I want to be like her…
その後、カヨの評判は、ハリウッド中に広がった。
『The Japanese Wife Who’s Changing Hollywood(ハリウッドを変えている日本人妻)』
ハリウッド・レポーターの記事。
『Kayo Tadokoro: The Life Coach Nobody Knew They Needed(カヨ・タドコロ:誰も必要だと知らなかったライフコーチ)』
バラエティの記事。
『How One Woman Brought Discipline to Tinseltown(一人の女性がいかにして映画の街に規律をもたらしたか)』
ロサンゼルス・タイムズの記事。
カヨは、一躍、ハリウッドの有名人になった。
でも、本人は全く興味がなさそうだった。
「健一、血圧測定」
「…はい」
撮影現場で、相変わらず俺の血圧を測っている。
「128/80。いいわね」
「ありがとう…」
周りのスタッフたちが、カヨを見ている。
憧れの眼差し。
「Kayo is so cool…(カヨ、かっこいい…)」
「I want to be like her…(彼女みたいになりたい…)」
カヨは、それを無視して、俺に言った。
「今日のランチ、ちゃんと食べた?」
「食べた」
「全部?」
「全部」
「偉いわね」
カヨは、満足そうに頷いた。
そして、去っていった。
俺は、一人、取り残された。
トシキが、横に来た。
「父さん、母さん、もう止まらないね」
「…ああ」
「すごいよね、母さん」
「ああ…」
「僕、誇りに思うよ」
トシキは、嬉しそうに言った。
「父さんは?」
「…俺も、誇りに思ってる」
「ならいいじゃん」
トシキは、あっさりと言った。
「母さんが認められるのは、すごく嬉しいね」
完全なるマザコン。
俺は、小さく笑った。
「お前、本当にマザコンだな」
「当たり前でしょ」
トシキは、誇らしげに言った。




