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史上最強の初恋  作者: えみお


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18/34

4-3

 そうしてシャルルの口から語られたのは、前日の風雨によってトール達が運営していた学び舎が壊滅的な被害を被ったこと・・・。

 そして、そんな状況を打開すべく、彼らは一刻も早くお金を工面する必要があることだった。

 それは、私・・・デュランにとっては、正に寝耳に水だった。


「そ、そんなことになっていたなんて・・・」


「フフッ、その反応からすると、全く想定していなかったんだね」


 事実を知った私の愕然とした表情を見て、シャルルは薄く笑う。


「彼はね、本当に必死だったんだよ。最早廃墟も同然・・・いや、そもそも廃墟だったのだから、この言い方は変かな?・・・ともかく、酷い有様になって、とても人が住めるような状況では無くなったあの場所で、それでもどうにか子供達を養おうと、母親と2人、懸命に努力していたんだ」


 きっと、彼はその一部始終も、下僕達に見張らせていたんだろう。

 下劣な・・・、と思う一方・・・私には、それを指摘する資格が無い。

 

(「私自身がやっていたことも、目の前のいけ好かない男が部下に命じてやらせていたこととなんら変わりないのだ・・・」)


 トールという少年の存在を・・・そして、貧民街での彼の現状を知った時点で、私には、いくらでも援助することは出来たのだ。

 それこそ・・・今の自身には財がある。

 私にとって『金』とは、銀行という保管庫に使われずに置かれているものであり、そこで働いている職員からすれば、紙の上の数字に過ぎないもの・・・。

 その数をほんの少し減らして、貧しい生活をしている彼らに分け与えることが、私には出来たはずだ。

 だが、私はしなかった。

 ・・・シャルルの話は続く。


「でもね、どれだけ頑張ろうとも、人は神にはなれないんだ。1つ、また1つと取りこぼす」


 取りこぼす・・・?

 一体何を・・・?




「私が知っているだけでも、もう既に2人の子供が亡くなったそうだ」




「・・・・・・・・・」


 私は一体何をやっていたんだろう?

 彼に好意を抱き、後を付け、実情を知り・・・そしてそれを無視した。

 見たい部分だけを抜き出しては好感を上げ、彼と過ごせるかもしれない未来を夢想する・・・その間にも彼はずっと、苦しんでいたのだ。

 誰かに助けを求めていたのだ。

 そして、それは私でも良かったはずだ。


(「私は知っている。本当にに助けを求めている人間は、その相手が誰で、どういった理由か・・・なんて下らないことに頓着しない」)


 それこそ、差し伸べられたその手が、自らの敵だったとしても縋り付く・・・。

 貧民街の中、トール達はそんな状況下で毎日を過ごしていたのだ。

 そして、私は彼が伸ばしている手に気付くことすら出来なかった。

 



 ・・・かつて、私が過ごしたのと同じような場所で、かつての私と同じように誰かに助けを求める声に、私は気付きすらしなかったのだ。




「・・・・・・・・・」


「そう、気付いたろ、デュラン」


 先ほどまでの感情を込めた語り口調から一転、元の調子に戻ったシャルル。

 そして、彼の牙は私の喉元に食らいついた。




「私は知ってるよ、君もかつてはアソコにいたんだろう?なぁに、別に俺はガウスと違ってそんなことを問題視しているわけじゃない。俺が言いたいのは、彼と同じ境遇を過ごしたが故、彼の気持ちを誰よりも理解することができ、尚且つ、彼を助けてやれるだけの富を持っていながら、遂にそれを分け与えることもせず、結果、彼の大事な者達を見殺しにした・・・そんな君に、誰かと恋愛する資格なんて無いんだよ!」




 ・・・つまり、こういうことか。

 かつての自分と同じ境遇にいるトールの気持ちは、それこそ痛いほど理解できたはず・・・。 そして救いの手を差し伸べられたはず・・・。

 そんな境遇にいたにも関わらず、相手の気持ちを疎かにし、その人が助けを求めていることを知っているのにも関わらず、手を差し伸べる素振りすら見せない。

 そんなヤツに、恋愛なんてものが出来る訳がない・・・と。

 



 全くもってその通りだ。



 

「そうか・・・そうか・・・」

 


 

 ふと、シャルルを見ると、茫然自失となっている私とは反対に彼の表情は愉悦に満ちていた。

 きっと・・・これが彼の策だったのだろう。

 もし、シャルルがここに来ず、マリアから事の次第を聞いていれば、私はトールを救助すべく、速攻でダンジョンに向かっていたはず・・・。

 しかし、突如現れたシャルルは、悪意を織り交ぜた真実を語ることで、私の心を折りにきた。

 もし、ここで私が救援を諦めれば、それこそトールの命運は尽きるだろう・・・。

 だから、一刻も早く、そこに向かわなければならないのだ。

 しかし、今の私の頭の中はそれどころではなかった。


「私には、誰かと・・・トールと愛し合う資格なんてっ・・・」

 

 頬を涙が伝う。

 人前で泣いたことなんて一度も無かったはずだが、よりによってこんな奴に見せることになるなんて・・・!

 しかし、今の私はその悔しさよりも、自らに対する失望感で胸が一杯だった。

 



 私は・・・限界だったのだ。

 

 


 私は膝を屈し・・・




「ふざけんな、馬鹿!!!」




 ・・・そうになったところで、罵倒と共に拳を食らうこととなった!!!

 



 ・・・へ?

 何で?




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