敬具。』

と、父さんの所に手紙がね。

その後1年経たない内にテーゼスタのご両親は亡くなられた。

[何故死んだ?手紙の内容から察するに、余命を悟っていた様だが、病か。]

いいえ。

それについて“お父様”は何も答えてはくれなかったわ。

ただ、ご両親は魔術師だった。

そこから推して知るべしといった具合ね。

[ふむ。しかし、結局その者達は何故寮に入れたがったのだろうか。]

さあ……。

話を最初に戻すとね、私は今から彼女の部屋の下見と必要な物の買い物をしに来たのよ。

[君は変わっているな。]

ん?

何が?

[大金持ちの息女とは思えない。こんな七面倒な事は召し使いにでも任せておけばよかろう。]

良いのよ別に。

どうせ暇だし、それにこういう体験も後に役立つかもしれないし。

[そんな物か。]

そんな物よ。

と、話している内に未成年女子寮に着いた。

やっぱり二“人”だと違うわね。

その後、部屋の掃除をしたり、必要最低限の物を注文したりで時間は過ぎて早17時。

日は傾き、赤い光がカーテンの無い窓から差し込んで来る。


「うん。割れながら良くやったわね。ピッカピカよ。」


[確かに。何故か至る所に置いてあった皿達が“割れながら”もよくやったと思う。]

“我ながら”。

とにかく、これで基本的な準備は完了。

今日はこの辺で帰りましょう。

[……早く帰った方がいい。何やら不穏な空気を感じる。迎えを呼ぶのもいいかもしれん。]

不穏な空気?

[ああ。俺の杞憂かもしれんがな。]

……まあ信じてみましょう。


「<芹沢さん。すまないんだけど迎えを寄越してもらえないかしら。>」


「<承知しましたお嬢様。>」


一種デジャヴュ、一種正夢の様な会話をしながら寮の外に出る。


「……誰。」


「知らないのは当然だ。俺は君に名乗った覚えはないし、俺の情報がそう簡単に漏れるとは思えない。つまり、君が俺の名前を知らないのは当然だ。」


長ったらしい。

でもどうしよう。

この人絶対強い。

[逃げるのが最良の方策だが、それは難しそうだな。]


「……何か用ですか。」


「用だ。わざわざ目の前に出るくらいだからな。用がある以外に他ない。」


「では簡潔におっしゃって下さい。私ももう暇じゃないんです。」


「は。よく言われるんだよ。“お前、間が悪すぎる。”って。」


やれやれといった具合に手を上げる男。

……どうすればいいのよこれ。


「まあいい。用件は一つだけだよお嬢様。サブナクを渡してもらおう。」


「嫌ですバイバイ変人さん。」


すたこらさっさと、男の隣をとっとと通りすぎて門へ急ぐ。

男はどうやら、こちらを見ている様ではあるが、だがしかし、こちらを追う気はないらしい。

[こちらをニヤリともせず見ている。不気味な奴だ。]

……何にしても、迎えを呼んでおいて良かったわ。

あんな変な奴に追われたら嫌だものね。

門の前に到着すると、既に車が来ていた。


「ごめんなさいね芹沢さん。」


後部座席のドアを開けつつ、運転手に詫びを入れる。


「いいえお嬢様。この程度おちゃのこさいさい。」


「!」


運転席にいたのはさっきの男だった。

そして後部座席に運転手である芹沢さんがいた。

気絶している。


「さて、それで何処までドライブすればいいのかな?海まで?それとも山まで?若しくは地の果て、デッドエンドまでかい?」


「何すかした事言ってるのよ変人さん。私が望むのは芹沢を起こす事。そして貴方が此処から出ていく事だけよ。」


「ふむ。それは出来ない。だってサブナク欲しいし。」


「ち……。」


思わず舌打ちしてしまった。


「もういい。貴方、鬱陶しいのよ。切り裂こうか、腐る断絶。“多角鋭式六頭霊影刃”。」


「お、すげえ。」


上等の腐食の剣を前にして、感想はそれだけだった。


「……何よ。もっと驚きなさいな。詰まらない人ね。」


「驚いている。君がそれを使えている事にね。本来サブナクは君の様な青二才が使える様な悪魔じゃない。」


そうなの?

[さあどうだかな。]


「しかしまあなんだ。剣を構えての話し合いなんて俺は好きじゃない。■■■■■■■■■。“■■■■”。」


「え?」


そう。

この出会いは私にとって、それこそ■■の■■であり、それと同時に、■■■の■■でもあった。

……私は。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ