You’re the story!
表彰式。
1位の選手が、金メダルを受け取る。
トシキが、銀メダルを受け取る。
3位の選手が、銅メダルを受け取る。
でも、カメラの多くは、トシキとカヨを撮っている。
「Kayo!(カヨ!)」
「Toshiki!(トシキ!)」
1位の選手は、少し寂しそうな顔をしていた。
トシキが、その選手に話しかけた。
「おめでとうございます」
「…ありがとう」
1位の選手は、少し笑った。
「君も、よく頑張ったね」
「ありがとうございます」
トシキは、礼儀正しく答えた。
でも、その後も、カメラはトシキとカヨに集中していた。
俺は、遠くでその光景を見ていた。
(これ、ちょっと気まずいな…)
(優勝者が可哀想だ…)
カヨも、同じことを思ったようだ。
記者たちに、言った。
「Please focus on the gold medalist. He deserves the attention(金メダリストに注目してあげて。彼が注目されるべきよ)」
「But Kayo, you’re the story!(でもカヨ、あなたがストーリーなのよ!)」
「No. The athletes are the story. Not me(いいえ。アスリートたちがストーリーよ。私じゃない)」
カヨは、きっぱりと言った。
でも、記者たちは聞かなかった。
翌日の新聞。
『カヨの息子、銀メダル!』
『ハリウッドを席巻した母の管理術、ジュニアオリンピックでも証明!』
1位の選手の名前は、小さくしか載っていなかった。
トシキは、新聞を見て、少し複雑な顔をしていた。
「父さん、これ、ちょっと…」
「…ああ」
「優勝した人、可哀想だよ」
「そうだな…」
カヨも、新聞を見て、少し眉をひそめた。
「メディアは、いつもこうね」
「…そうだな」
俺たちは、少しバツが悪い思いをしていた。




