第二話「ルール」
見たことがない色だった――
空なのに、空じゃないようだ。
夜と昼が溶け合ったような、深く濁った青と紫が混ざり合ったように、ゆっくりと流れている。
「……謎だな」
思わず、声が漏れた。
呟いた自分の声すら、少し遅れて耳に届く。
違和感が、じわじわと届いてくる。
ここは夢なのか。
それとも、あのスマホの画面に浮かんだ言葉――
『あなたは選ばれし者です』
あれは、現実だったのか。
考えても答えは出ない。
とにかく、動こう。そう思い、足を前に出した、その瞬間――
「その服装……どこから来た?」
背後から、低く落ち着いた声がした。
反射的に振り返ると、そこにいたのは一人の青年だった。
(……なんで知らない人に服装チェックされてんだ、俺)
突然現れた青年に視線が靴→腰→肩→首 と隅々まで探りを入れられている。
この世界の常識が分からない以上、下手なことは言えない。
「えっと……たぶん、遠くから…?」
自分でも曖昧だと思う答えだったが、青年はすぐには否定しなかった。
目を細め、まるで品定めするように、上から下まで視線を走らせてくる。
その視線は冷たい。
けれど、どこか人を突き放しきれない、妙な優しさも含んでいた。
「……そうか。名前を聞いてもいいか?」
胸の奥が、きゅっと締めつけられる。
(本当の名前は、ただこうや)
言うべきだ。そう思ったのに、なぜか口が勝手に動いた。
「……ルーク・クロード」
口にした瞬間、不思議としっくりきた。
初めて名乗ったはずなのに、何度も呼ばれてきた名前のように、自然で、不自然のようだった。
青年は一瞬だけ目を見開き、すぐに小さく頷く。
「そうか……今ここに来たこと、誰にも言うな。言ったら……言ったら、この世界が“お前を消す”」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥で何かが静かに動き出す。
この出会いが、ただの偶然ではないことを――
ルークは、まだ気づいてすらいなかった。




