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ExtraMaxWay-NaturaProdesse-  作者: 凩夏明野
第一章-得難いは愛すべき焔業-
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得難いは全てに説き伏す烙印(真)

「っと。綺麗だなその花火。」


爽が鎌、“得難いは全てに説き伏す烙印”……長いな。

まあその鎌だ。

それを振るたび、きらきらと火の粉が舞っている。

とても綺麗だ。


「この状況で挑発出来るなんて結構やるな涼治。」


「いつでも余裕を持つのが大事だって思ってるからな!」


“影の王冠”を真正面に斬りつける。

左手の『凪』で軽く防がれる。


「う、くそっ!」


鎌で引っ掛けられて“影の王冠”が弾き飛ばされた。


「貰ったぜ。」


「どっちをだよ!」


解除、再召喚。

振るわれる鎌を再び右手に戻した“影の王冠”で防ぐ。

鉄と鉄ががっつりがっちりぶつかり合うと火花が散る訳だが。

鎌が散らせる火花も合わさりかなりド派手に散った。


「……成る程。命を貰うってのと剣を貰うってのを掛けた訳か。上手いな。」


「御名答だが、鍔ぜり合いっぽい事やってる最中に納得する事じゃないな。」


お互いに刃を振り抜き弾きで距離を取る。

手を抜いているのか、刃自体にまるで力を感じない。

それはお互い様な訳だが。

別に殺し合いに興じている訳じゃないからな。


「聞いていたよりやはり良い。頗ると言ってもいいくらいにな。センマイカを殺したってのは聞いてたから期待は当然していたが、斜め405゜くらい良い。」


「45゜って言ったらどうなんだ。」


「一周回って更に45゜格が上がってるって言ってんだぜ?素直に褒め言葉として受け取れよ。」


分かりにく過ぎる褒め言葉だぞそれ……。


「ほら、次も躱すなり避けるなり弾くなりしろよ。見えやすい様にはしてやるから。『鎌鼬』。」


左手の刀が振るわれる。

と、そこから斬撃波が生じ、俺に向かって飛んできた。

なんて、ゆっくりと考えているだけの時間はなかった。

俺が取った行動はシンプルなたった一つ。

躱して避ける事だった。


「得体の知れない物を真正直に受けることはしない。」


「良い判断だ。俺だってそうする。でも変な話だよな。」


「何が。」


「万人が思いつく策ってのは愚策だそうだ。つまり、さっき取った策は愚策な訳だ。けど実際は最良の結果を収めた。じゃあこの言葉は間違えって事になるのか?」


「おお。成る程。確かにそれは矛盾している。その言葉を最初に言った奴をとっちめられる。」


「それは良い権利を得た。『鎌鼬』三連。」


再び、いや三度(みたび)と言うとなんかしっくりくるな。

見えにくい斬撃波である『鎌鼬』が三つ放たれた。

愚策も二度三度続けては面白くない。

一つ目、“影の王冠”で斬りつけてみる。

完全には消せていないのか、左肩と右脇腹を切られた。

なので二つ目は“影の手”で包み込んでみた。

よし、次は上手に出来ました。

三つ目は面倒なので避けて躱した。


「そう。最初にやった事こそ愚策だ。でもよく考えればそれも結構万人が思いつく事だよな。前言撤回だ。万人が思いつく策は愚策、とは限らない。これを最初に言った奴は合ってもいるし間違ってもいる。つまり俺はそいつを責められないし責める事も出来るって訳だ。」


「それは残念だったな。」


「本当にだ。“烙印”。」


「おお……更に綺麗。」


鎌の刃を中心に真っ赤な火が渦巻いている。

かなりの勢い、かなりの火力の様に感じるが、熱くもなんともないのはどういう訳だ?

[あの火、“烙印”というのだが、あれはこの世で使う火としては最も最悪な物だ。]

最悪な?

[あれは物理的に何かを燃やすという事は出来ない。精神的焼却能力のみを有する稀有な火だ。貴様は今“烙印”を綺麗だとしか認識していない。だから熱くないのだ。]

成る程納得。

なんかお前最近説明しかしてない気がするな。

[貴様とは話し飽きた、という事ではないか?]

なんで疑問文なんだ……。


「“烙印”はお前の体を焼く事は出来ない。出来るとしても中の者を焼く事くらいだ。」


「……それ十分凄いから。」


「俺が言いたいのは自慢じゃなくて警告だ。鎌に触れるなよ。触れれば下手すりゃ中の者が帰っちまうぞ。」


「それは困るな。振るわないでくれ。」


「無理だな。」


爽が正面に向かって突っ込んで来る。

“影の王冠”でまともに受けるのは危険そうだ。


「“影の手”!」


“影の手”で鎌の刃を捕え―――


「っ!?あっが……!うわああああああ!」


「……話はちゃんと聞いてろよ涼治。」


熱い……!

腕と脚に激痛が走る。

火が皮膚を舐めるように、また、体内に侵食するように。

走る走るよ痛みは走る。

何だよこの痛みは……!

[そんなに痛いか。]

痛いよ!

それこそ今すぐ切り落とした方が楽なくらいに痛い。

[それは貴様の思慮の無さに対する対価だ。甘んじて受けろ馬鹿者。]

はあ!?

[御剣爽は中の者を焼くと言っていただろう。それを“影の王冠”でまともに受けるなど愚者のやる行いだ。]

あ……そういえば。

[全く。取りあえず“影の王冠”を解除しろ。貴様は腕や脚を直接斬られた訳じゃない。大城毬の考えを肯定する様で若干面白いが、“影の王冠”を、武器を持つベレトは腕と脚に同化している。そのベレトの“影の王冠”を使って“烙印”を纏った“得難いは全てに説き伏す烙印”を受けたのだ。つまり、“影の王冠”を介して腕と脚に火が走った訳だ。だから、“影の王冠”を解除すれば痛みは消えるし、ベレトも燃やし尽くされる事は無い。]

……長い説明どうも。

絶対最初と最後だけで良かったと思うけどな。

愚痴を垂れつつも言われた通り“影の王冠”を解除する。

と、痛みは瞬時に消えてくれた。

ベレトは大丈夫なのか?

あれ程の痛みだ。

ベレトだって……。

[それは心配に及ばない。我々に痛覚などない。]

そうか。

そりゃ安心だ。


「涼治……戦いは数瞬が命に関わる。一瞬で判断出来なきゃ今の二の舞をいつまでも舞いつづけるぞ。」


「うん。相手がお前で助かったよ。」


「いや安心するのは早い。今から更に追い込むからな。」


そういうと、刀と鎌を左上に構えた。

そしてそれを同時に振るった。

すると『鎌鼬』に“烙印”が絡まった状態で飛んできた。

これを“影の王冠”で受ければさっきの二の舞だ。

速度はかなりの物だが、避けられない物ではない。

そしていい加減受けに回るのは面白くない。

いや別にラブ的なそれではないぜ?

無論俺はこれを『鎌鼬』が俺に到達する1秒足らずの間にモノローグとしている。


「“攻撃”星十。全て脚へ。」


『鎌鼬』をしゃがんで避けながら前に飛び出す。

次は俺から仕掛ける番だ。

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