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史上最強の初恋  作者: えみお


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22/34

5-3

 ・・・未熟な人間が、皮算用していた、その頃。

 そこから遙か先にそびえる、白亜の城で、1つの命が産声を上げた。

 

「・・・グルォ」


 ・・・といっても、『彼』は母の胎内から生まれ落ちたわけでも無ければ、卵から孵化したわけでも無い。

『彼』は無から現れる・・・というかたちで、この世に生を受けたのだ。

 当然、名は無い。

 だが、『彼』は自らの生きる目的を、誰に教えられるでもなく知っていた。

『彼』は周囲を見渡す。

 自らは人が玉座と呼ぶ場所に収まっている。

 そして、精巧な意匠が施された巨大な城の内部を観察し・・・気付いた。

 

「グルォ?」


 出口が無いことに・・・。

『彼』が自身に課せられた役割を果たすには、ここを抜けだし、外に旅立たなければならない。

 なのに、出口が無いとはこれ如何に・・・?


「・・・・・・・・・」


『彼』に備わった役割という名の本能は、その状況を解決する方法を見いだせないことに、次第に我慢できなくなっていった。

 焦り、不安、苛立ち・・・そして怒り。

 幼い『彼』は、それを抑制する方法など知らず、故に一刻も早い解決を求めた。

 彼は、瞳を閉じ自身を探った。

 自身は何者なのか・・・何が出来るのか・・・それをどう使えば、この危機から自らを救えるのか・・・。

 そして、瞳を開いた『彼』は・・・


「ウウッ・・・」


 と何かを胸に溜める様な仕草をすると、やがて・・・


「ウゴッ!」


 という声と共に、口から火球を吐き出した。

 城の天井に向かって吐き出されたソレは、予想外の威力で上空まで貫通する穴を拵える。 そして、『彼』は自身の作った出口を目指し、自らに生える、その小さな翼で飛び立ったのであった・・・。







 ・・・満月は『彼』を歓迎した。


「グルォ?グッ・・・グオオ!!!」


 その時、月から放たれた一条の光は、一般的な人間でもハッキリと黙視出来るほどのものだった。

『彼』はその光の恩恵を一身に受ける。

 すると・・・か弱さを備えていた身体は、みるみるうちに大きくなった。

 どんどん・・・どんどん・・・大きくなる。

 まるで際限をしらない自身の成長に対し、『彼』は一切動揺を見せなかった。

『彼』は知っていたのだ。

 これも役割であることを・・・。


「・・・ウウウウウウゥッ」


 やがて、月光が役割を終え、光線が消えると、そこには・・・




「ウオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!」




 自らの生まれた巨城・・・それを踏み潰さんばかりに大きくなった、巨龍がいた!

 白亜の城から受け継いだと言われれば、信じてしまいそうな真っ白な身体は、月光を反射すると、さらに鮮やかな白を見せる。

 

「グルッ」


『彼』はふと、とある方向を向く。

 そして、遠い彼方の、とある一点を睨み付けた。

 そして、『彼』は・・・


「グルゥオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」


 と雄叫びを上げると、そちらの方向に飛び立つべく翼をはためかせた。

 その風圧は、それだけで周囲の地形を変貌させる。

 何食わぬ顔をして生えていただけの草木なぞ、その翼の一振りで、根こそぎ飛んでいってしまった。

 親はいない・・・、つまり教わることは出来ない。

 しかし、生後間もない巨龍はというと、まるで、何度も繰り返してきたかの様なスムーズな動作で空に舞い上がる。

 そして、これまた凄い速度でもって、目的の場所に旅立っていった。




『彼』の目的・・・それは、愚か者の排除だった。




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