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史上最強の初恋  作者: えみお


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1-3

 トール=ハワード

 貧民街出身

 年齢は15才

 冒険者見習い

 ・・・受付に常備されている冒険者リストに記載されていた情報はそれだけだった。

 このリストにはギルド側で把握しているスキルや、達成したクエスト等が日々書き加えられ、更新されていく。

 それこそ、隣で呆けている超級冒険者様のページは、数多の情報が書き加えられ、最早辞書のような様相を呈している。

 それと比較すれば、現状、4行で事足りている彼のプロフィール・・・そして、今実物を目にして言えること。

 ソレは・・・彼が・・・少なくとも表面上は、ただの少年であることだった。

 概算で身長は170セルに届くかどうかといったところ。

 顔立ちは悪くない・・・が、まだあどけなさを残す。

 体つきも何処か頼りなく、まさに冒険者なりたての身体が纏うのは、ギルドから支給される革の鎧と小刀だった。

 結論・・・。

 釣り合っていない、何もかもが。

 トールとやらに失礼を承知で冷徹な評価を下した私・・・その横でデュランは頬を上気させながら、それこそ、初恋の女の子のような表情で彼を見ていた。

 ・・・どうやら、人違いではなさそうだ。

 私はリストを閉じ、静かにソレを置くと、彼女の耳に顔を近づけ囁く。


「ねえ、本当にあの子なの?アンタの意中の相手は?」


「そうだ、間違いない」


「どう見ても、アンタより年下よね」


「おそらくそうだろうな」


「そんでもって冒険者見習いっぽいし」


「そうだな」


「・・・本当にあの子なの?ほら、その横にいるマッチョメンじゃなくて?」


「違う。あの人だ、間違いない」


 冒険者として第一線で活躍するデュランの視力は並外れている。

 その彼女が断言するのなら、間違いないのだろう。

 ・・・間違いであってほしかったが。


「い、一応今リストで確認したわ。彼の名前はトール=ハワード。年齢は15。見たまんまの冒険者見習いで・・・貧民街出身よ」


「・・・そうか、やはりアソコの出か」


 薄々分かってはいたのだろう。

 デュランにとってネックとなるのは、やはりソコだろう。


「・・・知ってたの?」


「勘だ」


「・・・それでもアンタは」


「・・・ああ。彼が好きだ」


「・・・そう」


 貧民街という場所がデュランにとって、あまり宜しくないところであることには気づいていた。

 何気ない会話の中で、ちらとでもその話が出ると、彼女は露骨に眉をひそめるのだ。

 具体的に何があったのかは知らない。

 親しき仲にも礼儀あり。

 根掘り葉掘り尋ねることを、コミュニケーションとは言わないのだ。

 私は思考を切り替えた。


「よし、分かった。彼を尾行しましょう!」


「び、尾行?」


「彼のひととなりを知りたいの!字面追ってたって、その人の内面なんて分かりゃしないんだから」


「・・・私から頼んでおいてなんだが、随分と協力的なんだな」


「だって気になってきたんだもの!」


 まさか意中の相手が少年だとは夢にも思うまい。

 こんな悶々とした状態で放置されたら、明日以降の業務等に支障をきたしてしまう。

 史上最強とまで言われる友達の・・・おそらく初恋のお相手。

 正直、気になって気になって仕方ないのだ。

 それに・・・


「アンタだって知りたいでしょうが、トール君のこと!」


「それはそうだが、尾行は流石に・・・」


「何言ってんの!恋愛は基本攻めあるのみよ!」


「だからといって犯罪まがいの行為を行うわけには・・・」


 そうこう言っている間に、トールはギルドでの用件を済ませ、立ち去ろうとしている。

 対応した受付嬢に会話の内容を聞くのも一手だが、今は彼の後を追うのが先決だ。

 受付嬢は逃げないが、素性がほとんど知れないトールとは、いつ会えるか定かではないのだから・・・。


「ほら、デュラン!行くよ!立った立った!」


「・・・お前、こんな性格だったか?」


 手助けしているはずの友人に若干引かれつつあるものの、私は未だ尻込みしている彼女の手をとると、走り出した。

 今の自分の気持ちに、野次馬根性が無いと言ったら嘘になる。

 だが、友達に恋を成就させたいという気持ちが陰ることはなかった。

 デュランが私を引き留めるでも無く、唯々諾々とついてくるのは、内心、トール君のことが知りたくて仕方ないからだろう。

 でも、彼女の良心がソレを拒もうとしている。

 ・・・なら私の役割は、そんな彼女が動く言い訳を作ってあげることだ。

 悪い友達に力尽くで連れて行かされた・・・という理由。

 ソレを拵えてあげることが、今の私が不器用な彼女にしてあげられる1番のことだろう。

 私は、この行動が良き結果になることを祈りつつ、デュランの手を取り、ギルドを後にしたのだった。

 

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