妄想の終わり〜エピローグ
食後。
シンディが、カヨに聞いた。
「Mrs. Tadokoro, how do you manage Mr. Tadokoro’s health?(カヨさん、どうやって田所さんの健康を管理してるんですか?)」
「Simple. Blood pressure three times a day. Calorie-controlled meals. No alcohol. Regular exercise(シンプルよ。血圧測定を1日3回。カロリー管理された食事。アルコール禁止。定期的な運動)」
「That’s amazing!(すごい!)」
シンディは、メモを取り始めた。
「I want to do the same for Toshiki(私もトシキに同じことをしたいです)」
「Good. He needs it(いいわね。彼には必要よ)」
「え、僕の管理もするの?」
トシキが、少し驚いた。
「Of course. Prevention is important(もちろん。予防が大事よ)」
シンディは、真面目な顔で言った。
「…分かった」
トシキは、あっさりと受け入れた。
(大丈夫か?ホントに大丈夫か?)
シンディ、いつのまにか、カヨの弟子。
俺は、この光景を見て思った。
(これ…)
(これ、二人に、親子で管理されるのか…?)
シンディが帰る前、カヨが言った。
「シンディさん、また来てね」
「Yes, of course! I want to learn more from you(ええ、もちろん!もっと学びたいです)」
「いい子ね」
カヨは、満足そうに頷いた。
シンディは、俺に向かって言った。
「Mr. Tadokoro, please take care of your health(田所さん、健康に気をつけてくださいね)」
「…はい」
「I’ll help Mrs. Tadokoro manage you(カヨさんの管理を手伝いますから)」
「…はい」
俺は、小さく頷いた。
(ダブル管理体制…)
シンディとトシキは、帰っていった。
カヨが、俺に言った。
「いい子ね、シンディさん」
「…ああ」
「トシキ、いい子を見つけたわ」
「そうだな…」
「あんたも、シンディさんの言うこと、ちゃんと聞きなさいよ」
「…はい」
俺は、小さく溜息をついた。
(ブロンド美女のお酌…)
(全部、幻想だった…)
(むしろ、管理が増えた…)
その夜、ベッドで横になりながら考えた。
ハリウッドでは、エマたちがカヨに夢中になった。
そして今、息子の彼女もカヨに夢中。
俺のささやかな願望は、またしても打ち砕かれた。
ブロンド美女。
でも、彼女が俺にしてくれたのは。
ビール没収。
ご飯半分。
健康管理のアドバイス。
ハーレム…ではなく、ダブル管理体制。
「健一、何考えてるの?」
カヨが、隣で聞いた。
「…別に」
「嘘。顔に出てるわよ」
「…」
「シンディさん、がっかりした?」
「…してない」
「してたでしょ。ブロンド美女がお酌してもらえるとか、妄想してたんじゃないの?」
「…」
図星だった。
カヨは、笑った。
「あんた、トシキの彼女にまで妄想なんて、懲りないわね」
「…うるさい」
「でも、まあ、いいわ。シンディさんがいれば、あんたの管理、もっと徹底できるし」
「…それ、嬉しくないんだけど」
「文句言わない」
カヨは、そう言って、寝返りを打った。
俺は、天井を見上げた。
(俺の人生、いつのまにかカヨ中心になったな)
(そして今、シンディも加わった)
(ダブル管理体制)
(でも、まあ…)
(それでいいか)
エピローグ
数ヶ月後。
シンディは、頻繁に家に来るようになった。
でも、目的はトシキだけじゃなく、カヨ、それから俺の健康管理だった。
「Mr. Tadokoro, did you take your vitamins?(田所さん、ビタミン飲みましたか?)」
「…飲んだ」
「Show me(見せて)」
「…はい」
シンディは、俺のビタミンケースを確認した。
「Good. You’re doing well(いいですね。ちゃんとやってますね)」
「…ありがとう」
カヨが、横で満足そうに頷いた。
「シンディさん、あなた、本当に助かるわ」
「I’m happy to help(お手伝いできて嬉しいです)」
トシキも、嬉しそうに言った。
「シンディ、すごいでしょ?」
「…ああ」
俺は、小さく頷いた。
(すごいけど…)
(彼氏の父親を管理するって、どういう状況?)
ある日、俺は講演から帰ってきた。
疲れていた。
家に入ると、カヨとシンディが待っていた。
「おかえり」
「ただいま」
「今日も講演?」
「ああ」
「お疲れ様」
カヨが、血圧計を取り出した。
「はい、測定」
「…はい」
ピピピピ…
「145/90、少し高いわね」
「疲れてるから…」
「言い訳しない」
シンディも、横から言った。
「Mr. Tadokoro, you need more rest(田所さん、もっと休息が必要です)」
「…はい」
「And reduce your stress(それと、ストレスを減らして)」
「…はい」
俺は、二人に挟まれて、説教されていた。
(ダブル管理体制…)
(恐ろしい…)
トシキが、側で笑っていた。
「父さん、大変だね」
「…うるさい」
「でも、いいんじゃない?二人に管理してもらえたら、父さんの健康、間違いないよ」
「…そうだな」
俺は、小さく笑った。
第一部 完
作品タイトル、あらすじなど、クセの強い自己満作者の、地雷臭がものすごい作品なのに最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
この後は、続編シリーズ「田所家とLAのストレンジピープル」の連載を開始します。
このシリーズは字幕版海外ドラマを小説で読むイメージを意識した物語を目指しています。英会話に興味がなければ、もちろん英語パートは読み飛ばしてくれてOK!
今後は週一更新になりますが、引き続きよろしくお願いします。
#「田所家とLAのストレンジピープル」第一話、第二話は、2/9の8時と20時公開、それ以降は、毎週月曜、8
時に公開します。




