01 旅の始まり
血っ、血……が出てる。
利き手で、左肩の突起した骨を握る。
痛みからの逃避感からか無意識の内に俺の肩を握る力は強くなっていた。
蹂躙され、崩された家かげで、震えるように静穏が訪れるのを待っている。
熱い……
触れる身体は妙に暖かい。
ドクドクと動脈がまだ動きを止めることなく動いている中、静脈はドス黒い血を吐き続けている。
もう、死ぬのか……
『大丈夫だよ』
!?頭の中にそんな声が流れてきた。
その声、それは聞いた事のない声であった。でも、親切心を持っており、俺を手懐けるように施しを受けさそうとするようだった。
そんな怪しい奴なのに俺は、骨の髄から何の疑問も持たなかった。この場には誰も居ないのに、その声は聞こえた。
懐疑性を待ち合わせない俺にとっては、それが母親の胸の中のような安心感を覚えた。
しかし、それだけでは何の効力を持たなかった。
肩ではない。他のどこか出血している身体の一部が、打撃を内側から受けたような痛みが走る。
そんな俺の身体に左半身から、全体を覆うように包まれた感覚が俺を襲った。
もう循環した思考回路が存在していなかった俺は情報を受け取るだけで、何も考えることはない。
血の音だけは激しく耳の中に漏れ出し、隠れ家の外にある襲来者の足音も、誰かの生を諦めた断末魔も何も聞こえなかった。
――俺は眠るように意識を失った。
隣の存在しない何かに身を預け倒れ込むように。
「俺を誘って何になるんだ……?」
俺の前で、仲間への勧誘してくるのが一人いた。
魔法の杖らしき物を持った十の年にも満たないような少年だ。遊びに来たような冷やかしのガキと言っても良い。
杖も然程高価な物には見えず、丈も三十センチ程度。しかもそれを矢筒に入れている。
最先端にある宝石は磨かれており、丁寧に扱っている目に見えているが、管理環境がおざなりなのも見えている。
「だって、強いでしょ!?」
目の前のガキが言う。
「すまねぇ、まだ子供だろ、もう少し成長してから、また誘ってくれ」
「そぉ、……分かった」
少年は悲哀の顔を浮かべ、村の麓へと帰っていった。
少年は山の中腹でも整備されている道を、とぼとぼと歩いっていった。
振り向くことなく、何も思わなかったのだろうか。
「……また一人になってしまった!!クソ、俺まだ仲間居ないんだよ……」
「早く仲間が欲しいのに、何であんなガキ何だよ。もうちょと年がいっていれば良かったのにな」
俺の本心では仲間にしたかったが、ガキを養いながら、旅をするのは俺には厳しい。
俺はあの少年をガキと呼んでいたが、俺の歳は十六である。
しかし、俺の見た目は、濃い顎髭を携え、髪も長いこと切っておらずボサボサだ。
側から見たら、十六には見えないだろうな。
あの少年にとっては、お兄さんのはずなのに、あの少年に俺、初めおじちゃんって呼ばれたんだぞ。
今の俺は思春期であり、モテるように身なりを整えるべきであるべきなのに、全くそんなことは気にしていない。
今の俺は、旅人というより浮浪者だよな……
俺――クロシャフルは山越えを行いまた旅へと出た。




