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史上最強の初恋  作者: えみお


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5-4


『彼』の雄叫びは、湖を泳いでいたトールにもハッキリと聞こえていた。


「な、なんだ?今のは?」


 聞こえた先を振り向く・・・しかし、その姿を確認することは出来ない。

 しかし、数度その声を耳にしただけの新米冒険者にも、その声の持ち主が、常軌を逸した存在だということは理解した。

 

「アレは・・・ここら辺をたむろしているモンスター達とは、桁が違う!」


 そもそも、トールにとっては、ここにいる如何なる怪物達も、自身より遙かに強い猛者ばかり・・・。

 だが、この声の持ち主は、そいつらと比べることすら、おこがましいと思える程、異質な存在であることは、恐らく・・・間違いない。

 経験不足で未熟な冒険者である彼にも分かるほどなのだ。

 今までであってきたモンスターとは・・・次元が違う生き物であるいうことは・・・。


「なにか、嫌な予感がする・・・」


 トールはそれだけ言うと、再び泳ぎを再開した。

 何となく・・・さっさと、ここを離れた方が良い気がしたのだ。

 彼のこの手の勘は、悲しいかな、良く当たる。

 第六感とでも言おうか・・・彼の危機察知能力には目を見張るものがある。

 それは、貧民街という恵まれない環境で生活することにより、磨かれた技術なのだろう。

 冒険者という、常に死と隣り合わせの職業に就く人間にとっては、ある意味、これ以上無い程に恵まれた資質をトールは持っていたのだ。

 ・・・今までは、それを頼りに逃げに徹すれば良かった。

 しかし、今回は状況が違う。

 目的の『月下草』を入手しなければ、自分と自分の大切な者達の現状は悪くなるだけ・・・。 だから、彼は自らに備わるセンサーに逆らい、その場を立ち去るという選択肢を捨て、小島に向かって進むことを選んだのだった!


「頼む・・・今回は外れてくれ!」


 トールは、自らの直感が外れることを祈りながら、必死に水をかく。

 そして遂に、彼は小島に到着した!


「よし!着いた!」


 泳ぎ切ったことによる達成感が自身を襲うが、今の彼には、これに浸るだけの余裕は無い。

 頭の中で鳴り響く警報音が、より強く、激しいものに変わっているからだ。

 トールは島の中心部に足を向ける。

 直ぐそこに見える、青白い光。

 間違いなく、『月下草』だった。


「急げッ!」


 自身に活を入れ、全身全霊で駆けた!

 そして、目の前で淡く輝く『月下草』を摘もうと腕を伸ばした・・・




「・・・ッキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!」




 その時・・・上空から聞こえたその音は、『彼』の訪れを知らせるもの。

 音速を超える速度で空を駆けてきたことによる、独特の擦過音だった。

 トールは手を止める。

 上を見上げる。

 そして、知った。




「・・・間に合わなかった」




 自身の勘が当たってしまったことを・・・。

 



「グルォアオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」




 白い巨体は月の光を全身に受け、この世のどんな宝石にも劣らない輝きを放っていた。

『彼』は・・・ドラゴンは遂にその姿を現したのだった!

 トールは片手に持てるだけの『月下草』を根こそぎ引き抜き手中に収める。

 そして、湖面に向かって脱兎のごとく駆けだした。

 

「まだだ!まだっ!僕は諦めない!」


 この時のトールは、まだ、自身がターゲットになっている・・・という可能性は全く考えていなかった。

 上空のモンスターは月光の恩恵を受けやすい『この場所』にこそ用があり、そこに自身が運悪く居合わせてしまったに過ぎない・・・と思っていたのだ。

『彼』だって、自身の存在と比較すれば、比べるべくもないか弱き小動物である自分に、いちいち目くじらを立てて、挑みかかる必要など無い。

 だから、今すぐここから離れれば、何事もなく、彼の視界から消えることが出来る筈である。

 トールは岸に到着すると、水面に飛び込もうと振りかぶる。

 ・・・と、その時、彼は湖面の異常に気付いた。


「湖面が・・・光っている?」


 ・・・この湖は元々、月光の反射由来の神々しさを携えていた。

 だから、光っているというのは今更ではある。

 しかし、それを知っているトールが、尚もそう感じたのは、その輝きが、更に増しているように見えたからだった。

 一体、何故・・・?

 その疑念が彼の入水に待ったをかける。

『ダンジョンで発生した異常には、常に慎重をもって当たるべし!』という、冒険者のセオリーが働いたのだ。

 トールは原因の究明を一瞬で行った。


「湖面に、それ以外の異常は見当たらない・・・。なのに光度が増している。その理由は・・・?」


 ・・・・・・・・・。

 

「ハッ!」


 トールはとある可能性に行き当たる。

 そして、答え合わせの為、彼は視線を上に・・・上空に移動させた。




 トールの予想は当たっていた。

 だが・・・当たっていてほしくはなかった。




 巨龍の口先・・・そこに集約されるエネルギーの塊は、まるで小さな月のようだった。

 湖面の輝きが増した理由・・・それは、光源が増えたからであった!

 

「や、やばい!」


 トールは即座に湖に飛び込むとほぼ同時に・・・




 ソレは、地に放たれたのだった・・・。

 

 


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